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48 魔物達の来襲


 ローズは目を閉じ一つ息を吐きレオンハルトを見た。


「……レオンハルト殿下。何故私が知っているのかは問わずに聞いてください。……この国には――」


「御無礼致します! レオンハルト殿下! いらっしゃいますでしょうか!?」


 その時この部屋の扉の向こうに誰かが現れた。


 3人は顔を見合わす。レオンハルトはパウロに頷く。


「……いかにも。いらっしゃるが、何事か」


 パウロが扉の向こうに声をかける。


「火急の件にて……! お目通り出来ますでしょうか!?」


 向こうの使者は随分と慌てているようだ。


 レオンハルトはローズを見、ローズは頷き後ろに下がり『認識阻害』の魔法をかける。それを見てレオンハルトは魔法の鍵を開けパウロに頷いた。


「……入られよ」


 すると、丁寧ながらかなり慌てた様子で1人の男が入って来た。


「殿下、御無礼をお許しください! ……実は我が国の辺境の地に、強力な魔物達が雪崩れ込んで来たと知らせが入りましてございます! 陛下はすぐに魔法師団と騎士団に向かうようにと……!」


「なっ……!? 我が国には勇者が神より授かりし護りがあるはずではないか……!?」


 2人は驚き、思わずパウロは言葉をこぼした。


「そうなのでございますが……! 何やら最近は時々強い魔物が迷い込むこともあったそうにございます。とにかくとりあえず王宮へ……!」


「……分かった。すぐに向かおう。……パウロ。この部屋の片付けをしたら後で追いかけてくれ。……行こう」


 レオンハルトはローズをチラリと見てから、使者と部屋を出て行った。


 パウロとローズはレオンハルトを見送ったあと、2人で無言で部屋の窓とカーテンを閉めカップなども片付ける。

 パウロは魔物の事やレオンハルトの事を気にしつつ、ローズが先程言おうとしていた事も気になっていた。

 

「……マクレガー様。コレを……」


 声がかかりそちらを見ると、先程レオンハルトに渡しそびれた『御守り』を持ったローズがいた。


「先程レオンハルト殿下に渡しそびれてしまいましたから……。殿下からお聞きだとは思いますが、コレには『魅了』避けと少しの魔力なら弾く力があります。今日はとりあえず5つ程お持ちしたのですが、また必要があればお声掛けくださいと殿下にお伝えください」


「……ありがとうございます」


 その魔力の大きな『御守り』を受け取る。少し手が震え何やらズシリと重みを感じた。


「……それで、あの……。レオンハルト殿下は、その辺境の地へ魔物退治に向かわれる、という事なのでしょうか……?」


 ローズが不安そうに尋ねる。


「……おそらくは。殿下はこの国の1番の魔法使い。このような時には否応なしに周りからそれを求められてしまうのです。そして殿下も責任感から快く応じられます。……ですが……」


 パウロは言葉を続けられなかった。強力な魔物達の来襲。今までここまで危険な案件は無かった。……このアールスコート王国には、今まで強力な魔物は居なかったのだから。

 そんな未知の案件で、いつものようにレオンハルトが無事にコトを収められるかは分からない。


 王家の『魅了』などの事だけで手一杯であったのに、強力な魔物達がこの王国に入ってくるとは、一体これからどうなってしまうのか? そしてこういう時だけは当然のようにレオンハルト様に任せられる事になるのだ……!


「……マクレガー様。先程の『御守り』を貸していただいてよろしいですか?」


 パウロはつい考え込んでローズに失礼な事をした、と少し焦りながらも先程のペンダントを渡す。

 ローズはそれを受け取ってニコリと微笑み、そしてそのペンダントに手をかざす。

 ……そして、溢れ出した金色の魔力。


 パウロは目を見開いた。そして目の前のローズの姿に魅入られるようにそのまま目が離せなくなった。


 目の前のローズの髪は美しく輝く金髪にに見えた。そしてその見事な金の髪を揺らしその黄金の魔力を惜しみなくペンダントに込めていた。その間はおそらく数秒の事だったのだろうが、パウロには時間の感覚などないような不思議な気分だった。


 ローズの魔力が揺れて消えていくと、彼女の髪も栗色に戻っていた。目を開いたローズの瞳は一瞬金色に見えたのだが、瞬きしてもう一度見るといつもの榛色だった。


「……これは……。私は、もしや『魅了』されてしまったのでしょうか……?」


 こんな心地よい『魅了』ならばかかってもいい、そうパウロは思ってしまった。

 それを聞いたローズは思わずクスリと笑った。そして先程のペンダントを差し出しながら言った。


「……まあ、マクレガー様ったら。そのようなことがあるはずありませんわ。……はい。コレを。先程の効果に、ある程度の魔法を跳ね返し、魔物の物理攻撃も魔力で跳ね返す力を追加しました。ああでも、物理攻撃は10回程度を限度とお考えください。それ以上攻撃を受ければコレは壊れて効果は失われます」


「…………は?」


 パウロは一瞬何を言われたのか分からなかった。いや、分かるのだが、そんな事が有り得る訳がないだろう? ローズは……、聖女は自分を揶揄っているのか? 

 先程のローズの姿、あの溢れ出た魔力……。自分もなるほど彼女は『聖女』であると心からそう認める。……だが、そんな都合の良い力を持った『御守り』など、ある訳がない。『聖女』とは普通、聖魔力を、治療系の魔法を使うだけの魔法使い。こんな女神とも思える力など持ちえるはずがないのだ。


 ――それとも、本当に自分は美しいこの『聖女』に魅入られ、おかしくなってしまっているのだろうか?


 ペンダントを見たまま黙り込んだパウロに、ローズは少し困ってしまった。


「……あの。10回位ではやはり少ないですか? でもこの魔石にはこれ以上の魔力を入れることが難しくて……。もう少し大きな魔石にだったらたくさん回数分を入れられると思うのですが……力不足で申し訳ございません」


 ローズはたくさんの強力な魔物達がいる所に行くレオンハルト達には、たった10回程度の攻撃を躱すことが出来る位では役に立たないのか、と自分の力不足を恥じながら言った。


 しかし、パウロはまたどうしたらいいのか分からなくなった。

 ……今、目の前の聖女は何を言っている? 『力不足』? この、とんでもない力があるらしいその『御守り』の事を言っているのか? もしや……、本当にそんな力がこの魔石に?


「ローズ嬢……。本当に? 本当にそのような力が、この魔石にあると言うのですか……?」


 まだ信じられない思いでパウロはローズに問うた。


「はい。……あの。もしもっと強力な魔石を手に入れられるのでしたら、それをいただきましたらもっと回数を増やしたコレよりも強い『御守り』をお渡し出来るかと思います! ですがおそらく、この国では強い魔物がいなかったのでこれ以上の魔石はそれほど手に入らないと思うのです……。それが魔物のいない国の欠点ですね……」


 ローズはため息を吐きながら少し憂いた顔をした。

 ――まだたった15歳のうら若い聖女。その聖女の生み出しし強大な力を秘めたこの『御守り』。


 パウロは今は深く考える事をやめた。自分達はこの『御守り』を必要としている。そしてそれを授けてくれた聖女。

 ……今はそれを有り難く受け取り、使わせていただく以外にはない。



「ありがとうございます。聖女様。これは今の私達が心より必要とするもの。きっとレオンハルト殿下をお助けしてくれる事でしょう」


 パウロは心より有り難く感じ、ローズを拝み倒したい気持ちを抑えながら言った。


「……マクレガー様。ローズですわ。お役に立てれば良いのですけれど……。……ただ、どの程度の魔物達がこの国に入って来ているのか、という事ですわね。我が国は今まで魔物がいなかった分、その対処法を知らないはず。冒険者などもいないことから国の騎士団や魔法師団のみで対処しなければいけない、ということ。……厳しい戦いになりますわね」


 ……そう。コレは今までの盗賊やならず者達との戦いではない。

 ――未知の、強力な魔物達との戦い――


 パウロはローズから預かったペンダントを握りしめ、必死で気持ちを鼓舞しレオンハルトを守り抜くことを決心するのだった。





お読みいただき、ありがとうございます!


ローズがこの国の秘密を話す前に、魔物達がこの国に入ってきました。

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