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62 国王の能力



 アールスコート王国国王とその子で王太子であるレオンハルトの視線が合った。

 ――その時。



 キイィ……ン……バチッ!!


 何やら耳障りな音が聞こえたかと思うと、国王の身体が弾き飛ばされた。


 真後ろの壁に身体を打ち付け、ドサリと座り込んだ国王。……周りの貴族や衛兵たちも、一瞬何が起こったのか分からなかった。

 まるで激しい静電気かのように、国王はレオンハルトに触れる事なく弾かれたからだ。

 

「――皆の者! 見たか、先程国王が私にかけようとした力、これが我が国の邪悪な『魅了』! そして今その邪悪なその能力を弾き飛ばしたのだ! 国王は今までこの『魅了』の力で、人々を自分の都合のいいように操ってきたのだ……! 皆の者も、それぞれ何か思い当たる事があるはず! 国王が『魅了』で人を操ろうとしたのは決してこれが初めてではないのだから」


 呆然とする国王や周囲が事を認識する前に、レオンハルトが大広間中に響き渡る声で叫んだ。


 そしてそれを聞き、『……そういえば……』と言い出す貴族達。


『……まさか、他国の文献によく見る『魅了』。それは真の事であったとという事か……!?』


「我が家の伝承にも残っている! 『魅了』の事も『護り石』の事も……! まさかとは思っていたが……!」


「……我が父が急におかしくなったあの事件。確かアレは陛下と謁見してからであったはず……! まさか、陛下は父を……?」


「我が祖父も同じような事があった……! 前王の時だった……。もしや王家の人間は皆『魅了』が使えるのか!?」


 貴族達の疑いの勢いは止まらない。


 国王は打ち付けた腰の痛みにも気づかない程に顔が青褪めていた。


「……皆が皆、ではない。現に私にもない。……成人していない弟達は分からない。そして、おそらく我が国は『魅了』持ちでないと国王にはなれないのだ」


 レオンハルトがそう言うと、貴族達はハッとした。


「では……、今の陛下の兄上が国王にお成りにならなかったのは……、『魅了』の能力が無かったから……? ご立派であった第1王子が急な病を得たからと即位なされなかった事、当時は皆に不審がられていたのだ」


「いや、現在の陛下の時だけではない。我が王国ではご立派な長子が居ても然程さほど優秀という訳でもない弟王子が王位につくということが何度か起こっている。本人の資質を見て選んだと言われてはいたが……。それもまさか……」


 この国の古くからの重鎮の貴族達がその事に気付き、次々にその疑惑を口にした。レオンハルトはそれに頷く。


「おそらくは皆が思っている通りなのだろう。現に私も名ばかりの『王太子』だ。……『王太子』と指名しておきながら、その立太子の儀が約3年後の私の大学卒業後などと、おかしいとは思わないか? ……おそらくはその時までに、私に何か『不幸』が起こるはずだったのだ。それが今、この異常事態で国王は急遽私を『魅了』する事にしたようだ」


 周囲の貴族達はその事に「確かに」と唸った。


「……確かに……何故そのような長い期間を空けるのかと不思議に思ってはおりました。……して、陛下は何故()貴方様を『魅了』し、更にこの後どうこの事態を打開されようとしていたのでしょうか?」


 貴族達を代表するかのように、宰相が尋ねて来た。


「それは……我が国の『護り石』、私をその『にえ』とする為。

……この200年の長きに渡り、それは行われてきたのだ。何人もの……いや何十人もの魔法使い達がその『贄』とされてきたのだ。今までの国王は優秀な魔法使い達を『魅了』し、『護り石』に捧げてきた。……そんな事を続けてきた我が国にはとうとう優秀な魔法使いが居なくなってしまった。そんな中、我が父王はとうとう我が子である私を『贄』にと選んだのだ」


 ザワッ!!

 大広間が揺れるが如く、人々が動揺した。


「我が国は……、我が国がそのような……生贄を必要とするような恐ろしげな国だったとは……!」


「この王国に強き魔法使いが居なくなったのはそういう訳だったのか!」


「いやしかし……。贄を供えればこの国から魔物が居なくなるというので有れば多少の犠牲はやむなしともいえるのでは……」


「それならば、貴公が『贄』となってみるか?」


「……ッ! な……! わ、私は侯爵だぞ!?」


「それならば、王子殿下を『贄』とさせるのはおかしいではないか!?」


 皆が思い思いに話し出した所で、レオンハルトはスッと手を挙げた。

 皆が、再びレオンハルトに注目した。


「……この、『勇者の護り石』。神から『天啓』を受け授かりし偉大なる力を持つといわれる石。……しかしこれが本当に神から授かったものならば、果たしてそれは『贄』を必要とするだろうか?」


 大広間に集う皆がハッと、その事に気付く。


「神がこの国の初代国王に『勇者の護り石』を与えたというのなら、この石を使う為に罪のない魔法使いの命を『贄』とする事を要求されるだろうか? そして今回、我が子を『贄』にと差し出そうとするこの国王を神はお許しになられるのだろうか? 

あの石が神の御心というのなら、そのような事は決してあり得ない! ……という事は、あれは神からの贈り物ではないのだ!」


 ――大広間は、一瞬シン……と鎮まった。




お読みいただき、ありがとうございます。


国王の『魅了』の力を跳ね除けたレオンハルトです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] レオンハルトは偉いな、弟のテオドールを庇った。弟思いの兄。 [気になる点]  そういえば、エルフの王様は魔女マイラと出会ってから、他の女性に恋をしていない感じかな?。恋の病、恋の魅力に陥っ…
[良い点] レオンハルト様素晴らしい演出及び声明。 [気になる点] 『……まさか、他国の文献によく見る『魅了』。それは真の事であったとという事か……!?』→二重かっこが1番外側もあること?。 [一言]…
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