謎の黒服達にはご注意を
「ちょっと待て!」
「!?」
黒服達の視線が、一気に俺の方に集まる。
……無機質な顔をしてやがる。
女子の顔まで見せてくれないか……。
金色で長髪ってことしか分からないや。
「こんな路地裏で女の子一人を大の大人が取り囲んで、恥ずかしいとは思わないのか?」
「……」
黒服は、先ほどからずっと黙り込んだまま。
というか、俺と会話をしようとしない。
……何なんだよ、こいつら。
まるで、感情なんで捨ててしまったような……。
「……!」
「な、何!?」
黒服の一人が、右手に炎の弾を作り出す。
こいつ、魔術師か!?
そしてそれを、俺の方に撃ってきた!!
「くっ!……あらゆる害より身を守る不可視の壁よ、我を守れ!!」
間に合うか……!?
ドン!という何かと衝突したような音が生じた。
黒服と金髪の女子、そして瞬一の間には、土煙が舞っている。
攻撃した黒服は、自分が獲物を仕留められたかを確認するまで、警戒を解いてはいなかった。
「……ふぅ。間に合った」
「!?」
瞬一の簡易結界は、間一髪の所で攻撃から身を守ったのだ。
「……」
ダッ!と足音を揃えて、黒服達は瞬一めがけて駆けてきた。
瞬一はその間に、自分の相手の人数を数える。
人数は三人。
ギリギリ一人でも勝てそうな人数だった。
「ここで戦うなら、武器を取り出した方がいいか……」
呟く瞬一を尻目に、
「……」
男達の手には、それぞれの属性を帯びた、刀みたいな武器が握られていた。
「なるほど……それが御所望かい?なら……力を宿す雷の剣よ。その姿を具現して我が武器となせ」
瞬一は、何かの詠唱をする。
瞬間。
その右手には、雷を帯びた刀らしきものが握られていた。
「サンダーソードの餌食になるがいい!!」
瞬一は、サンダーソードを構えると、黒服の一人に斬りかかる。
「たぁっ!」
ガキン!と、刀同士がぶつかり合う音が聞こえる。
「こんの……!!」
瞬一は、刀を持つ手に力を込める。
そして、一人の刀を押し退けると、
「はぁっ!!」
その力を利用して、もう一人の黒服に斬りかかる!
「……」
だが、その攻撃は受け流されて、相手はお返しにと言わんばかりに、炎の刀を瞬一に突き刺そうとする。
端から見たら、確実に避けることが出来ない攻撃。
だが、その刀が瞬一の体に触れそうになった時、
「我を襲う刃を葬り去れ!」
瞬一は詠唱する。
そして、その刀が瞬一に触れた瞬間。
「……!?」
黒服の手から、刀が消えていた。
怯んでいるところを、瞬一は峰で腹を斬る。
「ぐっ!?」
その言葉を漏らして、黒服の一人は気絶した。
残りは、あと二人。
「……!!」
「……さっきから、無詠唱で魔術を繰り出してきやがる。こいつら、何者なんだ?」
瞬一は思わずそう呟いていた。
「だが……倒さなくちゃならねえこと位は把握してるぜ!!」
瞬一はそう叫ぶと、近くの黒服めがけて斬りかかる。
縦に一閃。
しかし、その攻撃は流される。
そして、後方からの攻撃。
「ちっ!」
ブウン!と、風を斬る音がする。
刀が、瞬一のすぐ横を通り過ぎたからだ。
「これでも……喰らえ!」
後ろを振り向きながら、瞬一は左手に雷撃を込める。
「サンダーブレイク!!」
その左手は、相手の腹に、入った。
そのまま、鳩尾に入った痛みだけではなく、雷撃による感電も混ざる。
そのまま黒服は、気絶した。
残り、一人。
「……」
戦う気は失せたらしい。
倒れている黒服に一人ずつ触れ、何処かに転移させる。
そして最後の一人は、何処かへ走り去って行った。
「……ふぅ」
瞬一は、思わず溜め息をついていた。




