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51 ミゲルの協力


「……もうあの魔石の手入れをさせない。そして各都市に結界を張る、という事なら僕もこの魔物達を大人しくさせる事に協力してもいいよ。……でもその為には王国側がそれに納得し、魔物がこれからは他国と同じようにこの地に入ってくる事を自分の民に説明してもらわなければならないね。そして、僕らはその魔石を使わせないように回収しなければならない」


 ミゲルはこれからの協力と、それを行う上での王国に飲ませる条件を提示してきた。……王国はこの条件をのむだろうか?


「王国がその条件を飲むのはかなり厳しいのだろうけれど……。ただ、おそらく次の『魔石の手入れ』は……レオンハルト殿下を『魅了』してさせるつもりだったのだと思うの。……まずは、レオンハルト殿下をこちらの味方につける事が必要になると思うわ」


 ローズがそう言うと、ミゲルは驚く。


「……まさか! こう言っては悪いけれど、レオンハルト殿下が以前ローズが話していた分の魔力をその『魔石』に入れたなら、彼の命は保たない。君の言う通りの魔力が必要なら、僕でさえしばらく動くのが辛いレベルだよ? 王家の人間に……、まさか自分の息子にそんな事を強いるなんて……!?」


 ミゲルはそう言いながらも、今までの国王のレオンハルトへの対応からもそれがあり得ない事はないと思い始めているようだった。……いずれその立場を剥奪するつもりでありながら大切にしている存在。ただ、我が子にそんな事をさせようとしているアールスコート王国の国王の事を信じられない、といった様子だった。


「本当はこの予想が違っていれば良いのだけれど……。……とりあえず、私はレオンハルト殿下とこの話をするわ。彼への説得が無理ならば国王への説得ももっと難しいもの」


「……そうだね。だけど国王側への接触は危険すぎる。いくら『魅了避け』があるとは言っても1人ではやめた方がいい。それに王国側は魔物を抑え込めるだけの力を持った者がいると分かれば国民を盾に取り、魔物の排除だけを申し出てくる可能性が高い。……それでいて彼らは魔物の恐ろしさを分かっていない。

ある程度の被害が出て、あちら側から助けを求めて来てからでないと難しいのかもしれないね」


「……確かに、王国は少し前から強い魔物が入っている事を知っているはずなのに放置していたわ。魔物の恐ろしさを分かっていないか、自分達に被害が出ないだろう内は何もしないつもりだったのか……。今、魔物達が雪崩れ込んできたという知らせで初めて危機感を抱いたのかもしれない」


 王国は強い魔物が入りかけているという最初の知らせを受けた時点で何か手を打つべきだったのだ。そうすればこれ程強い魔物達がやってくるという事態にならなかったかもしれず、自分達の首を絞めずに済んでいた。国境の地の人々に被害が及ぶ事も無かったというのに……。


「……つくづく、国を預かる者としての資格のない者達だよ。ローズ、僕はとりあえず国へ帰って魔物を抑える為にこれからの事を話し合ってくる。君はレオンハルト殿下への説得と、街単位の結界の『魔石』を作っていて欲しい。魔法をかけるよりおそらく早いし確実だ。……魔力はまだ大丈夫? ……そうだ、そういえばさっきも魔力を使っていたよね、何をしていたの?」


 ミゲルがローズの残りの魔力を気にして心配しながら聞いてきた。


「さっき? ……ああ、レオンハルト殿下が魔物と戦うと聞いたので、例の魅了除けの『御守り』に更に『魔法防御』の強化と『物理攻撃』を跳ね返す効果を追加してお渡ししたの。何せ角ウサギの小さな魔石だから、『物理攻撃』は10回程しか跳ね返す事が出来ないのだけれど……。レオンハルト殿下の側近の方もそれでは力不足なのか黙り込んでしまわれて……」


 ローズがそう言うと、ミゲルも黙り込んだ。それを見たローズは「やっぱりそうだったんだわ!」と慌てて付け足す。


「……ああ、やっぱり力不足よね!? まだまだ研究の余地があるのよね……。昔はもっと大きな魔石がたくさんあったから、魔力もそのままたくさん込められたのだけれど……。小さな魔石にももっと魔力を圧縮出来るように研究しなければね。また落ち着いたらもっと研究するわ」


 ミゲルはじっと黙っていたけれど、ポソリと口を開いた。


「……多分、その側近の方も僕と同じ気持ちで黙ってしまったんだと思うんだけど……。いい? ローズ。普通はそんな効果のある『御守り』なんてないからね?」


 ミゲルはそう言ってから一つ大きな溜息を吐いた。


「この前、僕とフェリシアは君がくれた『魅了除けの御守り』をもらった時驚いていただろう? アレだってたとえ原型があるからといって簡単にその仕組みを読み取って更に改良してパワーアップしたものを直ぐに作れる、なんて事に驚いたんだよ。そして今回、そこに更に『魔法防御』アップに『物理攻撃』を跳ね返す力? この世の中にそんな都合のいい『御守り』なんてないから、信じられずに固まって黙り込んだの!」


 ミゲルの言葉に今度はローズが驚く。


「いえでも……。今回たくさん機能がついたからすごく思えるかもしれないけど一つ一つはそれ程ではないのよ。それにレオンハルト殿下は初めて魔物と対峙するのよ?おそらく書物くらいでしか強力な魔物を見た事は無いと思うわ。そんな彼にはこんな程度の『御守り』では心許ないのではないかしら……」


「いや。こんな極上の御守りを持った者は他には居ないからそれは心強いことだろうと思うよ。だけど僕はローズを信じてるからコレがその効果が本当にあるという事は分かるんだけど……。よくその側近の方は信じてくれたよね?」


「ええ、それは私が教会も認めた『聖女』だと側近の方も知っているから……」


「───ちょっと待って。ローズは『聖女』がどんな存在だと思ってるの? 『聖女』はこんなに何でも出来るような女神のような存在じゃない。治療魔法中心の癒しの存在なのだからね。

……はぁ……、それに側近の方にも『聖女』だと知られているのだね……」


「直接『聖女』と名乗った訳じゃないけど、さっきこの不測の事態で側近の方の前でも魔法を使ったから……。それにレオンハルト殿下に近しい方だからある程度は予測されていたのかも。

……『聖女』は教会所属の聖属性魔法中心の魔法使い。200年前に私は彼女達が作った『御守り』をもらった事があるの。……それから魔石に効果を付けるという事に興味を持って研究し始めたのだから」


「稀にそんな魔力の強い聖女もおられたのかもね……。そしてたまたまその強い『聖女』に会ったローズが勘違いしてしまったということか……。

まあとにかく、一般的な『聖女』は治療魔法のみしか使えない。そしてローズが『一つ一つは大したことない』と言ってる効果だけど……。僕のもらった今の改良前の『御守り』。その魔法防御能力は相当なものだったよ。僕が普通に放った魔法も跳ね返した。ローズの話してた『少しの魔法防御力』じゃなかったからね? そこに更に強力にした『魔法防御』と『物理攻撃』能力の追加? こんなのハッキリ言って国宝級だよ?」


「国宝級って……、それは大袈裟過ぎではない? それにコレは多分そんなに回数が保たないのよ。今回の戦いで最後まで保つかどうか……」


「……多分、保つよ。ねえローズ。そういえば君200年前リンタール帝国で『護り石』を作っただろう? 覚えてる?」


「リンタール帝国……? ……あ! ええ、帝国図書館で貴重な魔導書を貸してもらう代わりに当時戦争していて不穏な時期だったから、お礼に攻撃を相手に跳ね返す『護り石』を作って渡したの。攻撃して来た者に攻撃が返るのよ。でもそれもほんの少しの時間しか保たないものだったのよね……」


「……ソレ、今でもリンタール帝国の貴重な『護り石』として使われているよ。あれ以来一度もリンタール帝国の帝都は敵の侵攻を許していない。『マイラの護り石』として国宝として帝国の高位の魔法使い達が代々大切に守ってきた」


「え。本当!? まだ、使えているの? あの時アレを渡した魔法使いに半年経ってもまだ使えてるとは聞いたけど……。でもあれから200年程も経っているのよ? 帝国の魔法使いがまた新たなものを作ったのではない?」


「もし自分達で新たに作ったのならそう宣伝するだろう? マイラの功績だけにしておく理由がないよ。それに確かにあの国の護り石からは君の魔法の波動を感じるからね。……だからね? ローズ。君が思っている以上に君が作りだした『魔石』は効力を発してしかも長期間使えるんだ。だから、この国の元ドラゴンの魔石から作り出された『護り石』も想定以上の効力を出したのだろうね」


「……そうなの、かしら……。……確かに、この国の『護り石』は王都位の範囲を想定していたのだけれど……」


 ミゲルはそれを聞いて頭を抱えた。


「この王国の王都の範囲の守りのつもりが、この国全体の範囲になってしまうのか……。はは、……ローズ。先ほど話した街単位の護り石、街の中心だけ護るつもりの範囲でいいからね? ローズの魔法は想定の10倍は軽く超えてしまいそうだからね……」


 途中乾いた笑いが入ったあと、真剣な顔でミゲルはローズに言い聞かせるように言った。


「え? でもそれはさすがに小さ過ぎて危ないのではない? 街を守りきれなかったら困るじゃない?」


「……多分、それで大丈夫なんだと思うよ。試しにいくつかそれで作ってみてくれる? 足りなければ力の追加も出来るだろう?」


「ええ。それはまあ大丈夫だけれど……。本当に、いいのね?」


 ローズは何度も聞きなおし少し不安そうだったが、昔からミゲルの言う事は大概正しかったので言う通りにしてみる事にしたのだった。


 そしてミゲルはいったんエルフの国に帰り、ローズはレオンハルトと話をするべく王宮の様子を窺うのだった。



お読みいただき、ありがとうございます。


ミゲルはマイラの気配を感じたこの国を調べる為と、この国の仕組みを変えるきっかけを探しにやって来ました。

やっと物事が動き出しそうな気配に慎重になりつつ、ローズの魔力の強さに驚き脱力気味です。

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