突然の殺気
時は過ぎ、放課後。
俺達は、いつもとは違い、五人で帰宅した。
俺・晴信・葵・大和・一之瀬の五人だ。
理由は、まぁ……S組に入れた記念という名の、単なる親睦会みたいなものだ。
もっと呼んでもよかったが、奈何せんまだ知り合いがいなさすぎる。
葵の友達は、別の理由で来れないみたいだし。
「それじゃあ、私は先に帰って準備してるね」
「わ、私も行きます」
「俺も行くぜ!」
「晴信、邪魔だけはすんなよ。買い物は俺と大和に任せろ」
「そうだね。僕と瞬一で行って来るよ」
葵・一之瀬・晴信の三人はセッティング。
俺と大和は買い物に行くこととなった。
「それじゃあ、お前の家に行くってことでいいんだな?葵」
「うん。ちょうど空もいると思うし、空の中学入学祝も兼ねて、ね?」
「妹は今年中学校に入ったばかりだったのか?」
「そうだよ」
ふむ。
そうなると、晴信に狙われないかどうか心配だ。
「何でこっちを見る、瞬一」
「いや、わかるだろ?」
「俺の思ってる通りのことで瞬一が俺の事を見てるんなら、そうじゃねえよ!!」
何だ。
分かってたのか。
「言っとくが、俺はそこまで変態じゃねえぞ!!」
「ああそうかい。とっとと準備しに行け」
「軽く流された!?」
さて、毎回恒例となっているこの晴信いじりはこの辺にしておいて。
「んじゃ、俺達は買い物行ってくっから」
「行ってらっしゃ~い」
「また葵の家で落ち合うから!」
そんなわけで、俺と大和という、いまいち訳のわからない組み合わせで買い物に行くこととなった。
「えっと……これとこれと、あとこれだな」
俺と大和は、頼まれていたものをかごの中に入れていく。
リストは、先ほど紙に書いて送られてきたので、バッチリだ。
え?
どうやって送ってきたのかって?
そりゃ勿論、転移魔術でしょう。
「これで全部かな?」
「だな。それじゃあ清算済ませてちゃちゃっと帰ってしまおう」
かごに入れられた商品を、俺と大和はレジまで持っていく。
といっても、かごを持ってくれているのは、大和なのだが。
何でも、自分から行きたいと言っておいて、何もしないのも癪だからという話だ。
まぁ、俺としても大変助かるのだが、何だかむずがゆくてな……。
さっき俺が持つよと言ってみたが、
「大丈夫だよ。別に重くないから」
と、爽やかな笑顔で言われてしまっては、反論しようがなかった。
「しかし、よくもまあ俺達と一緒に来る気になったもんだな、お前」
「そうかな?友達なんだから、一緒に行動するのもおかしくないと思うけど?」
「お前、あの中で話したことあるの、俺一人だったじゃねえか」
「あはは……」
笑ってごまかす大和。
しかし、それが効いてしまう人物の一人だから、ちょっと羨ましい。
俺なんか、ちょっと葵となんかあった時に、笑ってごまかそうとしたら、
「笑ってごまかそうったって、そうはいかないよ?」
と、笑顔で言われたことがある。
それだけに、大和が羨ましかった。
「よっと」
かごを置いて、中身を清算する。
値段は……関係ないからここには載せないでおく。
「ありがとうございました」
店員による営業スマイル&定型文を聞いたのちに、俺と大和は店を出た。
「結構買ったな」
「だね。これだけあれば、十分だと思うよ」
「さて……とりあえずこの荷物を送ってしまおう」
俺と大和は、それぞれが持っている荷物を、地面に置く。
大和は、葵の家の場所を知らないので、俺がとりあえず転移魔術をかけることにした。
「……よし、これで完了っと」
荷物は送ったし、後は葵の家に帰るだけ。
そう思って、俺と大和は第一歩を踏んだ。
その時だった。
「……!?」
突如感じる、殺気。
「感じるか?大和」
「……一人じゃない。二人、いや、それ以上はいると思うよ」
「……でも、何で俺達を?」
「分かりません。とにかく、この場所から一刻も早く立ち去ろう」
なるべく早く。
しかし自然に、俺達はその場を離れようとする。
瞬間。
「?……!!」
パシュウ!!という破裂音が、どこかから聞こえてきた。
「ちっ!?」
とっさの判断で、俺は結界を発動させるべく、呪文を詠唱しようとした。
しかし、それより早く、
「聖なる壁よ。我らの身を守らん!」
大和はポケットから携帯を取り出し、魔術を発動させた。