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41 秘密の共有



「……ふう。コレで大丈夫ね! ………あ」


 リアムの事はとりあえず無事解決した。安心したローズが横を見ると、そこには微笑むレオンハルトがいた。


「良かった。貴女の弟が何とも無くて。……そしてローズ嬢。素晴らしい力だったよ」


「う……うふふ?」


 ……しまった。


 リアムの方に夢中になっていて、レオンハルト殿下の事がすっかり頭から抜けていた。

 そして彼も邪魔をしないどころかまるで守ってくれているようだったから、ついすんなり魔法を使ってしまっていたわ……!


「ローズ嬢。貴女のその素晴らしい力について私は一切口外するつもりはない。魔法の事を詳しく教えてもらえれば嬉しいが。

そして……。先程の2人の内の1人は……貴女も知っているのかもしれないが、私の弟オスカーだ。もう1人は貴女の弟君だね?」


 ……コクリ。

 ヒヤヒヤしながらも頷く。

 ……コレは、『不敬罪』といわれるやつではないでしょうか……!


「……そうです。けれどリアムは……弟は何もしておりません!」


「……分かっている。我が弟オスカーが貴女の弟に失礼な事をして、本当に済まなかった」


 そう言って頭を下げるレオンハルトに、ローズは目をぱちくりさせる。


「えっ……!? 殿下、頭をお上げください!」


 ローズが慌ててそう言うと、レオンハルトはゆっくりと顔を上げた。そして辛そうな顔で問う。


「ローズ嬢。先程の映像は今起こった真実……なのだね。アレが……、先程見せたあのオスカーの顔……。アレが彼の本質、本当の姿、という事なのか……」


 レオンハルトのその言葉にローズは少し胸が苦しくなった。


「私はオスカー王子に実際にお会いした事がないので何とも言えません。……アレが彼の本当の姿かどうかは分かりませんが、彼の一面である事は確かだと思います」


 レオンハルトはローズのその言葉に頷き、そして目を閉じ一つ深く息を吐いた。


「……済まない。兄の監督不行き届きだな。あんな弟は初めて見た。……そして、確かに今まで彼は今回のような『暴力事件』に合うことがよくあると聞いたことがある。……こういう、ことだったのだろうな」


「……それに関しては、他の件は分からないですが……」


 弟の醜態を見て気落ちするレオンハルトに何と声をかけたものか、ローズは少し悩んで思わず言った。


「……あの、先程の最初に出てきた女生徒は私が作った『幻』、なのです。そして次に声を挙げたのもまた違う『幻』なのですわ。……コレは、遠く東の国から伝わって来たという幻術に似たものでして……。書物で見て、実現してみたくて研究に研究を重ねた傑作なのです! いかがでしたか?」


 つい、彼の気落ちした気持ちをそらすために、魔法に興味があるのであろうレオンハルトに先程の魔法の説明をしてみる。……少し感想を聞きたかったのもあったのだが。

 少し前に古本屋のおじさんが新作が入ったと勧めてくれた東の国の本。おじさんは最近あまり来なくなったローズが興味を持ちそうな本が入荷すると教えてくれるのだ。……コレを魔女マイラの亡霊の時に使えていたら……! と後々悔やんだ。


「……素晴らしかったよ。……あのタイミングで出てきた事も良かったし、あの一つ目の声もそうだったのか。あれで完全に形勢逆転したね。……そうか、東の国の幻術……。貴女はそうやって新しい魔法を生み出しているのかい?」


 レオンハルトの気持ちが魔法の方に向いたようなので、ローズはホッとしながら更に続けた。


「はい! 魔法というのは限りないものですもの。考え方一つやり方一つでいろんな事が可能になってくるのですわ! だから私はたくさん色んな書物を読んで研究し続けているのです」


 ローズにとって、今世で魔法談義の出来る人は初めてだった。……ローズが『聖女』であり魔法使いという事を公表していないから、というせいでもあるのだが。

 それでもこの国で1番の魔法使いであるレオンハルトとは話が合いそうだった。……それはこの部屋の魔法関係の蔵書の多さからもよく分かる。彼も相当日々魔法を研究しているのだろう。


「それは凄いな。私も貴女の読んだ本をぜひ読んでみたいものだ」


「……では、ここの本をお返しする時にいくつか見繕って持ってきますわ! ……ああそれと……」


 ローズは制服の中で掛けていたペンダントを取り外す為に、手を自分の首の後ろに回す。……レオンハルトはいきなり制服に手を入れたローズに少しギョッとした。

 シャリ……。


 そこに出てきたのは飾り気のない魔石のペンダント。……しかし、その魔石の魔力にレオンハルトは驚く。

 思わずローズを見ると、2人はまっすぐに見つめ合う形となった。


「……あのこれ……。『魅了』避けの、ペンダントなんです。良かったら……あ。もしかして、殿下も『魅了』を使えるのですか? はっ! 私、もしかして今、『魅了』されてしまいました!?」


 急にレオンハルトに好感を持って色々話してしまったり、ペンダントまで渡そうとした自分に驚いてローズは慌てた。

 レオンハルトはそんなローズの、ペンダントを持つ手を握る。


「『魅了』などしていない。……私にはその能力がないのだ。貴女は『魅了』の事を……知っているのだね。そしてコレに『魅了』避けの力が……?」


「う……、本当ですか? でもアールスコート王国の王家の方にはその能力が現れるって……」


「……それは、皆が皆、ではないようだ。どうやら弟のオスカーは持っているようだがね……。……私はどうやらこの王家では『出来損ないの王子』のようだ」


 そう言ってレオンハルトは少し辛そうに視線を逸らした。


「殿下? ……申し訳ないのですが、そんな能力は無い方が良いのです! 人を操るなんて、いい結果につながる訳がありません。人を傷付けその実、自分の価値をも下げてしまう力ですわ。殿下になくて良かったのです。それに、力がある無しでその人の価値は決まりません。価値とはその人の『人となり』だと思います」


 ローズは真っ直ぐにレオンハルトを見て言った。

 言葉の途中からローズを見たレオンハルトは、彼女としっかりと見つめ合った。ローズの目は真剣そのものだった。


「……そんな風に……、言ってもらえたのは初めてだよ。……そうか。人の価値は力のある無しではなくその人次第、という事か……」


「……そうですわ。例え特殊な能力を持っていても、それをどう使うか、ではないでしょうか。……私も多少は魔法を使えますが……、私が思う限りの悪い事には使っていないつもりです……多分」


 最後は少し自信がないところもあるけれど、自分に恥じるような事はしていない! ……ハズ。


「……ありがとう、ローズ嬢。それで……そのペンダントは、私がもらって良いのかな?」


 レオンハルトがやっと少し笑ってくれたので、ローズも少し嬉しくなった。


「はい。どうぞ……。……でも流石に殿下は『魅了』される、なんて事はないですよね。でもこの『御守り』は多少の魔法の攻撃も跳ね返しますので、良かったらお持ちください」


 魔法も跳ね返す!? とんでもない事を聞いた気がするレオンハルトは、驚きながらもそれを受け取る。

 ローズはレオンハルトには『魅了』避けは必要ないだろうと言ったが……。おそらくは、この後自分が最も必要とするものだろうとレオンハルトは思った。そしてこのペンダントが放つ魔力から、ローズのいう効果は本物だと確信する。


「こんな貴重なものを……。ありがとう、ローズ嬢」


「大丈夫です! 弟にも父にも渡していますし! そして先程第3王子の力を跳ね返したのもこの『御守り』なのです。だから効果は保証しますわ! それに今、大司教様にも是非にと言われて絶賛大量生産中なのです!」


「大量生産……!?」


 ちょっと待て。今、ローズ嬢はなんと言ったのだ? 先程自分の前で魔法を使ってしまった事で、解禁とばかりに秘密をバラし過ぎではないのか? 勿論自分は彼女の秘密を周りにバラすつもりは全く無いが、かなり心配になるレベルだぞ? 大司教との繋がりもさらっと話してしまっているし……。それとも、彼女は自分が扱う魔法の凄さを分かっていないのだろうか……?


「はい! 良ければレオンハルト殿下にも幾つかお持ちしましょうか?」


 願ってもない申し出に、レオンハルトは一も二もなく頷いた。


 そうこうしていると、扉が何度もノックされているのに気が付いた。

 魔法を解き扉を開けると、そこには青筋を立てたパウロが立っていた。


「…………殿下。すっかり冷めたお茶を……、お待ちしましたよ?」


 そして浮かべたパウロの笑顔に2人は戦慄し、平謝りしたのだった。


 そのあとはパウロから、『男女が部屋に2人きりで扉を締め切っているなどという事は……』と、延々と説教をされたのだった。






 ――ローズはダルトン子爵邸に帰ると、玄関に荷物を置きそのまま『地下室』に転移した。そして部屋の奥の引き出しから大ぶりのペンダントを取り出す。

 ローズはそのペンダントを握りしめ頬に当てた。


「ラインハルト、様……」



 ローズは今日レオンハルトの研究室であの『魔導書』を見た時、前世マイラのあの帝国図書館での事を思い出した。そして……あの時の、あの気持ちも。


 前世マイラは友人だったラインハルトを亡くしたその後は、ただひたすら必死に戦争終結の為にと動いた。そして戦争も終盤という頃、カルトゥール家のピンチと聞き旧カルドラ国に戻り……そして人々の裏切りにあい、力も心もボロボロの状態でこの地下室に来た。


 ───そうあの時。本当はこの地下室に結界を張って時を待つか転移をしてしまえばマイラは助かる事は出来たのだ。

 いやそもそも弟と一緒に連合国に転移すれば良かった。


 ……けれど。自らのすべき事をして戦争ももう終結すると分かっていたあの時。ポキンと何かが壊れていたのだ。マイラの心を支えてきた何か。そしてマイラはこのラインハルトの大切なペンダントをここにしまい、封印をして敢えて外に出た。


 ラインハルトが死んだと聞いてから、ずっと見ないようにしていた『何か』。弟をダルトン子爵家に預け、この地下室に戻った時に……彼への気持ちが溢れその『想い』にハッキリと気付いた。そしてもう自分のすべき事は終わったのだ、やっと彼に顔向けできると……そう思った。


 ローズは、はぁーっと大きく息を吐いた。


 ……私は、ラインハルト様のことが……好き、だったのだわ。



 ――そのあと、マイラの気持ちを悟ったローズは悲しくて泣いた。ラインハルトが亡くなった時マイラはまだ気持ちにきちんと気付いておらず……それとも、気付かないフリをしていたのか、泣く事が出来なかったのだ。……彼が亡くなってからは無我夢中の人生だったから。



 ……その日、アールスコート王国では一晩中雨が降っていた。




お読みいただき、ありがとうございます!


 パウロは魔法で閉められた扉の前で、2人の事をとても心配していました。

①レオンハルトがローズに酷い事を…!?

②ローズが聖女の力でレオンハルトに酷い事を!?

…という不測の事態が起こっているのではないかと考え過ぎて、胃が痛くなっていました。


そしてローズは、過去のマイラの想いを思い出してしまいました。



 少し忙しくなってきましたので、明日は1日お休みさせていただきます。

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