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19 学園生活の始まり



「ねえ、リアム。どう? おかしくない?」


 真新しい学園の制服、チェックの膝丈のスカートにブレザーのジャケット、胸元にはリボンを付けた白いシャツ。

 ローズはクルリと回って弟リアムに見せる。そのリアムも真新しい制服のブレザーとスラックス。


 ローズが高位の魔法を発動させてから約3ヶ月。いよいよ今日からリアムは王立学園中等部に入学、ローズは高等部に編入となるのだ。


「お姉様ったら……。さっきから何度も言ってるよ、素敵だよって。ねえ、お父様」


 余りに何度もローズが聞くので、少し困ったようにリアムは言った。……その横で父ダルトン子爵は、感動で泣いていた。


「うぅ……。本当に……本当に、美しいよ、ローズ……。父が不甲斐ないせいでお前を学園にやれず本当に済まなく思っていた……。本当に、良かった……!」


 そして、号泣してしまった。


 ローズとリアムは困ったように2人で目を見合わせた。

 

「……お父様。私は何も不満になんて思ってないです。そしてこうしてリアムと一緒に学園に通える事にもなりましたし。

ただ……学園で今年の編入生の中にいると思われる『聖女』探しをしているかもしれないのが、少し憂鬱なくらいで……」


 王国では『聖女が学園へ入学するらしい』とまことしやかに噂されている。

 王国内は未だ姿を見せた事のない『聖女』が王立学園で見られるかもと、結構な騒ぎとなった。おそらく学園内でも相当騒がれたと思われる。そして、その影響か入学希望者は増え、外国からの留学生も増えた。編入生は普通なら十数人だそうだが今年は20人になるらしく、編入試験で結構な人数が落とされたようだった。


 ローズはマイラの記憶があるので試験は余裕だったが、もし記憶が無く試験に落ちていたらどうなってしまったんだろう……、と少し心配になってしまった。一応現代の試験がどんなものかと、シェリーに少しは勉強を教えてもらったりしていたのだけれど……。

 もしかして教会から手を回してくれていたりしたの? と聞いたら、

「ローズなら全く問題ないと思ったから、お父様にも何もしなくて大丈夫と伝えておいたわ」

と返された。


 とにかく『聖女』がいるかもしれないとの噂が出たことで、今年の編入生は特に注目される事になる。単純に学生生活を楽しむ、という事が出来るのだろうか? まあ少し時間が経てば普通になるのかしらね……。


「うむ。確かにそれも心配なのだ……」


 ダルトン子爵はそう言ったが、


「お姉様なら大丈夫だよ。それに僕も隣の学舎とはいえ近くにいるからね! 何か少しでもおかしな事があったら呼んでね!」


 リアムが自信ありげにそう言った。

 ダルトン子爵家の家族は簡単なモールス信号のような、シンプルな感情をお互いに送り合えるようになっていた。助けて! などの感情ならすぐにお互いに分かる。


「ふふ。ありがとう、リアム。頼りにしてるわよ」


 学園入学の為の勉強と家の手伝い、そして魔法の勉強もかなり頑張っていたリアム。彼は基礎的なものならある程度の魔法を使えるようになっていた。もう少し魔力を上げようかと思ったが、これから学園生活が始まり色々不測の事態が起こる可能性もある。子爵もだが、魔力を上げるのはもう少し様子見だ。


「では、行きましょう。お姉様」


 少し背が伸びたリアムがローズをエスコートする様に馬車まで手を引いてくれる。入学式だから今日だけは馬車で行くことにした。勿論、レンタルだけれども奮発したのだ。学園に2人同時に入学で色々たくさんお金もかかったけれど、なんせポーションで大分稼がせていただきましたからね!

 あ、当然明日からは歩きで登校予定です。普通に歩いて30分かからない距離なので全く問題ないのです。いくらポーションで稼いでいるとはいっても、贅沢出来るほどではありません。これから学園でおそらくまだまだお金はかかりますから……。


 そしてこの日の為に一張羅を奮発したお父様と3人で、馬車で王立学園に向かった。





「今日からここに通うのね……」


 少し前までは完全に通う事を諦めていた王立学園。馬車から降りた私達親子3人はその豪華な門の前に降り立った。

 3人で感慨深げに学園を眺めていたけれど、そろそろ入学式の受付が始まる。


「では、お父様、リアムを宜しくお願いします。私の高等部はあちらのようですので……」


 ……実はここは、200年前にマイラが通った学園でもあるのだ。中・高等部、それから大学部までマイラはいったので、10年通い慣れた場所でもある。

 大学部の奥には、マイラの研究室まであったのだが、当然それは処分されているだろう。


「本当に1人で大丈夫なのかい?」


 お父様は心配そうにそう言うけれど、


「はい。編入試験の時に来ていますから。その時にあちこち見て回ったのですっかり地図は頭に入っています」


 私がそう言うと、お父様とリアムは少し名残惜しそうに、それでいて少し緊張の面持ちでリアムの入学式に向かって行った。


 高等部は基本的に中等部の持ち上がりだから、大袈裟な入学式は無いのだ。新学期の集会のようなものだけがあって、編入生はそこで紹介されるらしいのだが……。

 今年は『聖女』の関係かいつもより編入生は多い。おそらくは名前を呼ばれるくらいで終わるのではないだろうか?

 まあ急に振られても困るので一応挨拶は考えてはいるのだけれど……。


 ローズはそう考えながら高等部の入り口へ向かった。




 高等部に入ると受付があり、そこで編入生は書類を提出する。持ち上がりの生徒や在校生はそのまま進むから、ここで完全に私が編入生だと周りは認知する。

 ……周囲の視線が痛いわね……。毎年こんなに、編入生が注目されて……。


「ローズ ダルトン嬢。講堂のA-11の席です」


 受付に立つ方にお礼を言い、講堂へ向かう。……遠巻きに、注目されてるわね……。編入生は20人だと聞いているけれど、みんなこんな風に見られるのかしらね。確か留学生の方も多いと聞いたけれど……。



 その講堂の席は、1番前で何人かの編入生は既に着席していた。真新しい制服の編入生達。持ち上がりの生徒達はネクタイやリボンの種類が変わるだけで制服はそのままだ。


 ローズも自分の指定された席を確認して座る。前を見ると、舞台の上に机が置いてある。その前で学園長が挨拶をされるのね、と思いながらローズはあちこちを見渡す。幾つもの来賓用の椅子が用意されている。……ここは、王立学園。もしかして王族の方もいらっしゃるのかしら?


 そんな事を考えていると、後ろからだけでなく横からも視線を感じる。チラリと見ると、編入生達もこの中にいると思われる『聖女』を探して見ているようだった。今年の編入生の中で女子生徒は10人らしい。…微妙な人数よねぇ。


 私は周りに気付かれず、無事に学園を卒業する事が出来るのかしら? とはいっても、私は一応『低級ポーションを作れるだけの聖女』、なのだけれどね……。ポーション作りだけなら、学園で気付かれる事はないはず……。以前の地下室ごとの転移の術のような、大きな魔法はもう使わないわよ、絶対に……!

 改めて固く決意するローズなのだった。


 ローズが決意している内に、進級式が始まるようだった。先生方や来賓の方々が入場されてくる。講堂内が生徒達が騒めき見覚えのある人物が入ってきた。


 ……うわぁ……そうよね、王立学園だものね。そして『聖女』にこの学園に入るようにと大司教様に言った張本人ですものね!



 そこには金髪碧眼の美男子、あの日魔女マイラの屋敷跡で会った青年、アールスコート王国第1王子レオンハルト殿下がいたのだった――。





お読みいただき、ありがとうございます。


いよいよ、学園に入学しました!

そして学園にはレオンハルト王子はじめ、第2王子、第3王子もいるのです。

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