王女の正体がアイミーだったとは……
「お、お前……何で!」
「……こういうことだ」
そこに座っていたのは、アイミーだった。
両手を膝の上に乗せ、入ってきた俺の方を見る。
すると、途端に笑顔になった。
……え、どういうことだ?
「うむ。現物は見たが状況は掴めないと言ったような表情をしているようだな」
「はぁ……まぁ」
王女の護衛役に俺は選ばれたんだよな?
そして、校長に言われた部屋に入った所、いたのがアイミーだった。
王女は、もちろんだが性別は女性。
日本政府に赴くのだから、もちろん正装をしているはずだ。
そして、アイミーの性別もまた女性であり、黒を基本としたドレスのような服を着ている。
……まさか。
「アイミーが……グレイブスタン公国の王女?」
俺は、アイミーにそう尋ねる。
アイミーは答えた。
「……はい」
……すると、何だ?
俺は今まで、アイミーが王女だとも知らずに、失礼な態度をとってたってことか?
「……敬語の方がいい、でしょうか?」
「いえ。今までどおりに接して頂いた方が、私としては嬉しいです」
「……なら、今まで通り、アイミーでいいな?」
「はい」
俺がそう尋ねると、アイミーは笑顔で答える。
……何というか、こういう格好していると王女だと言われて納得がいく。
けど、普通の格好をしていたら、アイミーは普通の少女なのだ。
だというのに、一国の運命を担う役目を任されるなんて。
しかも、それが原因で謎の男達に殺されかけたことまであった。
……こんなこと、今回限りで終わりにした。
早く同盟を結ばせて、アイミーを自分の国に、安全な場所に帰してやりたい。
「……ふむ。心の準備はよろしいかな?」
「……はい」
そこに、校長が尋ねてくる。
俺は、少し考え込み、頷いた。
「……では、説明をしよう」
校長の話をまとめると、次の通りだ。
日本政府との会見は午後一時。
つまり、十二時半までには到着していなければならないということだ。
そして、ここから政府までの距離は時間にしておよそ一時間。
十一時半にはこの学校を出たいということなので、結構ギリギリだな。
移動手段には、車を使用する。
ただし、相手に狙われにくいよう、アイミーが座るのは後ろの席だ。
俺も後ろの席に座り、運転するのは、なんと校長自身なのだそうだ。
前の席にはアイミーに仕えているらしい、シュライナーが座る。
横からの魔術攻撃にも、後ろからの魔術攻撃にも対応するために配置だ。
「それで、シュライナーはどこに?」
「今、車を手配しているところだ……恐らく時間前には来るだろう」
「そうですか……」
だが、作戦開始まで、まだ時間はあるはずだ。
それなのに、俺はこんなにも早く呼び出される理由ってのはあったのか?
それに俺には授業が……。
「授業のことなら心配せんでもいいぞ。事情は教師たちにはすでに伝えてある。公欠扱いにしてある」
「このことは、他言無用ってことでいいんですね?」
「そうだな。君が他人にこのことを言うとは到底考えにくいが、漏れてしまっても対応に困る。だから、作戦決行時間までこの部屋で待機していて欲しいのだ」
「……分かりました」
そんなことなら御安いご用だ。
まぁ、朝に晴信達との面白会話が出来ないのは少し残念だが(主に晴信を弄れない点)、そんなことよりも俺は重大なことを任されているのだ。
失敗など許されはしない。
「やるからには、全力でお前のことを守る、アイミー。だから、俺のことを信じて欲しい。俺は無事にお前を政府まで送ると……約束する」
「……はい。信じてます、シュンイチ」
……覚悟は決まった。
後は時間を待つだけだ。
「……」
俺は、右手で俺の右腿をドン!と殴り付ける。
気合いは入った。
……この問題に、決着をつけてやる。
次回より、ついに『某国王女護衛編』は佳境を迎えます。