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Magicians Circle  作者: ransu521
文化祭編
215/309

忘れ物を取りに来て

「痛いっつの……」

「ご、ごめんね。つい本音が出ちゃって……」

「ボクもちょっとやりすぎた……ごめんね」


帰り道。

俺は織と葵の三人で帰り、そんなことをぼやいていた。

あの後、俺はなんでだか知らないけど、クラスの奴らから集団リンチの標的となった。

女子は俺のことを労わってくれたが、男子はそうはいかなかった。

まぁ、大和と大地を除いてなのだが。

そんなわけで、さっきまで大和・大地抜きの男子生徒&葵・織vs俺一人という、かなり過酷な状況を強いられていたわけだ。


「まさかアイミー一人連れてきただけでこんな展開になるとは思わなかった……」


んで、そのアイミーは今、日本に来て取っているというホテルに行っている。

さすがにアイミー一人だけということはなく、護衛(?)役としてシュライナーがついていた。


「それにしても……どうしてアイミーンさんはこっちに来たの?」

「ああ。何でも文化祭のことを校長先生に聞いたらしいぞ」

「なるほど……って、瞬一君と葵ちゃんはアイミーン王女様とは知り合いなの?」


あ、一応言っておく。

織も転入して何日か経過したが、クラスの奴らとはほとんど仲が良くなっている。

……それは大いに結構なことなのだが、帰国子女ということもあり、男子からの人気も(一部だが)高い。

最近では、ラブレターが下駄箱内に入ってることも多いのだとか。


「……あ、しまった」

「どうしたの?瞬一」


俺は、カバンの中を探してみて、そして気付いた。

隣では、何やら葵が疑問の表情を浮かべて俺のことを見ていた。


「いや、教室に筆箱を忘れちまったみたいなんだよ……悪いけど先帰っててくれないか?」

「え?いいけど……」

「んじゃ、二人とも、またな!」


俺は今来た道を戻る。

……筆箱がなければ、今日出された宿題を片付けることが出来ないからな。












「……んで、何この状況?」


扉の近くまで来てみれば、中には誰かがいるみたいだ。

あれは……女子か。

けど、二年生では見ない顔だ。

何やら誰かの机を熱心に探しているみたいだけど……ん?


「手にしているのは、手紙か?」


その女子生徒の右手には、何やら手紙があった。

……放課後、こんな時間。

女子生徒が、手紙を持って一人立っている。

しかも、学年は……リボンの色が青色なので、一年生。


「俺が知ってる一年生って言ったら、優奈と刹那の二人くらいか……」


けど、その二人のどちらにも当てはまらない。

……あの子には申し訳ないけど、時間だけが過ぎていくし、中に入るか。

ガラッ。


「!!」


扉を開く音に反応して、女子生徒の体が震える。

……何だろう、この罪悪感。


「わ、悪い……まさか人がいるとは思っていなかったものだから」

「……うぅ」

「ちょ……何でそこで泣く!?」


ま、まずい。

このままだと、放課後、誰もいなくなった教室で、先輩が後輩を襲っているというシチュエーションが完成してしまう!!

泣かれたままなのは、俺の身がやばい!!


「ま、まずは落ち着け!俺は別にお前の邪魔をしに来たわけではないし、大体俺は、筆箱を取りに来ただけなんだから!」

「……本当?」


その女の子は、紺に近い黒の髪の毛を揺らし、そう尋ねる。

……髪長い女の子だ。

けど、なかなかに可愛い子だなぁ。


「ところでさ、お前一年生だよな?どうして俺達の教室に来てるんだ?」

「……言えない」


言えないって……そりゃあ、二年生の教室にラブレター渡してきましたと堂々と言える奴もどうかと思うけどな。


「じゃあ質問を変えるぞ。誰の机を探してるんだ?」

「……大和先輩の、机」


やはり大和か……モテモテだな、アイツ。

北条だけじゃ物足りず……羨ましい奴だ。


「大和の机ならあそこだ。んじゃ、俺は筆箱を取って帰るから」


俺は即座に机の中から筆箱のみを取り出して、さっさと教室を出ようとする。

……その前に、聞いておきたいことがあった。


「お前、名前は?」

「……水野明美」

「俺は三矢谷瞬一。じゃあな!」


俺は邪魔にならない為にも、さっさと教室を出ていく。

……しかし、ラブレターを渡す人って言うのは、今でもいるんだなぁ。













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