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200年前 マイラと図書館 1

200年前のマイラのお話です。


「マイラ殿! 見えてきましたぞ! あれがリンタール帝国の帝都エイセル! 今はあの都には頑丈な護りがあると聞きますが、なに、貴女の魔法があれば恐るるに足りませぬな!」


 ダラス将軍が向こうに見えてきた立派な街を見て言った。

 ……私はほぼ無理矢理連れてこられただけで、攻撃なんてしませんけど。


 マイラは白けた目でダラス将軍を見た。


「私の魔法位でどうにかなる訳がないでしょう? そもそも私はあの都の図書館に行きたいと言っただけなのに……」


 リンタール帝国の帝国図書館は、世界でも最も有名な世界一の蔵書量を誇る場所。世界中の本が集められていると言われている。私は国では見つからなかった魔導書があるのではと思い、いつか行ってみたい! と話していただけなのに……。まさか、戦争に連れてこられるとは。


「図書館など、この街を手に入れたあとにお好きなだけ見られるとよい! さあ、まずは行軍で疲れた身体を癒し、明日からの攻撃に備えますぞ」


 そう言って将軍は帝都を向こうに見渡せる位置に軍を配備するべく、陣営を造る準備を始めた。

 ……では、私は早速行って来ようかしら?


 マイラは帝都の様子を遠視で窺う。……ああ、流石に複雑な魔法で結界を張っているわね。普通の者なら首都の入口のあの大きな門からしかあの街には入れない。そして、魔法使いはあの国の強力な魔法の結界によって転移も出来ない。……普通なら、ね。


 マイラはその強力な結界を傷付けないように隙間を潜り抜け、国の内部に転移する事に成功した。帝国の帝都の街の、誰も居ない路地に着いた。


「───よし。じゃあ早速行きましょうか! 絶対にあの魔導書を見つけて読んでやるんだから!」


 マイラは上機嫌で図書館に向かった。





「……とうとう来たか、憎っくきカルドラ王国め。……どうだ。どの辺りにどんな配置になっている?」


 リンタール帝国の騎士団。『金獅子』と呼ばれる第1騎士団長のラインハルトは、やって来たカルドラ王国の軍隊を門の上から眺めた。


「……愚かな奴等め。このリンタール帝国の鉄壁の護り、この魔法の結界を越えられると思うてか!」


「これだから、愚かな小さき国の田舎者は身の程知らずでかなわんわ! すぐに捻り潰してくれるわ!」


 リンタール帝国将軍や他の騎士団長達も口を揃えてこの国の圧倒的優位性を語る。

 


 ……元々カルドラ王国はそれ程力のある国ではなかった。それが約20年近く前から隣国への侵略戦争を始めた。小さな国が起こした身の程知らずの愚かな戦争。すぐに決着はつくものと思われた。

 しかし予想に反しその戦いはカルドラ王国の勝利となった。そして驚くべき事に、カルドラ王国は更に周囲の国々へも侵略を始めたのだ。


 そして周囲の国々と一進一退の戦いをダラダラと約20年にも渡って続けている。長期に渡る戦争は民も国も疲弊させる。周囲の国々もいい加減にこの戦争を終わらせる為に、手を組み諸悪の根源のカルドラ王国を叩こうとした。しかし、そんな時にいつもその国々の内部で裏切りや揉め事が起こり、周囲の国々は一つになって戦う事が出来なかった。



 ――そして今、とうとうこの大国であるリンタール帝国にも奴らは狙いを定め攻めてきたのだ。リンタール帝国とカルドラ王国は一部隣り合った国とはいえ、その境界には荒ぶる河川や険しい山脈があった。そして元々両国の力の差は歴然としていた。

 それなのに我が国の国境の砦は何故かおとされ、次の都市に行くと見せかけた陽動作戦の間に、いつの間にやらこの帝都のすぐ側にまで別働隊を動かしていたらしい。

 

「はっ。奴らは前方の草原に陣地を敷き……」


 ラインハルトが軍本部で将軍や他の騎士団達と敵国の動きを話し合っていると、この国の魔法副師団長メルケルが慌ててやって来た。


「ラインハルトッ! 少しいいか」


 その慌て振りに、何かあったのだと打合せを抜け話を聞く。……すると。


「……なに? 護りが破られた!?」


「……破られた……というか、おそらく侵入されている。結界を破る事なく、掻い潜るような形で入ったと思われるのだ。……こんな事は初めてだ」


 この帝国で鉄壁を誇る魔法の護り。それをすり抜けられた事に少なからずショックを受けているようだった。

 ラインハルトは少し考える。決して誇張ではなく、我が国の魔法力はこの世界広しといえども抜きん出ている。……しかし。

 今回敵国カルドラ王国の中に、ある噂が流れていたではないか。そう、世界でも有名なあの魔法使いの一族、カルトゥール家の直系の長子がこの戦争に参加すると。勝利は我がものだと大きく宣伝されていたとの情報が入ってきていた。


「我が国の結界を……。まさか、カルトゥールの長子、か……?」


 魔法副師団長メルケルは驚く。


「カルトゥール家の……!? 本当に、この戦争に参加しているのか……? もし、コレがカルトゥール家の長子なら、こちらに勝ち目はあるのか……!? 我らが作り上げたこの最高の結界を、壊す事なくすり抜けるなんて事が出来る者など……!」


 我が国の強力な結界。コレを傷付けずすり抜けるなど、壊す事よりも難しいはずなのだ。……つまり、相手は壊そうと思えば壊せた、ということ。魔法師団長はショックと恐怖から小さく震えていた。


「しかし、今までカルトゥール一族はこの愚かな戦争に一切手を貸してこなかったはずだ。どうして今回参戦したのか」


 レオンハルトの疑問にメルケルは怒り心頭の様子で答える。


「そんなもの、愚かな若い長子が暴走したに決まっている! 本来カルトゥール一族は戦争などに関わらず魔力を伸ばすことに力を入れる誇り高き一族と聞く。……それなのに、最近の若いヤツは!」


 そこに、街の警備をしている兵が報告に来た。ラインハルトとメルケルは早速何か起こったかと気を引き締める。


「騎士団長様に申し上げます! ……ただ今、我が国が誇る帝国図書館に……!」


 ……その報告に、2人は目を見合わせた。





「流石は、世界一の帝国図書館! 凄いわ、圧巻ね〜!」


 そんな風につい感心して口に出してしまいながら、マイラはその壮大で静謐な帝国図書館の、壁一面に並ぶとんでもない程の蔵書量に圧倒されていた。

 紙の匂いのする空気を吸い込みながらその通路を気分良くゆっくりと歩く。……あぁ、ずっとここにいたい。何もかも忘れてずっと本達に囲まれていたい。


 マイラはそんな風に暫くは現実逃避していたが、時間は限られているのだ。そして目的のところへ行こうと探し出した。





「……本当に、ここに来ているのか?」


 ラインハルトは少し信じ難い気持ちで問いかけた。

 彼らはこの国が誇る帝国図書館に来ていた。


「……はい。この図書館の受付で、『マイラ カルトゥール』と記入して入館した人物がおります。受付の者は冗談かと思ったそうですが……」


「……本当だな。まさかこんなところで本名を書いて入るか? こんな時でなければただの悪い冗談だろう」


 ラインハルト達だとて、敵国がそこまで来ていて敵が侵入したと前情報があったからこそ、ここに確認に来てそれが本当なのかもしれない、と思えるのだ。……他にそれらしい情報が無かったからともいえるが。


「普通は偽名を書くでしょう。本当にただの悪い冗談かもしれないが……。とにかく、入って確認してみよう。……中では何も騒ぎは起こってはいないのだな?」


 メルケルはそう図書館の者に確認する。


「……はい。入口近くの一般の利用者は既に別の所に避難させております。この非常時ですので元々利用者も少なかったのですが」


 ラインハルトとメルケルは頷き合い、図書館の中に入っていった――。





お読みいただき、ありがとうございます!


 戦争に駆り出されたマイラですが、本人は全くやる気はないようです……。

 それよりも世界中の本が集まると言われている帝国図書館に来れてワクワクしています。


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