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50 魔物のいない国


 魔物は本来同じ仲間同士でしか群れない。こんなにも色んな種類の魔物が集中しているのは異常だった。



「……ミゲル。『コレ』は結構な数よね」


「……そうだね。強い魔物がいないという事がウリのこの国にこんなにたくさんの魔物が殺到するなんて……。コレは以前ローズが話していた現在王国が所有している『元ドラゴンの魔石』、その魔物除けの『護り石』の効力が落ちて結界が弱ってるということかな?」


 2人で目を見合わす。


 2人には遠く国境の地で一箇所結界が弱まり、そこから魔物達が我先にとアールスコート王国に入ってきている様子が視えている。


「……おそらくはそうだと思うわ。以前から国境の地では結界の力が弱まり強い魔物が入ることがあるようだと話を聞いていたのだけれど……。王国はそれを無策のまま放置していた、という事ね。コレは国の失態だわ。

……実は今、レオンハルト殿下が魔物退治に召集されたようなの。……だけどコレでは……」


 ローズは表情を曇らせた。


「魔物に慣れている国でも、コレだけの数の強力な魔物達を相手にするのは厳しいのではないかな。手練れの一個師団を向かわせても難しいレベルだね。確かに、レオンハルト殿下の魔力では無理だろう。……というか、エルフでも僕と数人で向かわないと厳しいな……。王国はどうするのかな?まさか王太子でこの国1番の魔法使いを今こんな所で捨て駒にはしないだろう?」


「この時点でレオンハルト殿下をそんな風にするつもりはないのだろうけど……。結局は王国も魔物の恐ろしさを本当のところは分かっていないのかもしれないわ。だからレオンハルト殿下を向かわそうとしている。他に方法がないのかもしれないけれど……。そしてコレは放っておいたら魔物達はこの王都まで雪崩れ込む可能性があるわね……」


 今この国に入ってきた魔物達はどこに向かうのか? 各地に向かうかもしれないが、ローズは何故かこの王都に向かう気がした。


「これだけの強さの魔物がたくさんいてその地で止められなければ、ここまでやって来るかもしれないね。そしてこの国には長い間魔物がいなかったからか、周辺の街やこの王都でさえ魔物除けの魔法がかかってない。

……この王国と敵対する他国の者とすれば労なくこの王国の始末を付けられるという訳だけど……。国民が犠牲になるのはいけないな」


 やはり、エルフの国もこの王国の事を許してはいないのだ。しかし、国民の犠牲を払う事は望んでいないようだ。


「そうね。……ここは、食い止めなければいけないわ。そうでなければ罪のない人々が犠牲になる事になる。それに王国の討伐隊の人々も無駄に犠牲を払う事になってしまうもの。魔物達にこの国を蹂躙される訳にはいかない」


 レオンハルトやこの国の騎士団がこの魔物達に対抗出来る知識や力を持っているかはかなり怪しい所だ。そして今この王国の要である騎士団とレオンハルトを失えば、王国自体が瓦解する事だろう。

 そしていくら王家憎しといえど彼ら騎士団や国民まで犠牲になることは違うと思う。


「ローズ。……僕が言ったのはそういう事ではないよ。魔物達にもこの地に住む権利があるということ。国民達を守るには王都や町に結界を張ればいい。本来魔物が居ない国、というのがいびつなんだよ。

……知ってるかい? この200年この国から弾かれた魔物達はこの国を囲うように暮らしている。魔物は200年前いきなりこの地の自分達の住処を追われたんだ。この世界の生きとし生けるもの、たとえ魔物でもこの土地に住む権利がないなんて人間に決める権利なんてあると思うかい?」


 ――魔物がいない国。


 ……その昔は人々の間では、それが理想郷だと語られていた。

 しかし、魔物達も当然子供を産み育てそれぞれ必死に生きている。そして他の国々では魔物は大概は人々とは離れた場所を住処として暮らしている。わざわざ魔物の住む範囲に入っていく冒険者などは別として、稀にいる凶暴な魔物や迷い込んだ魔物による被害などはあるが、殆どの人々は魔物とは無縁で生きていく。


 ――強い魔物を国から追い出し、この国はどうなったのか?

 確かに人々は魔物に襲われる事はなく、国としても対魔物対策の経費なども掛からない。

 しかし魔物がいない事で生態系が崩れ、動物が増え農作物の被害が増えたり動物によって人が危害を加えられたりしている。そして魔物を狩る冒険者も入って来ない為観光業も衰え、経済も衰退した。魔物から取れるはずの貴重な魔石も残っている弱い魔物からしか取れない。

 そう、理想とされた『魔物のいない世界』は結局はマイナス部分も多いのだ。


「……『魔物の住む所を奪う権利』……。そんな権利は人間にはないわね。それに『魔物のいない国』は決して良いことばかりではななかった……。『国の護り石』は、強力過ぎたのね……。アレがこの国全土の魔物を追い出してしまうなんてこと、あの時は思いもしなかった」


 ローズは自分の作り上げた『護り石』が起こしたこの結果に申し訳ない思いだった。


「……マイラは魔物除けの魔石を作った。これ程大きな効果のあるものとは思わなかったんだろうけれど、結果はこれなんだ。

……コレは今、前世の魔石が引き起こした事を修正する時が来たのだと思わない? 僕らエルフから見れば、生きる為でなく他者を殺せるヒトが1番凶悪なんだ。この土地に魔物を入れないこの護り石の結界を無くし、アールスコート王国王家の特殊性を無くさなければいけない」


 ミゲルの言葉は正しいと思う。けれど……。


「確かにそれはしなければいけないけれど、今は魔物達の暴走を止めなければならないわ。……そして人々に丁寧な説明をして各街に魔物除けの魔法を施してからの結界の解放。そうでないと人々にも魔物にも大きな被害が出てしまうもの」


 一度魔物のいない世界を経験した人々がすんなり受け入れるかは分からない。しかしこの無理矢理整えられた『魔物のいない世界』という異常な状態を元に戻していく必要があるのだろう。







お読みいただき、ありがとうございます!


自然界のどの動物が欠けても、生態系が崩れて大変な事になります。そしてこの世界の『魔物』と呼ばれるものと一般の動物との違いは、決定的なのは魔物は死後【魔石】が取れること。そして普通の動物よりも強い生物、ドラゴンや大狼などの魔法も使えるものもいる事です。

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