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Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
242/309

互いの持つ最大威力の攻撃

「くそ野郎が……とっとと倒れろや!」

「それはこっちのセリフだっての!」


二人の戦いは、およそ数分に渡り続いていた。

一進一退の、小競り合い。

……片方が攻撃する為に攻めていけば、もう片方が守りに入る。

だが、守り側はカウンター攻撃を決め、今度は立場が逆転する。

そしたら今度はもう片方がやはりカウンター攻撃を決めてきて……と、こんな感じで瞬一と岸辺の戦いは続いていた。


「……もういい加減こんな小競り合いはやめにしようぜ。次の攻撃で、自分の持つ最大限の力を放出するんだ……それで決着にしないか?」

『おっと!なんとここで三矢谷選手からそのような内容の提案が!岸辺選手、どうする!?』


実況席からそのようなアナウンスが聞こえてくる。

岸辺は特に迷う様子もなく。


「いいぜ。その勝負、受けて立つぜ」

「そうこなくっちゃな!」


岸辺自身もその戦いを望んでいたのか、瞬一からのその提案には乗り気であった。

一旦距離を置いて、それぞれの武器を空中に放り投げる。

刀は音もなく、空中でそのまま分子へと変わり、魔力となってそれぞれの体へ帰っていった。


「……さて、それぞれが持つ最大威力の攻撃を繰り出すんだ。いいな?」

「ああ。何だか面白そうだ……お前の持つ最大威力の攻撃と、俺の持つ最大威力の攻撃。どちらが上回るか試してみるのも面白い」


互いにそういい合い、そしてそれぞれ呪文の詠唱に入る。


「……神の公正なる裁判にて、正しき判決を下す。下された判決は有罪。よってここに、神の雷にて裁きを下す」


瞬一の使う最大威力の魔術は、ジャッジメントスパーク。

最も瞬一が愛用している、尚且つ威力が高い魔術だ。

対する岸辺は、


「雷の刃は天より降り注ぎ、彼の者を討つだろう。我の魔力を喰らいて、彼の者に雷を帯びし刃を味あわせよ!」


かつて聞いたことのないような呪文の詠唱だった。

しかし、互いの呪文詠唱は、ほぼ同タイミングで終結する。

瞬一の足元にも、岸辺の足元にも、黄色い魔法陣が浮き上がっていた。

だが、瞬一の場合は違う。


「空中にも魔法陣が……?」


瞬一の足元だけでなく、岸辺の足元にも、岸辺の立ち位置の上空にも、魔法陣が浮かび上がる。

これこそが、ジャッジメントスパークの魔法陣の特徴。

同じような事態が、瞬一の周りでも起きていた。


「……これは」


上空に無数の魔法陣が展開される。

それは間違いなく、岸辺の魔法陣だった。

その配置は、どこか晴信のフレイムレインに似ている。


「まさか……そういう系統の魔術か」


瞬一は、意味もなくそう呟く。

その後で、二人の間には静寂の時間がほんの一瞬だけ流れた。

その間に、己の最大魔力を注ぎこむ。

そして……。


「ジャッジメントスパーク!!」

「ライトニングブラスト!!」


二人は同時に、己の最大威力の魔術を発動させた。

岸辺の上空からは、何本もの雷が落ちてくる。

本人に当たる雷は太くて大きく、周りに落ちる雷は小さくて細い。

どこに逃げようとも確実に当たるその攻撃だったが、しかし岸辺は逃げなかった。

対する瞬一の上空に浮かび上がる魔法陣からは、矢のようなものが何本も放出される。

これも、ひょっとしたら瞬一ならば避けられないこともなかったのだろうが、やはり瞬一も逃げなかった。

普段の戦いなら避けていただろう攻撃を、二人は敢えて避けることをしなかった。

理由は……これで決着をつけるため。

たったそれだけの理由で、勝負を先延ばしにする道を捨てたのだった。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」


互いの攻撃を受けつつも、攻撃の手を緩めない二人。

しかし、やがて時間が流れると共に、二人の攻撃は同時に止まった。


「お、終わったのか?」


客席からは、晴信のそんな声が聞こえてくる。

瞬一と岸辺の二人は、動かずにその場に立ち尽くしている。


「「……」」


互いに無言。

仁王立ち状態。


「……やるな、お前」

「……お前こそ」


そして、


「……勝者、三矢谷瞬一!!」


バタン。

そんな音を立てて、岸辺はその体を地面に倒したのだった。

それより何テンポか遅く。


「……勝ったぜ。勝ったぜ、畜生……」


バタン。

やはり瞬一も、同じようにその場に倒れこんだのだった。













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