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47 王家の秘密



「こんにちは。ダルトン子爵令嬢。昨日はお休みだったと聞いたんだけれど、もしかして一昨日の僕の説教が原因かな……?」


 授業が終わり、ローズはフェリシア達には寄るところがあると言ってレオンハルトの研究室に行こうとした。……その途中でレオンハルトの側近パウロに出会ったのだ。というより彼はローズを迎えに来たのだろう。


「こんにちは、マクレガー様。

いいえ、昨日は体調を崩してしまっただけで、一昨日のお話とは一切関係ございませんわ。ご心配していただいたのですね、申し訳ございません」


 ローズがそう言うと、パウロはホッとした顔をした。


「そうですか。……それは良かった。今お時間は大丈夫ですか? 殿下がお待ちです」


 そう言ってレオンハルトの研究室に向かったのだった。


「ローズ嬢……! 体調は大丈夫なのか? それとも一昨日の事で悩ませてしまったのか……?」


 レオンハルトはローズが部屋に入るなりそう声をかけ、椅子に座るように促した。そしてレオンハルト自らお茶を用意し勧めた。


「皆様にご心配をおかけしたようで、申し訳ございません。ただ少し体調を崩しただけなのです」


 2人の様子に申し訳なく思ったローズがそう言うと、レオンハルトは心配そうな様子ながらも頷いた。


「そうか。無理をしてはいけないよ。今日もそんな状態であるのに呼び出して済まなかった。ローズ嬢の顔を見たかったのだが、私がそちらへ向かうとどうしても目立ってしまうのだ……」


「ええ、そうですわよね。私は本当に何ともないのでお気になさらず。……それから、実は私も殿下にコレをお渡しに来ようと思っておりました」


 そう言ってローズは昨日大司教に許可をもらった『御守り』をレオンハルトの前に出す。


「……これは……! 貴女が作られた『御守り』!? まさか、こんなに早く……。ローズ嬢。まさか昨日は無理をしてコレを作られていたのでは……!」


 レオンハルトは驚く。この『御守り』にはとんでもない程の魔力が込められている。それをこんなにたくさん、しかも話をしていたのは2日前。昨日無理をして作ってくれたとしか思えなかった。


「いえ。昨日はお昼前にはすっかり体調は良くなっておりまして……。手持ち無沙汰だったので作っただけなのです。……それから……、昨日大司教様よりこの『御守り』をお渡しする許可をいただきました。その折殿下にお尋ねする様に言われたのですが……」


 ローズは早速、大司教からレオンハルトに尋ねてみるように言われていた事を聞いてみることにした。


「大司教様から……? ではこの御守りは教会経由だという事か……。大司教様はこの御守りをただ私に渡す事を良しとされず何か条件を付けられたという事かい?」


 確かにローズは教会の聖女なのだから、彼女に属する物は大司教に確認しなければならないのだろう。……そしてレオンハルトは以前『聖女』の事で大司教とやり合ったのだ。あまり良い印象は持たれていないに違いない、とレオンハルトは自覚している。


「……いいえ。大司教様は、この『御守り』はレオンハルト殿下が誰よりも必要とされるものだろうと、そう仰って……。それは何故かと私がお聞きしましたら、その理由は殿下に直接お尋ねするように、と」


 レオンハルトとパウロはその言葉に驚く。大司教はレオンハルトが『御守り』を、『魅了』避けを必要としている事を知っている? それは、レオンハルト自身にその能力が無いということと今の王家の本当の内情を知っている、という事。


「大司教様が……。……そうか。……この御守りをいただくことで我らの状況は随分と有利になる。協力をしてもらうのだから話をして当然か……。そして大司教様は私のこの状況を何もかもご存知だったということか。……流石だな」


 レオンハルトは大きく息を吐き、決心した。この聖女ローズに何もかも話をすることを――。





「――では、レオンハルト殿下のお父上である国王陛下は、殿下を(仮)の王太子とし、『魅了』の能力を持っているだろう弟王子達の成長を待っている、と……。そしてその跡取りと決まった弟王子にレオンハルト殿下を『魅了』させるおつもりだろうという事、ですか……」


 ローズはレオンハルト達から話された内容に、予想された部分とそれ以上の事実に驚く。


「……おそらくは。そして我が国では高い魔力の魔法使いは、ほぼ姿を消している。その昔に魔女マイラを悪女としそれ以降に魔法使い達の扱いが悪かったというだけではない。あの戦争から200年経った今も魔力の強い魔法使い達が消えている。出て行った者も勿論いるのだろうが、おそらくはこの国に使い潰されているのだ。それはこの国の『魅了』を持つ王族に術にかけられ、そして何かに利用されていると思われる。私もこのままだとその末路を辿るのだろう」


 ───ッ!


「……ッ! でも、レオンハルト殿下は王族ではありませんか! 勿論普通の魔法使い達が使い潰されてきた、という事もあってはならない事です。ですがまさか息子であり兄である殿下をそのような……!」


 ローズは驚き反論したが、レオンハルトは冷静な様子で答えた。


「……そうでなければ、この状況が説明出来ない。そして魔法使い達が王族に何に利用されてきたのかは分からないが、今までもこの国に強い魔法使いが居なかった訳ではない。200年前の戦争の事で魔法使い達に忌避された我が王国。しかし、お金目当てやこの国でなら国1番の魔法使いとなってそれなりの立場となれる、などの理由から入国する魔法使い達もそれなりにいたのだ。……その者達が、消えていく」


 ローズは、ふと何かが頭をよぎる。魔法使いを必要としているアールスコート王国。医療や戦争の為だけではない。王国は『定期的にそれなりに大きな魔力を必要』としている。

───まさにこの前、フェリシアやミゲルとその話をしていたではないか。


「まさか……。『王国の護り石』……」


 思わず呟いたローズの言葉に、レオンハルトとパウロは反応する。


「何か、知っているのか? 『護り石』……? 我が国の勇者の護り石のことか……?」


 レオンハルトは心当たりのある名前を出す。パウロはそれを諌める。


「……レオンハルト様。それは国家機密です」


「構わないだろう。そもそもが『魅了』なども王家以外で話してはならない内容なのだから。……それで、ローズ嬢はその事を何か知っているのだね?」


 ローズはレオンハルトを見た。彼は静かにじっとローズを見ている。おそらく彼はローズがこのまま誤魔化したとしてもそれを赦すだろう。……だけど、きっとこの事はレオンハルトのこれからの事に関わる事だと思う。


 ローズはレオンハルトに『護り石』のことを話す事にした。





お読みいただき、ありがとうございます!


パウロはレオンハルトとの話で、ローズが『聖女』である事や『魅了』避けのペンダントを作れる事を知って、前回よりも丁寧に接しています。

それと前回の説教のせいでローズが体調を崩したのかと心配していました。

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