間に合え……!!
「くそっ!」
ダン!
俺は慌てて階段を登る。
クリエイターの奴、魔力なんか吸い取ってどうするつもりなんだ!
なんの目的があってかは知らないが、
「お前の目的は……俺が絶対ぶち壊してやる!!」
何段もある螺旋階段を二段飛ばしで駆け上がる。
けれど……終わりが見当たらない。
「畜生……どんだけ長いんだこの階段は!!」
あまりの長さに、俺は思わず憤慨していた。
アイツに会ったら、何も言わずに電撃浴びせてやるとか、そんなことを考えながら。
「あの野郎は……魔力を回収してどうしようと……って、待てよ」
そこで俺は、気付く。
魔力回収に、奴は恐らくその為の魔術を用意してくるだろう。
そして、魔術発動の際には、魔力消費が絶対条件。
更に……この会場には何人もの人が集まっている。
いくらなんでも、全員の魔力を吸い取るにはかなりのデカさの魔法陣を用意するしかない。
……ということは、
「……どういうことなんだ?」
分からない。
答えが出かかっているくせに、その先を読み取ることが出来ない。
思い出せ……もっと重要な何かを思い出せ!
「……光の器の力。そうだ、アイツらの真の目的はそれか!」
奴らが本当に欲しているのは光の器の力だ。
すなわち……葵の身が危ない―――!!
「葵の魔力を奪うついでに、他の奴らの魔力まで奪ってくつもりか―――!!」
頼む、間に合ってくれ。
最悪の結末だけは、どうにか免れたいんだ。
これ以上……クリエイターの思い通りにさせるわけには行かないんだ―――!!
「クリエイター!」
俺はようやっと階段を登りきり、会場内に入ろうとする。
だが、次の瞬間。
「うぐっ……!」
まるで見えない壁があるかのように、俺の体は弾き飛ばされた。
……まさか、魔術はもう発動してしまっている?
「集え……マジシャンズサークル!」
「こ、この声は……」
間違いない。
この声はクリエイターのものだ。
そしてクリエイターは、何やら魔術の名称らしきものを告げていた。
その時だった。
「!?」
禍々しく黒い光が、辺りを包み込む。
目の前が暗闇に覆われてしまっていて、何も見ることが出来ない。
……くそっ、一体この先で何が起きてるって言うんだ!?
「……収まった?」
程なくして、暗闇は消え去っていった。
……中には、入れるのか?
そう考えた俺は、ゆっくりと入り口近くに体を寄せる。
……壁らしきものはない、つまり、もう中に入ってもいいってことだ。
「……よし」
覚悟を決めて、俺は中に入って行った。
そして俺は、すべてを知った。
「なんだ……これ……」
そこはまさしく地獄絵図。
見る者を恐怖のドン底へ突き落とすような、決して常人が見るべき光景ではないもの。
戦闘スペースには、巨大な魔法陣が描かれている。
そして……そこに倒れていたのは、
「春香……織……優奈に刹那……」
四人が、気絶している。
命までは採られていないようだ……よく見ると、相手チームも同様に倒れているのが見える。
そして何より……客席にいる奴らもまた、全員が倒れていた。
「……冗談だろ?」
ここからでは確認出来ないけど、恐らく晴信達も倒れていることだろう。
……魔力を奪われて、気絶してしまっていることだろう。
「……そうだ、葵は!?」
奴の目的は、葵が持つ力だ。
ということは、何処かに葵が……。
「ほう……ここまで予定通りに事が運ばれるとはな、いやはや、今宵の脚本は邪魔者がいなくてよいな」
「!?……クリエイター……葵は何処だ!?」
空中に浮いていることに俺は驚いたが、そんな場合じゃない。
今は葵が心配だ……戦闘スペースに、いるはず……!?
「……あそこで未だに苦しんでいるではないか。光の器の力を、最大まで奪われながら……ね」
そこにいたのは。
床に描かれていたものとは別に、足元に闇の魔法陣が描かれていて、その上でもがき苦しんでいる葵の姿だった。




