表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/117

22 最初が肝心



「な! 何ですって!! 私が迷惑してるのよ! たかが貧乏子爵家の娘のクセに、私の前をウロチョロと!」 


「そうよ! 生意気なのよ!」


 興奮するヴェンテ伯爵令嬢とその友人。


「私は貴女と初対面ですし、周りをウロチョロしたことなどないと思うのだけれど……」


 ローズがそう言うも、その間に入り冷静に言葉を発するフェリシア。


「……貴女方、このクラスの方ではありませんわよね? ウロチョロされてるのはそちらではありませんこと?」


 その言葉にヴェンテ伯爵令嬢は怒りで顔を赤くした。


「……何よ! ちょっとSクラスにいるからって、いい気にならないでよね! 何なのよ、貴女!!」


 ヴェンテ伯爵令嬢がフェリシアに掴みかからんばかりに近寄って来ようとしたので、ローズはその一歩前に出ようとした。……その時。


「おやめなさい!」


 第三者の声が聞こえたのでそちらを見ると、元々のこの学園の生徒でリーダー的存在の女生徒だった。確か、この国の……。


「エイマーズ公爵令嬢……! 」


 ヴェンテ伯爵令嬢が上擦った声出してその友人達と一歩あとずさる。そして公爵令嬢に対して一礼した。

 エイマーズ公爵令嬢は冷めた目でそれを見ながら言った。


「……確かに迷惑をかけているのは、ヴェンテ伯爵令嬢、貴女ですわね。そして、相手が誰かも考えず喧嘩を売るとは、身の程知らずでもありますのね」


「なっ……! ……いいえ、私はそこの生意気な貧乏子爵の娘とその仲間に言っているだけなのです!」


 ヴェンテ伯爵令嬢は必死に言い募ったけれど、エイマーズ公爵令嬢は更に冷たい視線を向けた。


「……本当に、物の分からない方ね。貴女が今掴み掛かろうとした方は隣国の公爵令嬢ですわよ。貴女、まさか彼の国に戦争でもしかけるおつもりなのかしら?」


 途端にヴェンテ伯爵令嬢はサッと顔色を青くした。


「まあ。私と争いをしたとて、戦争など仕掛けるつもりはございませんわよ?」


 フェリシアが笑顔で言うので、少しホッとした表情を見せたヴェンテ伯爵令嬢だったが――。


「貿易の取引を止めたり、国交――は元々ないので通商条約ですわね。それらを取りやめたりするくらいで、戦争なんて馬鹿げた事はいたしませんわ」


 笑顔を浮かべてそう言ったフェリシアに、ヴェンテ伯爵令嬢だけでなくクラスのほぼ全員が凍りついた。流石にSクラスに入る程の貴族の子弟達、この王国の状況――フェリシアの国がこの国の数少ない貿易国であること――を多少なりとも知っているのだ。


 ローズは、フェリシアは笑顔だけれど目が笑っていないわね……、と若干引き気味に見ていた。


「この国は海がない為に塩を輸入せねばならないのでしょうが、その役割を我が国が他の国と国交のない貴国の為にさせていただいておりましたけれど……。勿論それも止めるという事ですわね」


「……お許しください。この者達がこの教室に入って来た時点で止め諌めるべきでございました。

非礼を心よりお詫びいたします」


 笑顔だけれど、フェリシアの怒りは相当強いと察したエイマーズ公爵令嬢はすぐに白旗をあげた。

 そして周りの貴族の子弟達も合わせてこちらに頭を下げた。

 フェリシアはこのアールスコート王国できちんとした学生生活を送る為には、最初が肝心だと思っていた。甘い処置をすれば今後も甘く見られてしまう。


 ローズはフェリシアと一緒にいる為、周りの貴族達に頭を下げられる側にいる事に少し居心地の悪い思いだった。ミゲルは? と思って彼を見ると、彼は当然といった風に周囲を冷たく見ていた。

 ヴェンテ伯爵令嬢に対しては勿論ローズも良い気持ちではなかったけれど、こうクラス中の生徒達に頭を下げられる側にいるのは居心地が悪い。まあ彼らはフェリシアに対して礼を尽くしているだけなのだろうが。


「ローズ……さんにも、気分の悪い思いをさせてしまい申し訳ありません。これからは私達が決して不届者を近づけさせませんのでご安心ください」


 不届者扱いされたヴェンテ伯爵令嬢とその友人達は、一瞬怒りの表情でパッと顔をあげたが、氷よりも冷たいエイマーズ公爵令嬢に一睨みされまた顔色を青くして再び頭を下げた。

 そしてその後すぐにやってきた先生方に、騒ぎを起こしたとして彼らは連れて行かれたのだった。


「私達在校生は、あなた方編入生を歓迎しております。特にこのSクラスに入ったあなた方は勉学でも優秀な成績を収められているのですから。

学年毎に成績順でクラスは入れ替わりますが、大抵のSクラスの方々はそのままですわ。これからの3年間、良い関係を築いていけたらと思っております」


 エイマーズ公爵令嬢はそう言って歓迎の意志を表し、他のSクラスの生徒達もそれに倣った。


 ……皆の本音は分からないけれどね。

 つまりは留学生であるフェリシアとミゲル、『聖女』かもしれないローズを、王国としてこの国の貴族として無碍むげには出来ないといったところなのだろう。分かりやす過ぎる出来事だったけれど、数少ない貿易の相手国の有力貴族としてフェリシアからあれだけ圧力をかけられればやむなし、といった所なのかしらね。


 ――残る編入生の女生徒8人はこの国の人間のようだわ。そしておそらく私は本命視されてないということなのよね? 私が本当に聖女だと思われているのなら、さっきのヴェンテ伯爵令嬢のような事はないはずだもの。


 という事はあとはフェリシアの影で大人しくしていれば、まあそこそこ安定した学生生活は送れそうね……。と安心して息を吐くローズなのだった。







お読みいただき、ありがとうございます!


エイマーズ公爵令嬢は将来のアールスコート王国王妃候補と呼ばれて育てられました。意識高めの女子です。

対するフェリシアは隣国の公爵令嬢。ローズの為にもこれからの学園生活で自分の立場を万全にする為にも、絶対に引くつもりはなかったようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ