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106 共に。

本編、最終話となります。



 貴族達はレオンハルトのその言葉を聞き、大いに戸惑っていた。



 王弟であるテオドールに不満があるという訳ではない。

 しかし、レオンハルトがいなければおそらく今のこの平和は無い。このアールスコート王国は約2年半前、確かに滅亡の危機に陥っていたのだ。それを魔物達と他国からの侵略の危機から救ったばかりか、エルフ族の協力を得て魔物達とも周辺国とも友好な関係を築き上げた。そしてこの国が持っていたある意味大いなる爆弾であった『古代龍の魔石』を怒れる龍達に返し赦しを得た。


 それは勿論カルトゥールの『聖女』がやり遂げた事でもあるが、それを側で支えたのは他ならぬレオンハルトだ。彼が国王代行として『聖女』と共にこの2年半の間にこのアールスコート王国という国をここまで安定させたのだ。


 しかし、レオンハルトは最初から自分を『国王代行』と言い切っていた。そして事あるごとに自分は期間限定の仮の王であり次代はテオドールだと言って、重要な席には必ずと言っていいほどテオドールを同行させ学ばせていた。



「レオンハルト殿下。……私達は、貴方様の功績をよく存じ上げております。本意としては貴方様にこの国を統べる王でいていただきたい。

しかしながら、貴方様の願いがこの国の王となる事で無いのならば……。他に貴方様の夢がおありならば、私達はそれを止める事は出来ません」


 戸惑う貴族達を代表して、シュナイダー宰相はレオンハルトにそう言った。この2年半共にこの王国を導いてきた者として、本当はこのまま王の地位でいて欲しい。けれど宰相はレオンハルトの願いを知っている以上、彼の思う通りにさせてやりたいとの思いが強かった。



「……感謝する。シュナイダー宰相。他の皆も、今まで共にこの国の為に働けた事を誇りに思っている。

……さあ、テオドール。皆に挨拶を」


 レオンハルトはシュナイダー宰相に礼を言い、そしてグルリと周囲を見て穏やかな笑みを浮かべてからそう言った。会場中の者達は静かに頭を下げた。

 そして、王族の席に座っていたテオドールが「はい」と少し緊張しているのか硬い表情で壇上に上がってきた。


「テオドール アールスコートである。まだ力不足である事は自覚しているが、皆の協力を得てこの王国を平和で豊かな国にしていきたい。

兄上がここまでにして下さったこの王国を、更に良き国としていくことを誓う!」


 若き国王テオドールに、皆が頭を下げた。



「……そしてこの度、200年前に『カルトゥール』公爵家を助けたダルトン子爵家を、その功績から『侯爵』に叙爵する。『聖女』様はそれを継ぎ兄上と共に守っていかれる事となった。魔物達の住む地をぐるりと囲む地域を領地とされる。そして兄上と『聖女』様は、これからも我が国を支えていってくださることとなっている」


 これからも、このアールスコート王国でレオンハルトと『聖女』は国を守ってくれる。その事に会場中の人々はほっとした雰囲気となった。


 

 ……そして、ダンスが始まる。

 テオドールは兄レオンハルトにファーストダンスを譲った。テオドールの隣には、彼の婚約者であるエイマーズ公爵令嬢がおり2人は幸せそうに微笑み合った。


 レオンハルトとローズは少し困った顔をしながらも前に進み出て踊り出す。2人は見つめ合いとても美しいダンスを披露した。




「姉様は……お義兄様もか、前世の記憶でダンスも完璧なんだから得だよねー。僕はまだまだ練習中だけど……。父様はどうなの?」


 父カルトゥール公爵に嫡男リアムがポソリと話しかける。


「リアム。ここでは『父上』と呼びなさい。私は妻が亡くなったのでと理由をつけて……」


「……父上。そんな事言ってたら、縁談がザクザク来るよ? ギュンダー伯爵も言ってたでしょう。それが嫌ならその辺りは濁しておいた方がいいって」


「うむ……。そうだった。では、昔の足の古傷がと言っておこう」



 そんな事を話しながら周りを見ると、周囲には沢山の貴族達が集まっていた。

 カルトゥール公爵とリアムはいよいよかと目を見合わせた――。




「……レオンハルト様。お父様とリアムが貴族の方々に囲まれておりますわ。大丈夫でしょうか……」


 ローズはダンスを踊りながらも貴族達に囲まれた父と弟を見て心配になる。レオンハルトもカルトゥール公爵達をチラリと見、彼らがにこやかに余裕を持って対応していると判断する。特に義理の弟となるリアムはなかなかのやり手のようだ。


「大丈夫だよ。義父上もリアムもこれから立派にやり遂げるだろう。特にリアムは多少の事には動じないし、おそらくかなりの大物になるだろう。将来が楽しみだね」


 クスリと笑いながらレオンハルトは言った。ローズもそれを見てふふっと笑う。


「そうですわね。あの子は本番に強い子ですしそれでいて周りをきちんと見れる子なのです。これから正しい状況判断をしていけると思います。

……それであの、レオンハルト様。本当に『ダルトン』家を継いでいただいて宜しいのですか? しかも『侯爵』にまでしていただいて……」


「私がカルトゥール家の大恩ある『ダルトン家』を継げるのは光栄な事だよ。爵位の事は……、せめてそれだけはとテオドールがどうしても譲ってくれなくてね。私もあの子に王位を頼む以上無理は言えなくて……。初め『公爵』と言っていたものを何とか『侯爵』で話をつけたのだ」


 テオドールは自分がいいとこ取りをして平和になった国の王となるようで心苦しい思いをしているようだ。……しかし、するべき事をしてその後は自由に生きようとしているレオンハルトからすれば、後の面倒を押し付けているようで心苦しい。

 

 お互いの気持ちや利害は一致しているというのに、お互いを思うが故の2人の悩みに、ローズはテオドールの婚約者であるエイマーズ公爵令嬢ジュリアと共に2人に話をしていかなければ、と思った。



 彼ら兄弟が良い関係であるように、ローズは同じクラスで共に勉学に励んだエイマーズ公爵令嬢ジュリアと良好な関係を築いていた。

 彼女は小さな頃から公爵家の方針で王妃教育をされており、本人は王妃としての自覚も品格も持ち合わせている。ただ、誰が王太子になるか分からない状況で宙ぶらりんの状態、そして昔からテオドールの想いに気付きながらも立場的に応える事が出来ず苦しい思いをしていたのだ。


 あの魔物の騒動からレオンハルトが国王代行となったものの、初めから期間限定としていたし『聖女』という婚約者も出来ていた。そこでやっと父エイマーズ公爵は娘ジュリアとテオドールとの婚約を認めたのだ。

 随分とヤキモキさせられたが、テオドールとジュリアの仲は良好だし、義理の姉妹となるローズとジュリアの仲も良好なのだ。



 ローズは嬉しそうに微笑む。


「テオドール陛下とレオンハルト様は、やはり兄弟ですわね。お互いがお互いを思い合って悩むところなど、よく似ておいでですわ。

お2人がそう決めて下さったのならば、私も有り難く『ダルトン侯爵』家を拝命し平和な領地にしていけるよう努めます。……レオンハルト様と、共に」


 最後、ローズは少し赤くなりながらそう言って、チラとレオンハルトの表情を見る。

 レオンハルトはローズを、愛しげに優しく見つめていた。


「そうだね。……共に。歩んでいこう。ローズ、今世こそは貴女と共に。生涯貴女を離す事はない」


「――はい。レオンハルト様。私は前世では『悪女』でしたが、今世は『聖女』です! 私も今度は貴方様から決して離れませんわ!」


 そう言って2人は微笑み合った。







 ――その後、アールスコート王国はテオドール国王のもと更に繁栄した。


 この王国には優秀な国王の兄とその妻である『聖女』がいた為、周辺国は決してこの国を粗雑には扱えなかった。

 そして世界一の魔法使いの一族である『カルトゥール公爵』家もその嫡男リアムが立派に跡を引き継ぎ、アールスコート王国の存在は強大なものとなっていた。


 『ダルトン侯爵』家の領地では『聖女』の力で魔物達と人間の諍いもほぼ無く、安定した土地となり領民達も増え繁栄した。『聖女』はいずれ自分がいなくなった時の為にと沢山の『お守り』を作った為、半永久的にこの結界は守られるだろう。

 その魔物達との関係に関しても各国から羨まれる事だった。




 年老いてもダルトン侯爵夫妻は変わらず仲睦まじく、国王達を支えつつも2人して魔法の研究をしたり各国の友人達や龍の住む地へ行ったりと忙しくも幸せな人生を歩んだ。

 そうして、子供達と孫達に囲まれ2人はほぼ同時に天に召された――。




 それから暫くして――


 妖精族に、2つの新たなる生命が生まれた。


 妖精王はその輝く生命2つを愛しそうに抱き上げた。



「ようやく……、還ってきたか。待っていたぞ。

2人の人としての生き様、しっかりと見させてもらった。……良き、人生であったな。これからはこの妖精界で、我らと共に2人仲良く暮らすが良い」



 そう言って妖精王は彼ら2人に祝福を与えたのだった。




 ――完――








本編終了となります。

少し時間をおいて、番外編を入れたいと思っています。

長い間お付き合いいただきありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  主人公の子供や孫たちも魔力が多い?。 [一言]  最後、クソババアとクソジジイになってハゲ具合や背中の曲がりぐあいがあれば嬉しかった。
[良い点]  永遠に2人共お幸せであるように。 [一言]  完結おめでとうございます。
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