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34 友人達 1



「……やはり、そうだったのね。貴女の気配や雰囲気はとても特殊だったもの」


 フェリシアは納得してそう言った。


「そうだね。僕も君の魔力の質は特殊だと思っていた。そして僕の昔の知人に、……すごくよく似ている。だからこそ、僕はここに確かめに来たのだから」


 昔の……知人。それは、やはり魔女マイラに、ということだろう。……けれど、ローズがマイラの生まれ変わりだということは、まだ家族以外に話すことははばかられた。


「……そう……。もしかして、私が『聖女』だということは他の方にもバレてしまっているのかしら?」


 ローズは心配になって聞いてみた。


「それはないと思うわ。私達が気付いたのはおそらく私達の魔力がそれなりに大きいから。この国には魔力の多い人は少ないから気付いてはいないはずよ。殿下が……レオンハルト殿下が貴女を見ていたのも、魔力の多さ、という事からだと思うわ」


 フェリシアの言葉にローズはほっとする。


「他の人にバレていないならいいけれど……。ねぇフェリシア、一昨日の帰りにレオンハルト殿下が私の事を手招きした話をしたでしょう? どうもそれをテオドール殿下の側近の方に見られていたらしいの。だから昨日の朝、殿下に編入生が全員呼び出されたみたいで……。そこから、昨日の帰りにテオドール殿下に私1人が呼び出されて、という事になったのだけれど……」


「……そういう事だったのか。すまない、ローズ。僕が君にずっとついていれば……」


「ミゲルのせいじゃないわよ。それにテオドール殿下は私にどうしても聞きたい事があったようだから、いずれは呼び出されていたのだと思うわ」


 そこでフェリシアは不審に思って言った。


「……どうしても聞きたいこと? いったいテオドール殿下はローズに何を聞きたかったの?」


「それは……。昨日、3人でテオドール殿下はエイマーズ公爵令嬢の事がお好きかもという話をしていたでしょう? 

テオドール殿下は、レオンハルト殿下が私に関心を持っている事から私が『聖女』かそれとも……『レオンハルト殿下の想い人』なのか、と確認されたかったようなの。どちらかと言うと、お兄様の想い人であって欲しい、そしてエイマーズ公爵令嬢は自分が、というお気持ちだったようだわ」


 2人はその話を聞いて暫く黙り込んだ。


「……何というか……。殿下はある意味純情というか、真っ直ぐ過ぎるというか……。恋のなせる技というのは恐ろしいな」


 復活したミゲルがため息混じりに言った。


「それだけテオドール殿下はエイマーズ公爵令嬢の事がお好きなのね……。この国で重要な『聖女』のことよりもそちらを優先させるなんて。……それで? レオンハルト殿下は何とお答えになったの?」


 フェリシアも呆れ気味ながらも恋する気持ちには一定の理解を示しつつ、……この件の核心を突いてきた。

 ローズはなんとも居心地の悪い思いをしながらも、答えない訳にはいかず昨日のそのままを伝える。


「『聖女』か『想い人』かという問いにレオンハルト殿下は……、私に関心がおありだ、と。……ずっと、気になっていた、とそう言われたの」


「「ッ!」」


 2人は驚き目を見開いた。


 そうして、ローズは昨日レオンハルトとした『友人』となる経緯を2人にしたのだった。


「……初めはレオンハルト殿下は、どちらかというとテオドール殿下に私が『聖女』だと思わせない為にそう言ってくださった様子もあったのだけれど……。でも最後に2人きりになった時には私に『聖女』か『王子の友人』か、周りに騒がれるならどちらがいいのかを選ぶようにと言われたの。……まさかの2択だったの! でも貧乏子爵の娘が『王子の友人』というのもおかしいと言ったら、それなら『恋人』でもいいよ、なんて言われたものだから……。とりあえず『王子の友人』で、ということになってしまったの」


 フェリシアとミゲルは頭を抱えた。


 ……一国の王太子が! ここまで言うなんて普通はあり得ない。そして果たして『聖女』を取り込みたいだけの思いでここまで言うものだろうか? ……とするならば、やはりそのレオンハルト殿下はローズの事を普通以上には『関心がある』という事なのだろう。

 

「レオンハルト殿下は、ローズを『聖女』だと分かっているけれど、とりあえずバラすつもりはない、という事なのね。そのかわりに『友人』となって貴女とお近づきになりたいと……。……ローズは殿下の事をどう思っているの?」


 フェリシアとしてはローズをアールスコート王国側に渡すつもりはないのだが、1人の人間としてのレオンハルトの想いを見た気がして、ついローズに聞いてしまう。


「……私? 殿下のことをどう思うか? ……うーん、好意を持ってもらってイヤな気はしないけれど……。でもそれは結局は『聖女』だからって事だものね。だけど今のところは私の学生生活を壊そうとはされてはいないし……。嫌いではない、て感じかしら?」


 その答えに少し安心する2人。


「じゃあ、殿下達の事は僕達のどちらかがずっとローズの側に付いている事で、とりあえずは解決出来そうだね。ローズは他に気になる事はある?」


「……実は中等部に入学した弟のクラスに、第3王子がいらっしゃるの。そして弟と友人になっているらしくて……。コレは一応家族で話し合って、弟も距離をおくようにする、という事にはなったのだけれど……、やはりそこは心配してるわ」


 ミゲルはそれを聞いて何故か失笑する。


「は……、なんだか随分と分かりやすく近付いて来たんだね。第3王子、か……。僕は今王家の兄弟の事を調べてるんだけど、僕的に1番謎なのは第3王子オスカー殿下だね。……何故なら、彼には彼だけに盲目的に仕える者達がいるんだ。……そうまるで、『魅了』でもされているかのように……ね」


 ミゲルのその言葉に、フェリシアとローズはばっと顔をあげミゲルのその表情を見る。


「『魅了』、ですって……? 第3王子が……。それは本当なの、ミゲル!」


 いつものフェリシアからは想像もつかない程に動揺した様子でミゲルに問うた。

 ……そして、ローズも大いに動揺していた。『魅了』の事は2日前に大司教様から話を聞いたばかりだが、前世マイラの時におそらくそれにかけられていたであろう大切な人達を見てきたからだ。


「僕は、そう思っている。リンタール帝国の公爵令嬢であるフェリシアは、当然『魅了』の事を詳しく知っているんだね? ……そして、ローズもあの『御守り』をくれたんだ。何かを知っているという事だね?」


 ミゲルはそう言ってローズの答えを待つようにじっと見つめた。ローズは頷く。


「私はつい2日前にだけれど……。大司教様からそのお話をお聞きしたの。そして教会の『護り石』を見せていただいて……。それで私達にもこれから必要になるかもしれないと思ったから幾つか作ってみただけで、多分2人程も詳しくは無いと思うわ」


「……ちょっと待って、ローズ。2日前にアレを見て、すぐにあの護り石を作り翌日には私達にもくれたというの? 教会の護り石は私も伯父からいただいて持っているわ。けれどアレを見ただけですぐに量産出来るなんて……。しかも貴女からもらった『御守り』は教会の物よりも遥かに優れた強い物だったわよ!?」


「それはやはり、ちゃんとした完成品を見たからこそすぐに出来ただけよ。私も一から作るとなったらもう少し時間はかかったはずだわ」


「……ローズ。あれはそんな問題じゃないからね。そもそもあの『護り石』を見ただけでアレの仕組みを理解して更にいいものをすぐに、しかもたくさん作れるだなんてあり得ないから!」


「フェリシア、落ち着いて。……ねぇ、ローズ。君が『聖女』だという事は分かった。けれど世の中の聖女はこんな事は出来ない。……イヤ、君の力はおそらくハーフエルフである僕よりも上だ。この国で、しかもここ半年ほどで急にこの世界に君は力を現した。どうして? ……この国は10歳の時に国民全員が魔力検査をするんだよね?」


「……ええ。私は10歳の時は生活魔法に毛が生えた程度の魔力しかなかったわ。ダルトン子爵家の人間は皆、そんなものだった。……約半年前に、封印を解くまでは」


「「封印……!?」」


 2人はまるで合わせたかのように同じ言葉を発した。

 ローズは、シェリーの時のように自分の姿替えの魔法を解く。


 2人の前には、美しいブロンドに金の瞳の少女が座っていたのだった。




お読みいただき、ありがとうございます!


ローズの周りに王子が3人関わってきている事に驚くミゲルとフェリシア。


そしてローズはマイラの時から複雑な魔法を扱うのが得意でした。今も魔石の加工などは得意です。

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