本当の『計画』
「お前が……『組織』の一員だったのか」
「コイツだけじゃない。俺もだ」
そう言って、大地も大和の横に並ぶ。
迅は、そんな二人の顔を見比べて、
「……気にいらねぇ。その表情、凄くムカつく」
そう言った。
だが、大和と大地の二人は、特に気にすることなく話を進める。
「お前の言う『計画』というのは、それだけじゃないはずだ……違うか?」
「……何でお前らはそう考えた?」
「……単なる恨みを晴らす為のものだったら、こんな大規模な準備をしなくても、さっさと壊してしまえばいい」
「けれど、今の魔術の中では、世界を壊してしまえるほどのものはない」
由雪の質問に答えるかのような形で、大和と大地は答える。
二人は更に言葉を繋げる。
「まず、世界を破滅させる計画においての第一ステップとして、どうしてこの学校を壊滅させる意味があるのか?」
「……それは、お前の目的が、世界の破滅なんかじゃないからだ」
「……」
「もしかしたら世界の破滅も、成し遂げたい『計画』の一部に盛り込まれているかもしれないけど、それはあくまで副次的なものでしかない。お前の本当の目的は、別にあるはずだ」
「……そして君は、見つけた。『組織』に繋がる為の糸口となる、僕達を見つけた」
本来なら、大地は大和の言う『組織』のメンバーではない。
しかし、『組織』のメンバーと密接的な関係を持っているのも確かであった。
「……どうして『組織』の人間を恨む?由雪迅」
「……」
答えを言おうとしない、迅。
少し考えた後に、大和は言った。
「……数年前、光の器の体質を持つ人間が、何者かの手によって殺された事件が発生した」
「「!!」」
大和の言葉に、大地と迅の二人は、驚きの色を見せていた。
大地は、単なる新事実の発見に。
迅は、知られたくない過去をバラされたかのように。
「その人物の名前は……寺内麻美。その事件における唯一の被害者」
「……黙れ」
迅が、小さくそう呟く。
だが、大和は話すのをやめない。
「内なる力のバランスを整えることが出来なくなった寺内麻美は、突如としてその場で暴走。体から羽が生え、それはまるで、破壊する女神みたいだと、人々は言った」
「……黙れって言ってんだよ」
「そんな寺内麻美は、次第に行動範囲を広げ、やがて建物を壊し始めた。緊急事態に対応する為、当時の『組織』のメンバーは、寺内麻美を排除することを決定し、そして……」
「黙れって言ってんだろうがぁああああ!!」
迅は、とうとう耐えきれなくなって、叫んだ。
大和は一旦言葉を止め、それから言った。
「……その時、寺内麻美を排除することを決めた『組織』の長が……この学校の校長でもある、石塚源三郎……そして、君の本当の目的は、石塚源三郎の抹殺……違うか?」
「……」
迅は、ここまで言われて黙ってしまう。
黙っていたのは、大地も同様だった。
「ど、どうして……そんなことを?」
「昔に話を聞いたことがあってね。まさかとは思ったけど……やはりそうだったとはね」
大和も、少し驚きの色を見せていた。
だが、それも少しだけであった。
次の瞬間には、もう普通の表情を見せていた。
「……く、くく」
「……?」
突如として、迅は笑いを堪えるような素振りを見せる。
「くくく……くはははは。ヒャアハハハハハハハハハハハハハァ!!!!」
そして迅は、壊れたように笑いだした。




