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35 友人達 2



「マイラ……ッ!」


 ミゲルが立ち上がり、驚愕した表情で金の髪と瞳のローズを凝視した。


「えっ……? ……なに? まさか……。まさか、ローズなの……?」


 呆然としながら呟くようにフェリシアは言った。


「ええ。ローズよ。……コレが、ダルトン子爵家人間の本来の姿なの。ダルトン子爵家は、200年前に魔女マイラによって逃された彼女の弟の一族なの」


「マイラの……、弟!? 確かマイラは弟を助けに行くと言ってカルドラ王国に戻って……。そうか、弟を助ける事が出来たんだな……。マイラが死んでから弟の話は何も出なかったから、一緒に死んでしまったのかと……」


「……マイラは国に戻って偶々助けたダルトン子爵家に弟を託したの。子爵はちょうど同じくらいの子供を亡くされていて……。マイラの弟を息子として育ててくれることになって、マイラは弟とバレないように『封印』を施した……そうなの。その『封印』を半年前に解くことが出来たので力を取り戻したのよ」


「マイラの弟……。という事は、真のカルトゥール家の直系ということなのね……。我がリンタール帝国では魔法使いの歴史を学ぶ時、必ずカルトゥール一族の名は出てくるわ。直系にのみその力を伝える偉大な魔法使いの一族。……だから、この世界から姿を消してしまっていたのね……」


「……ずっと、力は封印されていたから。まだ父も弟もこの力を扱う事に必死に慣れようとしているところよ……」


 ミゲルはそんなローズの言葉を聞いて、探るように見ながら言った。


「……ローズは、その力を十分に扱えている気がするけどね。半年前に魔力が戻っても魔法を扱える事とはまた別だよね? 現にローズのお父上と弟君は魔力の扱いに苦労しているんだよね?」


「偶然だけれど、この封印は私が解いたのよ。その時にあらましの情報が私に入ってきたのよ。それで……」


 ミゲルはまだ何か言いたそうだったけれど、そこにフェリシアの待てが入った。


「ミゲル。今日の私たちの話は、『自分の話せる秘密を話す』でしょう? ローズが今は言いたくない事まで問い詰めるのはルール違反よ。……というか、私は今ここまでの情報だけで手一杯なのだけれど……!」


 そう言いながらフェリシアは頭を抱え、ミゲルはとりあえず聞く事を諦めてくれたようだ。


「……ありがとう、2人とも。……私の望みは、家族と平和に生きていくこと。だから本当は王子達と関わるつもりはなかったの。だけど、その『魅了』の力は私も気になるわ。今のところ弟には何もおかしな術はかけられてはいないと思うのだけれど……」


 ミゲルは少し難しそうな顔をしながら言った。


「気付かぬうちにかけられている、というのが『魅了』だからね。少し様子を見ていった方がいいかもしれない……。けれど、ローズの弟もこの『御守り』を持っているのだよね?」


 ローズは頷く。


「ええ。昨日の朝渡したからずっと付けているはずよ」


「ならば、大丈夫ではないかな。僕は昨日からこの『御守り』を見ているけれど、コレには相当な力がある。もしもローズの弟が術にかけられているのならコレを持った瞬間に何か反応があったんじゃないかと思う」


 ミゲルのその話を聞いて、ホッと安心するローズ。


「……だけど本当に……、『魅了』が今またこの世界に……? やはりアールスコート王国の王家の人間にこの能力者が現れる、と言われているのは本当の事だったのね……。ねえ、ローズ。この事だけは国に報告させてもらっていいかしら。勿論、『『聖女』のことはまだ調査中』、と伝えるわ」


 フェリシアの言葉にローズは頷く。ローズとしては『聖女』の事さえ知られなければそれでいい。『魅了』は各国にとってそれだけ脅威なのだろう。


「第3王子が『魅了』の能力を持っている、というのはあくまでも僕の憶測だけれどね。……ただ相当怪しい、とは思うよ」


「それでもいいわ。それに警戒してし過ぎる事はないと思うの。……200年前もそうして『まさか』という思いから被害が広がったと聞くから」


 2人が話をするのを聞いて、ローズは少し疑問に思う。


「この国に200年前から『魅了』が疑われていたのなら、どうして戦後に他の国はこの国を調べなかったのかしら。国名を変えたとはいえ、王家のメンバーも同じで体制も何もかも殆ど変わってはいなかったのでしょう? この国は敗戦国として他の国の調査を受けるべきではなかったのかしら?」


「……それも、『魅了』故、だよ。戦後、この国には他の国から戦後の賠償問題や責任を問う為に何人もの使者が入ったと聞いている。……が、その使者も『魅了』にかけられて帰るという有り様だった。なら『スパイ』を入れようとしても、新たに入る人間には執拗な審査がありおかしいと思われれば囚われまた何人もが『魅了』された。そしてこの国の国民にも随分と拒絶されたそうだしね。そんな事の繰り返しだった為に周辺国はこの国に対する賠償や取調べを諦めた。その代わりに世界中の国々は永遠にアールスコート王国とは関わらない、と決められたんだ」


「戦後の補償を、何もしていないの……!? まさかそんな……。()()だけの被害があったというのに?」


 ローズは思わず呟いた。その言葉の意味に気付き目を見開いたミゲルだったが、今は時期尚早かとその言葉を呑み込んだ。


「だからこそ、この国はどの国とも国交がないのよ。我が帝国は一部の貿易のみ許可はしているけれど……。

だけどこの国には唯一良い所がある。……それは強い魔物が出ないこと。だからこそアールスコート王国の国民は自国の王家を信頼して他国を拒絶したのでしょうね。その代わりに魔法使いが極端に少なく医療が遅れ、魔物が居ない分取れるはずの魔石などの資源もない。それに伴って良い薬草も採れない。そして冒険者ギルドもないし国交もないから人も新しい物もそうは入ってこなくて観光資源的なものもない。職業としての冒険者もないから腕っぷしの強い人には職業が狭められてしまうわね。この国は鎖国しているようなものよ」


「そうだよね。この国だけが200年前から時が止まったように何も変わっていない。貿易も最低限しかしてないようだし、人の行き来もそれ程ない。この国の人間は他国には強い魔物がいて恐ろしいと思って行かないし、他国の者はこの国に来たら『魅了』にかけられるかもしれないし、交流や情報が無さ過ぎて怖くて来れないんだよ」


 2人がこの国の特殊性を語る。ローズはその話に聞き入った。


「そして私は最初にクラスで帝国の貿易の事を偉そうに言ったけれど、あれはほぼ真実よ。我が国の貿易無しではこの国は成り立たない。まあ追い詰められてまたおかしな行動に走られても困るから帝国も最低限の貿易をしている、という一面もあるのだけれど」


「そうだったのね……。そして魔物がいないという事は良いことばかりではない、という事なのね」


「そうだね。そしてアールスコート王国の魔物がいない状況はある意味不自然なんだよね。どういう原理で強い魔物が入って来られないのか……。その辺りも調べたいんだけど、流石にそれは国家機密なのか探れなくて……」


 魔物が入って来れない秘密……。やっぱり、モトはあれよねぇ。あの時マイラが作ったアレ……。


 ローズは何とも気まずい思いをしていた。








お読みいただき、ありがとうございます。


ハーフエルフで長い間生きてきたミゲルはある程度の予想は出来ていたようですが、フェリシアは知らないことやまさかの連発で、かなりいっぱいいっぱいのようです。


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