葵の家にて
「アイミーを……殺す?」
『その通りだ。彼女がやろうとしていることは、少々やっかいなことでね。成立してしまう前に、早めに殺害しなければならないのだよ』
「……させないって言ったら?」
俺は、あくまでも喧嘩腰を崩さずに、尋ねる。
『その時は……我らとお主は敵同士だ。全く、邪魔者を殺すまでの計画を実行するのに、また新たなる邪魔者が現れるとはな』
「「……」」
男はそれだけを伝える。
瞬間。
目の前に立っていた人形は、バタッと音をたてて倒れた。
そして。
「に、人形が消えていく……」
倒れていた人形がすべて、跡形もなく消え去った。
「……どうやら君は、結構厄介なことに巻き込まれたようだね」
「みたいだな……話は葵の家に行ってから、みんなに話す。別に隠すようなことはないし、分からないことだらけだけどな」
「それがいいよ。もし別の誰かと一緒にいた時、そっちの方が動きやすいし」
俺と大和は、葵の家に向かう為に歩き出す。
その間、俺達の間に会話はなかった。
「遅かったな、二人とも。もう準備は出来てるぜ?」
「みりゃ分かる……にしても、奇跡だな。晴信が襲わなかったなんて」
「オイコラ。俺は女がいたからって即刻理性が消え去るわけじゃねえぞ。それにな……」
「おお、うまそうな食事」
「人の話を聞けよ!」
晴信のことは一先ず無視して、俺は腰を下ろす。
テーブルの上には、所狭しと様々な食事が並べられていた。
……あの食材からこれらの料理が出来るとはな。
「あっ!瞬一に大和君!遅かったね~何かあったの?」
奥の方から、エプロンをつけてお玉を持っている葵が現れてきた。
……いや、お玉使って何料理してんだよ。
味噌汁系統でも作ろうとしてるのか?
「そのことはまた後で言う。それよりも、もう初めてもいいんじゃないか?」
「そうだね。それじゃあ……お~い!空!春香ちゃん!」
……いつの間に一之瀬と仲良くなっていたのか。
流石は葵、交友関係の広さを誇るだけはあるな。
「あ、はい!」
まずやってきたのは、同じくエプロンをつけた、紫色の長い髪の少女―――言わずもがな、一之瀬だ。
そしてもう一人。
葵よりも少し背が低めで、髪の色は葵と同じく茶色なのだが、こちらの方が長い。
そして何より、大人しそうな雰囲気を出していた。
……姉が活発だと、妹は大人しそうな女の子になるんだな。
何だか、こっちの方が姉みたいだな。
「初めまして。空って言います」
「ああ、初めまして。俺は三矢谷瞬一だ」
「さっきも言ったが、宮澤晴信だ!」
「大和翔。宜しくね」
「一之瀬春香です……えっと、その、よろしくお願いします」
それぞれ空に対して挨拶をする。
空は、その一つ一つに丁寧に答えていく。
……なんというか、将来有望な女の子だな。
「今の内にマークしとけば?晴信」
「おうよ!後何年もしたら、きっと……」
「晴信なんかに空をあげないわよ!」
グサリと、葵の言葉が晴信の心臓に突き刺さるような音が聞こえた。
あ~あ、立ち直るまでに少し時間がかかるな、こりゃ。
「でも、空は可愛いとは思うぞ。何年後かしたら、きっといい嫁さんになってるかもな」
「そ、そうですか……?」
少し顔を赤らめて、そう尋ねてくる空。
……ヤベェ、晴信じゃないけど、これは相当破壊力あるな。
「……どうやら一人、落としてしまったようだね、瞬一」
「なんのことだよ、大和」
意味深に笑う大和。
俺には、その笑みの表す意味がよく分からなかった。
「さて、絶望の淵に立たされている晴信はおいといて、とっととパーティー始めるか」
「晴信復活!!」
ちっ。
復活しやがったか。
まぁいいか、とりあえず始めるか。
「みんな!コップを持って!」
大和の掛け声に、俺達はジュースが入ってるコップを持ち上げる。
「それでは、僕達が同じS組になれた記念と、空ちゃんの中学進学記念に……」
「「「「「「乾杯!!!!!!」」」」」」
六人分の声が重なり、パーティーは開かれた。




