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88 通じ合えた心




 そして始まった各国の使者達の為のパーティー。


 アールスコート王国中の主要な貴族達も招かれた、ローズが思っていたよりも盛大なパーティーだった。


「ローズ。さあ、行こう。私の側で堂々としていれば良い。……何があっても、私は貴女を守るから」


 そう言ってレオンハルトはローズを安心させるかのように微笑んで手を差し出した。ローズは彼の目を見ながらそっと自分の手を乗せる。

 手袋越しに感じる彼の体温はローズの気持ちをほわりと温かくさせた。


 レオンハルトにエスコートされた『聖女』ローズは、豪華な大広間に足を踏み入れる。

 大広間ではたくさんの貴族や使者達がこちらを見ていた。


 ローズは今プラチナブロンドに金の瞳の『カルトゥール』家本来の姿。15歳の瑞々しい輝くような美しい姿に、会場中の者たちはほうとため息を吐いた。



 ……思っていたよりも、随分と大きなパーティーなんですけど! 今世でこんなのは初めてだから緊張するわ……!


 周りからはそうは見えなかったが、ローズはかなり緊張していた。レオンハルトの腕に絡めた手が少し震えているのを感じたレオンハルトはローズを見てニコリと微笑む。それを見たローズはふっと力が抜け、彼に微笑み返す。

 ……側から見れば、見つめ合う仲の良い恋人のように見えた。



 そしてレオンハルトはパーティーの参加者に向き合い、このパーティーの開会を宣言した。


 すると次々に国王代理であるレオンハルトや『聖女』ローズのところに大勢の人達が集まり順番に挨拶をしていく。


 ローズは前世の公爵令嬢スマイルと礼儀作法で周りの使者達や貴族に挨拶をしていった。

 人々は『カルトゥール』の一族である『聖女』の、とても身分を奪われていたとは思えない程の高位の貴族たる礼儀と気品に驚き、褒め讃えた。


 そしてレオンハルトと対になっている『聖女』ローズは、まるで婚約者同士であるかのように見える。

 周囲の人達は敢えて口には出さないが、2人はどういう間柄かと少しヤキモキしながら見ていた。



「此度は盛大なパーティーにお招きいただき、誠に有難うございます。レオンハルト殿。聖女様。リンタール帝国のジョゼフ バートンにございます。お2人にはご機嫌麗しく……」


 その時、お決まりの挨拶で機嫌良く声をかけて来たのは、ローズの友人フェリシアの父バートン公爵である。


「バートン公爵閣下。ようこそおいでくださいました。此度は大変有意義な時間を持てました事、大変感謝しております」


 レオンハルトも笑顔で答える。それを見たバートン公爵はまた目がキラキラしている。


「いや、こちらこそ、大変実りある話合いでございました。あれでもうこの200年の憂いも消えてしまいましたぞ!」


 豪快に笑いながら公爵は言った。……うん、コレはおそらく他国の方達への念押しの牽制ね。有難いことですわ。

 ローズはそう思いながら、ニコリとバートン公爵に笑いかける。公爵は嬉しそうに……そして、何か思い付いたかのようにニコリと笑い返し言った。


「……それにしても、先程から拝見させていただいておりましたが、お2人は大変仲がよろしいようですな! まるで、恋人同士のようですぞ!」


 爆弾発言が飛び出した!


 レオンハルトとローズは驚き、次の瞬間目を見合わす。


 公爵のその発言に、周囲で耳をすませていた人々が一斉にこちらを見た。


「ほら、今も。お2人で見つめ合われて……。国王代理のレオンハルト殿と『聖女』ローズ様。私はお2人はとてもお似合いだと思いますぞ? いっそのこと、このまま婚約されてはいかがですかな?」


 公爵の更なる発言が、会場中の人々を騒つかせた。


 純粋にこの2人はお似合いだという者。どちらかを自分の身内と縁付かせたくて反対するような事を言う者、これ以上このアールスコート王国に力を付けさせたくない者……。


 人々の色んな思惑が会場中に飛び交った。


 コレは……! バートン公爵はきっと私のマイラの時の恋の話を知って、協力してやろうと思ってくださったのでしょうけど……! 私はともかく、今のレオンハルト様にも選ぶ権利があるのですからね!


 ローズはなにやら顔が赤くなりながらも、そう心の中で叫んでいた。


 すると、レオンハルトは困ったようにこう言った。


「私も彼女はとても魅力的な素敵な女性で、このまま一緒にいられればこれほど幸せな事はないと思っております。ですが、実は今私は聖女に愛を告げている真っ最中なのです。ですから、もう少し私達を温かく見守っていただけたら幸いです」


 そうレオンハルトは皆に心の内を吐露とろした。……ローズはその言葉を聞き目を見開いて、そして彼を見る。レオンハルトはローズを見つめていた。2人は何も言わず暫く見つめ合う。


 ……そんな2人を、周囲の人々は言葉を発することも出来ずただ見守った。


 そして、色んな思惑を持った人達も、彼らの様子を見て心が温かくなり優しい気持ちで2人を見守る。……とても、心地良い時間だった。



 暫く2人は黙って見つめ合っていたが、先にその沈黙を破ったのはローズだった。


「私……。レオンハルト様の、お側にいても良いのですか? 私は、何も持たないただの娘なのに……」


 その瞬間、見守っていた人々は「イヤ、いっぱい持ってるだろ!」と心の中で叫んだが、皆賢明な事に沈黙を選んだ。


「……私は色んな貴女が好きなのだ。何かを持っていようがいまいが、何度生まれ変わろうが、私はやっぱり貴女に惹かれてしまう。私は、貴女のその魂に惹かれてしまうのだ。私こそずっと、側にいさせて欲しい。……ローズ、貴女を愛している」


 レオンハルトは渾身の想いをローズに告白する。ここまで周りにもお膳立てしてもらって、この想いを今彼女に告げずにいられない。


 ローズの美しい金の瞳から、涙が溢れていた。レオンハルトは彼女の涙を拭こうと手を差し出す。その時、ローズは思わずレオンハルトの胸に飛び込んだ。

 レオンハルトはローズの行動に少し驚きつつ、彼女の背中に両腕を伸ばしそっと抱き留める。


「……私も……、私も、愛しています」


 自分の胸に顔を埋めてそう告げたローズ。レオンハルトは信じられないような、何やらふわふわとした気持ちでローズを腕の中に更に強く抱き締めた。


「ローズ……!」


 その瞬間。


 周りがワッと歓声をあげた。


 2人が周囲を見渡すと、皆が嬉しそうに祝い、拍手をしてくれていた。

 ローズはそれにやっと気付き、恥ずかしくて再びレオンハルトの胸に顔を埋める。それが結局は抱き合っている体勢であったので、周りはまた更に囃し立てたのだった。



 盛り上がりがひと段落過ぎた時、バートン公爵が皆に提案する。


「さぁ。そろそろダンスの時間ですかな。我がリンタール帝国では婚約者であれば2曲続けて踊る事を許されます。……皆様! 今宵想いが通じ合えた2人に、特別に2曲続けて踊る事を許可してくださるかな? 良ろしければ拍手を!」


 会場内に盛大に拍手喝采が響き渡った。


 公爵の提案に、皆が笑顔で賛同したのだ。


 2人は目を見合わす。そしてとても嬉しそうに微笑み合った。

 それを見たパーティーの参加者は皆、幸せな気持ちになった。



 そうしてレオンハルトとローズは2曲続けてダンスを踊り、晴れて2人は想いも通じ合い公認の仲となったのだった。



 


お読みいただき、ありがとうございます!


バートン公爵のお膳立てのお陰で、2人はお互いの気持ちを伝え合う事が出来ました!


このパーティーは諸外国の使者や国内の有力な貴族対象の大人ばかりのパーティーだったので、後で話を聞いたフェリシアや学園のクラスの友人達は『見たかった!』ととても残念がりました。

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