校長室への呼び出し
次の日。
パーティーでの疲れがあったせいか、昨日は凄く早めに眠りについた。
そのおかげで、今日の俺は爽やかな目覚めを迎えることが出来た。
「かつて俺は、これほどまでの目覚めを迎え入れることは出来ただろうか?」
「……な~にやってんだ、お前」
気分良く叫んでた俺に突っ込みを入れる、晴信。
えらく軽蔑のまなざしで見ている……気がする。
「いやぁ、今日はかなり目覚めがよかったからな。我ながらはしゃいでしまったというわけだ」
「あ~いつも眠そうな顔してるもんな、お前。朝弱いんだったな」
「そうさ!だから今日は、とってもいいことが起こりそうな予感がするんだよな!」
「さいですか……」
だから何でそんな憐れみな目で見るんだよ。
まぁ、今日の俺は気分がいいから、許してやるけどな。
その時。
ブゥウウウウウ!というブザー音が鳴る。
「こんな朝っぱらから?一体何があったんだ?」
「……ま、いいだろう。どうせ俺達には関係のない話だろうし」
まぁ、晴信の言うとおりだろう。
こういう場合の放送って、俺達とは関係のない、職員集会とかだったり、生徒会の集まりがあるから集合とか。
そういった、一般の生徒とは何ら関係のない話のはずだ。
『二年S組三矢谷瞬一、二年S組三矢谷瞬一。至急荷物を持って校長室に来るように!』
……関係ない話のはず、なのだが……。
「……今、俺の名前呼ばれた?」
「ああ。間違いなく呼ばれたな。三矢谷瞬一って言ってたな」
「……マジで?しかも荷物持ってって言ったよな?」
「ああ。間違いなく言ってたな。荷物持ってって言ってたな」
……あれ?
俺、学年上がって三日目にして、何か問題起こしたか?
いやいや、身に覚えがまったくない。
これは嘘だ。
誰か嘘だと言ってくれ!!
いや、某村のカナカナ言ってるやつは呼んでないけどな。
「……骨は拾っといてやるよ、瞬一」
「いや、俺まだ死んでないから!……これからどうなるか分からないが。とりあえず言ってくる」
もしかしたら、俺今日帰ってこれないかもしれないな。
先ほどまで気分よかったのに、一気にブルーに落ちた感じだ。
Side晴信
「おはよう、晴信」
「おお、おはよう……大和」
瞬一が教室を出た後。
入れ替わりのように大和が入ってきた。
「どうしたの?瞬一がカバンを持って走って行ったけど」
「ああ。校長室まで呼び出しくらったんだよ……ひょっとしたら、何か問題でも……」
「ふむ。なるほど……そういうことか」
「あん?何一人で納得してんだよ」
大和が、何かに気付いたような素振りを見せる。
それが何だか気になって、俺は思わず大和に尋ねた。
すると大和は、笑顔を崩さずに言った。
「昨日の瞬一の話、覚えてるかい?」
「ああ。アイミーンとかいう女の子助けた話だろ?それがどうかしたのか?」
「その名前に、聞き覚えは?」
「……ないな」
アイミーンなんて外国の名前。
俺が知ってるわけがないだろう。
「なら……グレイブスタンって言葉は?」
「それなら知ってるぜ?グレイブスタン公国の王女様が、確か今日の一時に日本政府と何かの同盟結ぶ為に来るんだろ?今朝もテレビでやってたぜ」
「……そして、アイミーンの下の名前は?」
アイミーンの下の名前?
確か……。
「アイミーン・グレイブスタン……!!」
「そう。恐らく彼は、アイミーン・グレイブスタンの護衛役に任命されたんだろうね」
「あいつが、護衛役に?」
にわかには考え難いが……いや、納得もいくか。
何せあいつは、王女様のことを一度助けてるんだぞ?
その王女様が、瞬一のことを信頼しないわけがない。
「……そういうことか。なら、あいつは今日は……」
「多分、教室に戻ってくることはないだろうね」
しかし、護衛役か……。
下手したら命落とす危険性もあるってもんだが……。
「……死ぬことだけはよせよな、瞬一」
俺は窓から空を見ながら、そう呟いた。