え?そんなのアリなん??
やっと会えた仲間達だったが意志疎通も出来ない事が判明し、俺は再び洞窟の奥に向かって歩みだした
ゴツゴツした岩場を越え浅い水溜まりを渡り奈落の底に見える谷を避けて奥へ奥へと進む
跳ねている内に気付いたのだが若干「浮いて」進める様になっていた
スライムにそんな事が出来るのかは分からないが地面から数センチ浮いた状態で進む方向に意識を向けるとその方向に平行移動出来る
速度的には浮いて進む>跳ねて進む>体を伸び縮みさせて進む
と言った感じだろうか?
摩擦抵抗が無くなったせいなのか慣れてくると浮いたまま速度を上げると景色が物凄いスピードで後方に流れるのが分かる
更にジグザグ走行したり色々と試したが慣性をまるで無視した高速移動が出来る様だ
(これなら外敵に補食される可能性は相当低くなるんじゃないかな?…となるとさっきの仲間達は同類ってだけで種類が違うのかな?)
等と考え事をしながら進んでいたら突然浮遊感に包まれた
(あっ⁉あ~れぇ~‼)
どうやら調子に乗ってしまったらしい
さっきは慎重に避けて通った谷にフルスピードで突っ込みあっという間に転落してしまった様だ
ヒューーー…ボヨヨヨ~ン⁉
途中何度も壁面に叩きつけられダメージを…全く受けないまま気が付いたら奈落の底に着地した様だ
(あー、ヤバかったな今のは)
漸く落ち着いてさっきの転落事故の感想も出て来たので早速周囲の状況を調べるべくエコーや気配察知で辺りを確認した
ホッ、どうやらこの近辺には外敵がいない様だ
その代わり沢山の骨が散乱してる所を見ると此処は魔物の墓場かゴミ捨て場なのかも知れない
谷底に骨を捨てるなんて廃棄物処理法違反だぞっ!
と1人でツッコんでみる
…何も誰も応えてはくれない様だ
あ。。。何かちょっと寂しくなって来ちゃったな…
俺は普段一匹狼を気取っている(つもり)が本当は寂し過ぎると死んじゃうウサギみたいなハートの持ち主なんよ?
…誰かと会いたい!話したい!
とにかくこんな陰気な場所から抜け出さなきゃ!!
…ポウッ…ポウッ…
(っ⁉ヒイィ~ッ!)
ほ、骨の近くから青白い炎が沢山湧いて来てますよ?
…これって「人魂」って言うヤツじゃないの?
魔物の魂だから「魔物魂」かも知れないけどさぁ…苦手なんだよね、オカルト系は…
俺は魔物魂が《実体化》する前に此処を抜けるべく全速力(?)で移動し始めた
…ポウッ…ポポゥ…ポポポゥ…
あっ⁉ヤバいっ!何かいつの間にか囲まれそうに…チッ、囲まれてしまった
…ポワァ~…ポワァ~…
っ⁉ややや、やっぱり魔物魂が実体化すると幽霊になる…のか?
(…グワアッ‼)(グルルル…)
(…やっぱりなるのか‼)
俺の周りには色んな種類の魔物(の幽霊)がビビる俺を取り囲んでいた
ゴブリン、オーク、トレントにさっき見たヒュドラやドラゴンまで…多種多様、魔物の見本市みたいだな
ってあれっ?前世じゃロクにラノベやアニメも見てなかったからファンタジー世界の魔物とか幼稚園レベルでしか知らない「筈」なのに《どうしてスラスラ言える?》んだ…?
(グルルル…)
あ、ヤベ‼こんな疑問なんて今熟考してる場合じゃないや
と、とにかくこの場を切り抜けなきゃ。。。
(…ほー、スライムのゴーストとは初めて見たわい…)
(っ⁉。。。誰だっ⁉)
(ふぉっふぉっ…お前さんの仲間であって仲間ではない存在、とでも言っておこうかの?)
(どどど…何処だっ‼何処にいる⁉)
(見えんのか?ワシは先程からず~っとお前さんの前にいるぞぃ)
…えっ⁉
魔物(の幽霊)達から1つの青白い炎が半歩前に進んで来ると炎はゆっくりと人の形に変わっていく
(ヒイィッ⁉おおお、お化けっ⁉)
(そう怯えるでないわ、というかお主も霊体じゃろうが…)
。。。えっっ!?
(まぁ良い。ワシは昔、この谷に落ちて死んだ元魔導師の成れの果てじゃ)
…は?…俺が《幽霊》⁉スライムなのに??
(。。。ホレ、いつまで混乱しとるつもりじゃ?エレキテル)
ーピリピリッ‼ー
(おわっ⁉今ピリピリって来た⁉)
(そりゃそうじゃろう、ワシが弱い電撃を放ったからの)
(な、何すんだ‼…ですか…?)
(ふぉっ、ふぉっ…お前さんが全く人の話を聞かなかったのが悪いんじゃて。
ワシは元魔導師の霊じゃ。お前さんは見た所スライムの霊体じゃが…今迄そんな霊体が存在するなぞ聞いた事がないぞ?)
この幽霊、どうやら俺に興味津々らしい。…そんなに珍しいかな?。。。珍しいよな、最弱最大生息数のスライムが化けて出てたらファンタジー世界はスライムのお化けで埋め尽くされてなきゃおかしいもんな…
(…何を1人でブツブツ言っておる。ホレ、此処に来てワシと話さんか?
何分此処で死んでからずっと話の通じん魔物達(の霊)しか周りにおらんでな…人恋しかったんじゃよ)
俺、スライム(幽霊)ですけど?
…まぁ良い。この爺さんは確実に知識を蓄えている謂わばチュートリアル的存在だ。
どうせこのまま彷徨っても何も分からなそうだし爺さんから情報を聞き出してから去ってもノープロどころかメリットしか感じない
(…呪ったり祟ったりしません?)
(馬鹿者っ‼ワシはこう見えても生前は大魔導師として名を馳せた者じゃぞ⁉
それにお前さんも霊体ではないか)
あ…そうでした。
(さて、時間なんぞ此処には存在しておらん。じっくり話を聞かせて貰おうかのぅ…)
こうして俺は元魔導師の幽霊と知り合いになったのだった