揃ってしまったメンバー
「それで、本題なんだけど……由雪迅には近づかない方がいいよ」
「は?」
突然何を言い出すのだろう、大和は?
「由雪迅は、去年からSクラスにいた人間なんだ」
「それは知ってる。昨日、俺の友達に聞いたから」
「そうか……彼は去年からずっとこんな感じなんだ。どうやら人が嫌いみたいで……触れようとすると、魔術を出してくることさえあった」
「!?」
魔術で攻撃?
それほどまでに、人と関わることを拒絶してるってのか?
「だから、彼はそっとしといてあげた方がいい。その方が、彼の為にもなるし……君の為にもなる」
「……納得はいかねえけど、理屈は分かった」
つまり、自分の身が可愛いと思ったのなら、由雪に接することをやめろ。
そういうことなのだろう。
「まぁ……気をつけることにはするよ」
「うん。それがいいよ」
とりあえず、本日一人目の会話相手は見つけた。
「とりあえず、これからもよろしくな。大和」
「こちらこそ、瞬一」
そうして俺は、自分の席につく。
ふと横を見てみると、
「……あれ」
幻覚、か?
何だか、あいつの姿が見えるような気がするんだけど。
「おう瞬一!」
「……幻聴だ」
あり得ない声を聞いた気がする。
うん、気のせいだ。
聞こえるはずがない声だもんな。
「お~い、現実逃避するのもいいけど、そろそろ戻ってきてもいいんじゃねえか?」
「……とりあえず、ジャッジメントスパーク撃っとくか」
「待って!そんなの撃ったら教室なくなる!俺死ぬ!」
「じゃあライトニングで……」
「術変えればいいって問題じゃねえよ!!」
まあ、冗談はここまでにして。
「さて。ここからが本題だ……どうして晴信がこのクラスにいる?」
「それがな、俺の予想通り……ミスだったってこと」
「……マジで?」
「マジで」
……奇跡だ。
この男は、こんなにも簡単に奇跡を呼び寄せられるとでも言うのか!?
「どうだ凄いだろ?」
「別に凄くはねえよ。ただ……お前、いくら払ったんだ?」
「金じゃねえよ!!」
「じゃあ……体か?」
「男の体なんか誰が欲しがるかよ!!」
「実は校長はそういう趣味……」
「あり得ねえよ!あの人奥さんいるじゃねえか!」
久しぶりに聞いたな。
晴信の連続突っ込み。
「……あ!」
「……お?」
少し遅れて入って来たのは、
「葵じゃねえか!」
葵だった。
「瞬一~!」
「うわっと!?」
突然葵が抱きついてきた!?
ちょっ……少し足りない気がするけど、それでも胸が……。
「……今、失礼なこと考えてなかった?」
「いいえ、滅相もございません」
即答した。
だって、葵から何やら黒いオーラが出てるんだもん♪
……『♪』つけた意味が分からねえ。
「中学以来の、三人全員揃いだな」
「だな」
「ところで晴信……いくら払ったの?」
「お前もかい!!」
葵までもが、俺と同じ質問をする。
ただし、俺の場合は若干冗談混じりだけど、こっちは素で聞いてるから、更に効力はでかい。
「もうここまでくると清々しいくらいだから、いっそのことS組に入れた記念でパーティーでもやるか?」
「面白そうだね!」
「やろうぜ!」
「それなら、僕も混ぜてくれないかい?」
そう言って俺達の所にやってきたのは、一旦別の集団の所で話していた、大和だ。
「大和君?」
葵の『君』付けは結構レアだな。
まあ、呼び捨てで呼んでるのは、俺と晴信、後は中学からの友達くらいだからな。
後は基本的に、『ちゃん』とか『君』をつけるのが、葵の特徴の一つである。
「大和?誰だお前」
「君は初めてだったね……僕は大和翔。宜しくね」
「ああ……宜しくな!」
爽やかに挨拶をする大和。
「ま、人が増える分には問題ないだろ」
「後……あそこで君達のことを見てる子なんてどうかな?」
そう言って大和は、とある方角を見る。
そこには、紫色の長髪の女子が、こっちを見ている光景があった。
「一之瀬!」
その女子は、紛れもなく一之瀬春香だった。
「え?三矢谷君……?」
「お前もSに入れたのか!だったら一緒にパーティーやろうぜ?」
「え?は、はい……」
顔を若干赤くさせて、一之瀬は頷いた。
ちょうどよいタイミングで、
「お~い、席につけ~」
このクラスの担任になるだろう先生がやってきた。