夜中の雷山塚高等学校での密会
Sideアイミーン
私は今、雷山塚高等学校に来ています。
理由は、とあることを依頼するためです。
その依頼と言うのが、
「それで、日本政府に行くまでの護衛役が欲しい、と言うわけかね」
「はい」
実は、雷山塚高等学校に来るのが私の本当の目的ではないのです。
私の本当の目的は、日本政府に訪問して、とあることを依頼するためです。
その依頼と言うのが、
「しかし、我が国との同盟を結ぶ為に、はるばるグレイブスタン公国から……」
「ええ。ですが、その途中で謎の黒服の男達に追い詰められてしまいまして……」
「なんと!……して、どうして貴女は無事でいられたのかね?」
この学校の校長である、白髪で厳格そうな男性―――名前を石塚源三郎というらしいです―――の顔が、心配するような色に変わります。
心配してくださるのはとても嬉しいことですが、
「その時に、私のことを助けてくださった人がいらしたので」
「ほぅ……その人物は、我が学校の生徒だったのかね?」
「……ええ」
まったく見ず知らずの私を助けてくれた、命の恩人。
もしあの時あの方が来てくれなかったら、私は今頃……。
「差し支えなければ、その者の名を教えて頂いてもよろしいかな?」
「……はい」
源三郎さんに尋ねられて、私はその人の名前を言うことにした。
「……ミヤタニシュンイチ、というお方です。年は私と同じでした」
「ふむ……なるほど。納得した」
源三郎さんが、何かを納得したかのように頷く。
……何を理解したのでしょう?
「三矢谷瞬一は確かに我が校の生徒であり、二年S組の生徒だ」
「S組……とは?」
「この学校の最高クラスの者達が集まる組のことだ」
「そうなんですか……強いお方なんですね」
「うむ。才能はある方ではあるな……だが、まだ完全に開花しきってはおらぬがな……まぁ並大抵の人物相手なら負けぬだろう」
源三郎さんがそこまで言うのでしたら、信用出来ますね。
……と言うか、そのつもりでここに来たのですが。
「して……期日はいつ頃に?」
「明日の午後1時からの予定となっています」
「う~む……その時間までに政府に着くにはここからだと一時間はかかるか……転移魔術で送るという方法も、距離的に無理か。どんなに熟練の魔術師であっても、人間を飛ばす限界は、我が校からだと二個隣の建物までだからな」
私も一応魔術を学んでいる身なので、あるその知識については知っています。
本来、転移魔術と言うのは小さな荷物を飛ばす程度にしか使わない魔術です。
ですが、ある程度まで力をつけると、人も飛ばすことが出来るようになります。
ですが、自分の立っている場所から二つ隣の建物までしか飛ばせないのです。
……ところで、私も魔術師なら、魔術で対抗すればよかったのでは、という疑問を持たれた方もいらっしゃることでしょう。
ですが、私にはそれが不可能だったのです。
何故なら、私は科学魔術師だからです。
この国に来た時には、もちろん携帯は持っていました。
ですが、黒服に襲われた時に、携帯を壊されてしまって、あんなことに……。
「……承知した。護衛の者を、明日午前11時30分に送ろう。それまでは、我が部屋でゆっくりしてるがよい」
「あ、ありがとうございます……」
「だが、教職員は全員授業中で手が離せぬか……なら、生徒の中から公欠ということにして護衛役を回そう」
「……ひょっとして」
「うむ。三矢谷瞬一を、護衛役に任命しようと思う」
「……!!」
私は何故か、心から嬉しいと感じていました。
また、あの人と話が出来る。
そう考えた途端と、心臓がドクンドクンと音を大きくしてきたのでした。
次回より、俗名『某国王女護衛編』は大きく動き出します。