出店も決めなくては
「劇か……正直文化祭の出し物が劇に決まるとは思ってなかったよ」
「だね……まさか本当に劇をやるとは、私も思ってなかったくらいだし」
「て言うか……確か劇とかってクラス別のステージ発表の話だよな?出店の方は何か考えなくてもいいのか?」
「……あ」
忘れてた。
この学校の文化祭は、ステージ発表の他にも各ホームルーム教室毎にやる出店も考えないといけないんだった。
更には、部活での出し物もあるわけだし……もう大変なんだよな。
ちなみに、魔術格闘部は模擬戦闘として、他校の人を呼ぶことになっている。
それくらいしないと、面白みがないからだ。
「……もう一度話し合うべきよね?」
「だね。流石に誤解したままだといけないし」
と言うわけで、この昼休みの時間を使って、もう一度会議が始まった。
俺と北条の二人がまた前に出て、指揮をとる。
「みんな、すぐに終わると思うから、話を聞いてくれ!この文化祭は、ステージ発表と出店の二つをしなければならないことになってるんだ。そこで、その出店について話し合いたいと思う!」
俺がそう声を張り上げると、思いの外聞いてくれる人が多かったので、少し安心した。
まぁ、ボチボチと話を進めていくことにしよう。
「んじゃ、まずは案を出してくれ」
「なんでもいいけど、倫理的に大丈夫なものを出してよね」
北条が付け足すようにそう言った。
すると、挙がっていた手の一部が、下がっていた。
……コイツら、何を考えてたんだよ。
「やっぱり無難に喫茶店がいいと思うな。コーヒーとかジュースを出す」
「う~ん……葵の意見もいいんだけど、なんというか、地味なんだよな……」
喫茶店でくつろぐのも、確かにいいかもしれない。
文化祭と言うのは、とにかくテンションが高くなるところだ。
そんな高くなったテンションを抑える役目を果たしてくれそうなのだが……それでは客が来ない。
やはり、そういうのをやるからには、黒字になるようなものを選びたい。
「メイド喫茶やりたい!」
そう言ったのは、お馴染みのクラスメイトH。
……下心しか見えないのは気のせいだろうか?
いや、興味がないわけでもないのだが……。
「これは他のクラスと被りそうだ。特にA組と」
俺がそう例を出してみると、みんなが同意を示した。
……何せ、A組には晴信が行ったからな。
「なら……いっそのこと中華喫茶なんてどうだ?」
「斬新ではあるが……予算がな」
大体、中華料理なんか作るスペースがあるのだろうか?
そもそも、作れる人がいるのか?
「……ケーキ屋なんてどうかしら?」
「お?さすがは風紀委員の琉川だ。いい案を出してきたな」
確かにケーキ屋なら低予算で済むし、幸い作るのも簡単だ。
しかも、味勝負ではなく、どっちかというと装飾勝負でいける店の一つだ。
……けど、ケーキだけじゃあれだな、少し不安だ。
「それじゃあ、ケーキ屋は候補に入れとくわね。他に意見は?」
「……」
特になさそうだ。
ケーキ屋以外に、被らなそうな店もないもんな。
焼きそば屋とかは、間違っても教室でやるものではないし。
「ないなら、ケーキ屋で決定するわよ?いい?」
「異議なし!」
どうやら反論はないようだ。
……さて、出店がケーキ屋、ステージ発表が劇という風に決まったわけだが。
「詳しいことは後日話すことにするわ。とりあえず明日の放課後にもう一回話すから」
「それまでに、自分がどっちの分野に入るか決めといてくれよ……どっちもってのもありだけど、時間ある奴にしとけよ。結構大変だからな」
出店も決まった。
……うん、楽しい文化祭になりそうだ。




