49 前世からの友人
「――また、レオンハルト殿下のところへ行っていたの?」
ローズがレオンハルトの研究室から出て帰ろうとしていると、そこには自分を待っていたのであろうミゲルがいた。
「ええ。お渡ししたいものがあったから。でももう先に殿下は帰られたわよ?」
……ミゲルは機嫌が良くないようだわ。
そう考えながらローズはミゲルと一緒に歩き出す。
「……それに、また魔力を使ったんだね。ローズ……いや、マイラ」
ミゲルはそう言って足を止めた。
「……マイラ。……僕のことが分かっているんだろう?」
ローズも立ち止まりゆっくりとミゲルの顔を見た。彼は自分の心を見透かそうとするかの如くじっとローズを見ていた。
……うん。気付かれているのだろうとは思っていた。ミゲルとは前世マイラの時に共に戦った仲なのだから。
「……どうして、そう思ったの?」
肯定はせずに問いかける。
「……僕たちエルフはその魔力の質で人を見分けるんだ。君が半年前大きな魔法を使った時から、エルフの国ではほぼ皆んな君の気配に気付いてる」
……ほぼみんな。
確かにローズも魔法の質でその相手を判断する。半年前のあの魔法は、自分の存在を世界に発信してしまう事になっていたのか。
ローズは大きく諦めのため息をついた。
「…………そうなの……。でも私は、ローズ ダルトンよ。……ただ、マイラの記憶も持っているというだけ。私はローズとして生きているの」
ミゲルはそれに頷きながらも、難しい顔をして言った。
「……それは、そうだ。けれどこれ以上この国に、レオンハルト殿下に深入りするのはやめた方がいい。この国はマイラを苦しめた元凶なのだから。
……そして、出来れば僕たちエルフの国に来て欲しい。……長はずっと、この200年ずっと君だけを思い続けている。一度だけでも会ってやって欲しい」
「……クリストバルが……? でも私はあの時……あのお話は断ったはずなのだけれど……」
ローズは困惑した。前世マイラはクリストバルからのプロポーズを断った。それなのに生まれ変わって今更わざわざ会いに行くのもおかしな話だろう。
「……あの時、クリストバルを始めミゲルやエルフの皆様にはとてもお世話になったわ。感謝しても仕切れない。いつかはご挨拶には向かいたいと思うけれど……。私はローズなの。……今はローズとして生きていきたい」
ミゲルはそれを聞き、少し悲しそうな顔をした。
「…………分かっている。でもいつかは……、友人の僕の故郷に遊びに来てくれると嬉しい。僕は君の良き友人として、君を今度こそ守っていく事を誓うよ」
ローズはミゲルが自分の気持ちを尊重してくれた事を感じた。彼はきっとエルフの国からの命令で動いているのだろうに、ローズとして生きる今の自分を認めてくれた。その気持ちが嬉しくてローズは微笑んだ。
「……ありがとう。ミゲル。いつか必ず伺うわ」
そんなローズを見て、やっぱり今世もローズには敵わない、そう思いながらミゲルもローズに微笑んだ。
……ミゲルは、200年前マイラを救えなかった事をずっと悔やんでいたのだ。あの燃えさかるカルトゥール家の屋敷を見て涙を流したあの時を……。エルフの長に言われたからでなく、今度こそ彼女を守る事を自分自身に誓っているのだ。
キィィン…………
その時突然感じたその気配に、ミゲルとローズはピクリと反応する。
この王国の端、ある一点に魔物の気配が集中している。……2人はその気配を感じたのだ。
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お盆も近付き慌ただしい時期になってきましたので、しばらく更新を2日に1回にさせていただきます。
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