脚本家の登場
ダァン!という音を発し、魔銃から放たれる弾は一直線に飛んでいく。
その弾は、車のガラスを割り、運転手に着弾した。
「!!」
撃たれたことにより、黒服は運転することが出来なくなる。
よって、その車は制御不能となり、スピードを出したままその場で回転しだす。
そして、隣を走っていた車を巻き込み、一気に二台ともその場で爆発した。
「よし!」
「まだ車は残っています!残りの車の対応も……!!」
「ああ、俺に任せろ!」
瞬一は再び魔銃を構える。
しかし、その瞬間。
「う、うわぁ!」
火の玉が、瞬一のすぐ目の前まで迫ってきていた。
「我らを守りし聖なる壁よ。彼の者を守らん!!」
そこに、シュライナーからの援護が入る。
瞬一の前に魔法陣が展開されたかと思うと、火の玉は魔法陣に吸収されて、共に消滅した。
「サンキュ!シュライナー」
「どういたしまして!」
そのままシュライナーは、車に向かって攻撃をする。
「永劫なる風、我にその力を!!」
シュライナーの右腕に、風が出来上がる。
その風は、車に向かって一直線に吹く。
そしてその風は、車に当たり、車を宙に舞わせた。
「!?」
ある程度まで浮きあがった車は、そのまま重力に従って、道路へと落ちていく。
そしてその落下地点には、最後の車が一台、走っていた。
「あっ!!」
ドン!という爆発音と共に、双方の車が炎上した。
もはや、この状態での追跡は不可能だと思われる。
「……敵はとりあえずこれで全部、やっつけたのですか?」
瞬一は、校長にそう尋ねていた。
「うむ……今のところはこれで全部じゃな。御苦労だった」
「「はぁ……」」
シュライナーと瞬一は、緊張から解き放たれたかのように、一気に力が抜けた。
「ご、ご苦労様でした……」
「サンキュー、アイミー」
オドオドしたような感じで、アイミーは瞬一にそう言ってから、
「シュライナーも、ありがとうございました」
「礼には及びません、お嬢様。私はお嬢様をお守りするだけですので」
シュライナーが、あくまでもそれが義務であるようにそう言った。
「シュライナー、言われたお礼の言葉には、素直にどう致しましてって言うのが一番なんだぜ?」
「い、いえしかし……」
「ほら、言ってみろよ」
瞬一は、シュライナーにその言葉を言わせようとする。
そしてシュライナーは、
「ど、どう致しまして……」
恥ずかしそうにしながら、シュライナーはアイミーンにそう言った。
すると、
「はい!」
「!!」
アイミーンの顔が、途端に笑顔になる。
アイミーンは、最初からこの言葉を期待していたのだ。
いつも『ありがとう』と言うと、『それが義務』と答えるシュライナーに対して、アイミーンは何処か距離が置かれているような錯覚に陥っていたのだと言う。
「そろそろ日本政府に到着する……」
「なら俺は、アイミーを政府内に転移させる準備を……」
校長の言葉を聞いた瞬一が、アイミーを転移させようと、転移魔術を発動させようとした。
その時だった。
『そう簡単にやられても困るな。私の出番がなくなってしまうではないか』
「こ、この声……あの時の!!」
俺は、その声に聞き覚えがあった。
自らのことを脚本家と名乗ったその人物を、俺は知っていた。
「……ふむ。奴か」
「え……奴って?」
校長が、意味ありげにそう呟く。
何なんだコイツは……?
『これから君達を舞台より退場させる者の名前を述べよう』
「!!いかん、車から出ろ!」
急ブレーキを踏み、校長にしては珍しく荒げた声を出す。
慌てて俺は、隣に座っていたアイミーを抱えて窓から外に出る。
シュライナーも校長も、シートベルトを素早く外した後に、車から脱出した。
その瞬間の話だった。
「なっ……!?」
何処かから火の槍が突き刺さり、車は炎上。
そのまま、使えぬ物となった。
「私の名前はクリエイター。この計画を書き上げた本人だ」
そして目の前に、その男は現れた。