表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
251/309

光の器

「「ハァハァ……」」


二人の息が荒くなっているのが見てとれる。

しかし、二人とも殺気を収めてはいなかった。

今にも相手を殺せるような、そんな視線だ。


「……やりますね、貴方」

「お前もな……残念だが、力で言えばほぼ互角ってところだな」

「……互角かどうかは知りませんけど、これで時間稼ぎは十分に出来ました」

「時間稼ぎ……だと?」

「ええ……時間稼ぎです」


少女が瞬一に向かってそう告げる。

そして次の瞬間。


「なっ……!?」

「この魔物も……時間稼ぎの為の布石でしかありませんでした」


瞬一の目の前で、魔物の親玉は消えた。

つまり、この魔物の存在はあまり意味がなかったということになる。


「……魔物を暴れさせてたのは、時間稼ぎの為……」

「……はい。そして、この親玉を倒しにくる存在が必要でした。これから世界を滅ぼす者の……姿を誰かに確認させる必要がありました。あのお方は、その役目を貴方に託したようですね……三矢谷瞬一さん?」

「なっ……?!お前、どうして俺の名前を!?」


瞬一は、告げてもいない自分の名前を呼ばれてただ驚いていた。

そんな瞬一に、少女は顔色一つ変えずに答える。


「あのお方が、そう告げたのです……ここにくる者の名前は、『三矢谷瞬一』である、と」

「……『あのお方』って、誰のことだよ」


この時瞬一は、最悪の可能性を考えていた。

もしこの騒ぎに、『あの男』が関わっていたとしたら。

前に自分達の前に現れた、あの男が関わっていたとしたら。


「名前は分かりません……ただ、そのお方は、自らのことを『脚本家』と称していました」

「!?」


脚本家。

瞬一が知るなかで、自らのことを『脚本家』と称する者と言ったらただ一人しかいなかった。


「クリエイター……やはりアイツが、この騒ぎと関係が」

「クリエイター……それがあのお方の名前なのですか。よいことを聞きました」

「?本当に名前を知らなかったのか」

「ええ……たった今貴方に教えてもらいました」


意外そうに尋ねる瞬一に対して、特に恥ずかしがる様子もなく答える少女。

だが瞬一は、すぐに真剣な表情に戻す。


「お前達の狙いは……何だ?俺をこんな所までおびき出して、何をする気なんだ?」

「……この会場にいるという、光の器(てんし)の魔力を、奪う。それが私達の目的です」

光の器(てんし)の魔力を奪う……!!まさかお前達、葵に何かをする気じゃないだろうな!?」


光の器(てんし)

瞬一は、その言葉に聞き覚えがあった。

そして、親友がそう呼ばれていることにも、気付いた。


「あおい?……その人がどういう人物なのかは知りませんが、会場に魔法陣を敷かせてもらいました。他人から魔力を吸い取る為の魔法陣です」

「……お前達、他の奴らまで巻き込むつもりか!?」

「……死ぬわけではありません。私達が奪うのは、魔術を発動する為に必要な量の生命力のみです。生きていく上では特に支障はきたしません」

「テメェら……生きていられるからって何でもしていいってわけじゃねえんだぞ!!」


瞬一は、あまりに残酷な計画に対して腹を立てていた。

だが、少女はそれでも動じない。

少女は、瞬一に言う。


「……そうですか。ですが、どのみち滅ぶ世界です。生きていようが死んでいようが、最終的には人類が進む道は同じ……滅びの道です」

「させない。俺が……俺達がお前達の計画なんて潰してやる!!」


瞬一は、手に握っていた刀の刃を、少女の喉元に突きつける。

それでも少女は、恐れることなく、無表情でこう言い放った。


「……そうですか。ならば私を殺せばいいじゃないですか。ただし、私を殺したところで術式は止まりませんけどね」

「……くそっ!」


喉元に突きつけてた刀を消し、瞬一は距離を取る。

……戦闘態勢を取る瞬一に対して、少女は何の構えも取らない。

まるで哀れな羊を見るかの表情で、言い放った。


「いいのですか?このままここにいたら、術式が発動してしまいますよ?……私は邪魔はしません。行きたければ早く行ってください」

「……くそっ!」


瞬一は少女に背中を向け、扉を勢いよく開け放ち、部屋を出る。

バン!

勢いよく扉は閉められて、中には少女一人のみとなった。


「……どのみち間に合うはずがありません。せめて、光の器(てんし)に対して、祈るとしましょう……安らかなる、眠りを」


少女は、自らの胸元に右手を使い十字架を描く。

その後で、ゆっくりと部屋を後にした。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ