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105 カルトゥール公爵の披露




 ――約2年半後。アールスコート王国王宮では、王家主催の盛大なパーティーが開かれていた。



 今日は王国中の主要な貴族達が参加している。そして皆、一様に少し緊張と期待の表情をしているようだった。


 それもそのはず、今日は世界一の魔法の一族である『カルトゥール』公爵一家の参加する初めてのパーティー。2年半前王国の危機の時に発表されたアールスコート王国の200年前の罪。その被害にあったのが世界一の魔法使いであった魔女マイラの一族である『カルトゥール』公爵家。

 200年の時が経ち、その一家が紹介されるパーティーなのだから。


 


 そしてそのパーティーの控え室では……。


「ローズ……! リアム……! ワシはもうダメだ……。お前達だけで行きなさい。お前達だけでも日の当たる場所へ……!」


 この世の終わりのような声を出す『公爵』に、その子息と令嬢は呆れたように言った。


「……父様。ナニ行き倒れて死に別れる直前みたいなセリフ言ってるんだよ。一応今回『カルトゥール』公爵である父様が『主役』だからね? 僕は父様の横でニコニコ笑うだけだから」


「ちょっと、リアム! 言い過ぎよ。 ……お父様。大丈夫ですわ! ちょっと偉そうに背筋を伸ばして歩いて適当に頷いていたら良いだけですから!」


 なんの慰めにもならない事を言う子供達に、ダルトン子爵改めカルトゥール公爵は少し泣きたくなりながらため息を吐いた。


 ……仕方ない。ここまで来たらもう行くしかないのだ。この3年間この歳で今更ながらの『公爵』としての貴族教育と、カルトゥール直系としての魔力を使いこなす訓練。しっかり大人になってしまった頭と身体が一から覚えるのはかなり難儀な事であった。

 ……そうだ。それでも私はそれをこの2年半努力し続けて来たではないか。今日はこの努力を披露する日だ。やるしかない……!


 そう思い直し前を見るカルトゥール公爵を見て、ローズとリアムは少しホッとした後、お互いを見て笑い合った。




 王宮の王家主催のパーティーは身分の低い順から呼ばれていく。今日は大きなパーティーなのでかなりの人数だった。


 ……そして、『カルトゥール公爵』一家は1番最後に呼ばれた。



 3人は開かれた豪華で大きな扉から入場する。……会場内の全ての人の視線が『カルトゥール公爵』とその子息と令嬢に集まった。



 そこにはプラチナブロンドに金の瞳の30代後半のダンディな男性、そして同じく15歳の美少年と……そして18歳の皆がよく知る『聖女』。



 その輝かしい姿に、会場中の者はため息を吐いた。



「あの方々が世界一の魔法使いの一族である、カルトゥール公爵御一家……。『聖女』様は拝見した事はあったが、ご家族も皆見事なプラチナブロンドと金の瞳、なのだな……」


「カルトゥール公爵もご嫡男もとても見目好い方々ではないか。……我が家にはちょうど似合いの年頃の娘がおるのだ。これは……」


「『聖女』様もレオンハルト殿下とご婚約されてさえいなければ、是非我が家とご縁を結びたかったのだが、非常に惜しいことだ」



 周りが勝手な話を始めていたが、縁を結びたいと思うということは好意的に見られているということ。父カルトゥール公爵も見た感じは堂々としているし、リアムも元々本番に強く緊張していてもそうは見えない子なのだ。そしてローズもお陰様でこういう場所には随分と慣れている。




 そうして会場内が鎮まり、侍従の宣言により国王代行のレオンハルトが入場した。


 レオンハルトは一通りの挨拶を述べた後、カルトゥール公爵一家に視線をやった。


「……今日は、我が国が200年前に大いなる間違いを犯しその被害を被った『カルトゥール』公爵家。その『カルトゥール』家を再び『公爵』に叙爵し皆に披露する目出度き日である。

『カルトゥール』公爵家は知っている者も多いと思うが、世界一の魔法使いの一族である。我が国の『聖女』がそのカルトゥール公爵家の令嬢であると言えば皆納得するであろう。

先日、フランツ カルトゥール殿を正式に公爵に叙爵した。そしてかつての屋敷跡に新たなる屋敷を建てこれからはそこに住まわれることになる。今のところ役職はないが、いずれ魔法省でその力を発揮していただく事になるであろう。

ご嫡男リアム カルトゥール殿は現在王立学園中等部の3年生。彼も立派な公爵となるべく勉学に励んでいる。

御令嬢ローズ カルトゥール嬢は王立学園の3年生。勉強に励みながら『聖女』としての活動もしている。……そして皆も知っている通り、ローズ嬢は私と婚約をしている。王立学園を卒業後、暫くしたら式を挙げる予定だ」



 そこで、皆おや、となる。


 勿論、国王代行レオンハルトと『聖女』ローズが婚約しているのは知っているが、卒業後暫くしたら式とはまだ聞いていない。

 国王の結婚となれば国の重要行事だ。諸外国にも案内を出さねばならないのに、まだそのような話は全く出ていないのだが……。


 皆はそう思い国王代行レオンハルトの方を見たのだが、レオンハルトはそのままカルトゥール公爵一家を前に呼び出し皆に紹介した。


 周りの貴族達はカルトゥール公爵一家が国王代行レオンハルトより祝福を受けるのを見て、惜しみない盛大な拍手を贈った。



 ――これで我が国に他の貴族達とは一線を画した魔法力を持った実力者『カルトゥール公爵』が名実ともに誕生した。


 人々はこれからこの公爵家と近付く為にありとあらゆる手を使ってくるだろう。まだ公爵になりたてて右も左も分からぬ状態。そう甘く見てくるのだろうが……。


 彼らはこの2年半の間高位の貴族の勉強をし、レオンハルトとシュナイダー侯爵が手配した貴族達と人脈を拡げてきた。そしてその仲間の貴族達はカルトゥール家を囲むように守っている。

 悪意を持った者たちは、彼らに近付く事は出来ないだろう。


 

 会場内は新たな『カルトゥール公爵』の誕生を祝い歓迎した。

 ……そしてこれであの2年半前から続く魔物騒ぎから始まった一連の騒動の後始末……最後の仕上げが無事に済んだことになると貴族達は安心したのだった。


 

 会場が賑わう中、レオンハルトが皆に声をかける。 


「……そう。あともう一つ。重要な発表がある。

この度私レオンハルト アールスコートは国王代行の座を降り、テオドール アールスコートにその地位を譲ることとする。

テオドールは昨年王立学園を卒業後、次期国王となるべく研鑽を積んできた。これからは立派にこの国の国王としてやっていける事だろう。……皆の者、頼むぞ」



 ザワッ……



「お待ちください! 今、やっとこの王国は安定したところでございます。それはこの王国の200年前からの罪をレオンハルト様が精算して下さったから。

聖女様と共にエルフ族と魔物達を取り持ち、周辺国との調整、そして魔物達の怒りを鎮めて下さったからに他ありません。

私達はレオンハルト国王代行がこのまま真の国王となってくださる事を望んでおります!」


 貴族達が口々に声を上げたが、皆そのような内容だった。


 レオンハルトは会場のそのような様子を見ても一切動じず、穏やかな表情で答えた。


「……私は3年前急遽国王代行となったあの日から、今日という日の事を考えていた。200年前のこの王国の罪を贖う為だけに、私は一時的にその地位についたのだ。

そして、この数年でテオドールも立派に国王としての資質を身に付けている。彼ならばこれからのアールスコート王国に新しい未来を築いていけるであろう」



 





お読みいただきありがとうございます。

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