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チートで無双!…なんて事はなく

都合により夜投稿ですんません

…グオォォォ~…グルルル…


ヒュドラは3つの鎌首を上げて俺を見下ろしている


(く、食っても腹の足しにもならんですよ??)


こんな声は勿論出ていないし届かない


鎌首の1つが滝の様にヨダレを垂らしている様子からどうやら(スライム)は彼等にとって美味しい餌なのだろう


慌てて周りを見ると隠れ損なったお仲間の一体が体表をプルプル震わせながら空いている岩陰へと移動を始めている


グアウッ!


…クッチャクッチャクッチャクッチャ…


(おおう‼)


逃走を計ったお仲間はヒュドラに咥えられるとちょっと美味しそうな音を立てて租借された


…クッチャクッチャ…ゴクンッ


(こここここ、今度は俺ですか⁉)


どう考えても次は目の前で姿を晒している俺の番だ


逃げたとしてこんな体の全速力などたかが知れてる


(…せめて痛くしないでね?)


俺は第二?の生を諦め開き直った


…ズズン、ズズン、グアウッ!

クッチャクッチャクッチャ

ズズン‼クッチャクッチャ

ズズンズズン!クッチャクッチャ


(。。。ん?)


閉じられる瞼も持たない俺は補食される事を覚悟して無い目を瞑っていたがヒュドラは俺が見えていないかの様に重い足音を響かせて岩陰に潜んでいるお仲間をつまみ始めた


(…あれ?)


ズズンズズン、クッチャクッチャ

グアウ!クッチャクッチャ


…俺、美味しくないっすか?


逃げ惑うお仲間を追いかけてどんどん離れていくヒュドラの背中をただただ呆然と眺める


補食されなかったという奇跡よりもガン無視されて相手にされなかった事が悔しくなるという錯誤を生み出している


…クッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャ…ゲフッ。

ズズンズズンズズン…ズズン……ズズン…


(。。。)


助かった…のか?


ヒュドラは満腹になったのか足音がどんどん遠ざかっていく


…ボヨヨヨ…ポヨン、ポヨン


(ん?)


補食から逃れたお仲間達は危機が去ったと判断したのか再び岩陰から姿を現した


(大分減ったな…)


先程まで感知出来ていたお仲間の数は最初から比べたら3分の1程に減少している


(あれだけ食われりゃそりゃ減るか)


助かったお仲間達は再びポヨンポヨンと跳ねたり転がったりしていてまるで生き残った事を喜んでいる様子だ


(あぁ、俺も助かったんだな…)


補食という絶体絶命なピンチから逃れられた解放感なのだろうか

体の奥底から何とも言えない高揚感が涌き出て抑える事が出来なくなる


…ポヨン、ポヨン、プルルルル…

…ブリュン!


(のわっ⁉)


目の前で跳ねていたお仲間が突然身震いしたかと思ったらいきなり2つに「分裂」した


プルルルル…ブリュン!

プルル…ブリュン、ブリュン、ブリュルン!


(おぉ~~~~‼)


生き残ったお仲間達はそれぞれ体を震わせて分裂を始めたのだ


一体が二体、二体が四体、四体が八体、八体が…


ついさっき3分の1まで減ったお仲間がねずみ算式に増えていく様は生命の神秘を見せつけられた様な感動を覚えさせられる


ボヨヨヨ…ブリュン!


シャアァァァ~…ッ!


(うーーーわ、終わった~‼)


一難去ってまた一難、ヒュドラの次は大蛇が現れた!


(も、もうダメだっ‼今度こそ終わりだ‼)


シャアァァァ…パクンッ!ゴクリ


。。。また無視っすか?


真後ろからやって来た大蛇はヒュドラと同じ様に俺を素通りして目の前の仲間達を次々と胃袋に収めていく


(連続で無視されるとなると偶然ではないな…何か違いがあるのか?)


大蛇は丸太の様な体をくねらせながら脇を通過しその進行方向にいたスライム達を平らげそのまま姿を消した


ポヨン、プルルルル…ブリュン‼


大蛇が去った後、再び姿を現した仲間達は何事もなかったかの様に分裂して元の数に戻っていく


此処にいても補食されるだけか


俺は意志疎通が無理そうな仲間達とのコンタクトを諦め他の場所を探そうと大蛇達が去って行った方角に進む


…ポヨン、ボヨヨン、ポヨン‼


仲間達の間をすり抜けて先に進もうと思ったらどういう意味かは分からないが結構激しめのボディアタックを何度も喰らった


何かを伝えようとしているのか、それは全く分からない


いずれにしても此処で飛んだり跳ねたり隠れたりしているだけでは単に補食されるだけだ


(ごめんな、俺は先を急ぐわ)


伝わるかどうかは気にせず行き先を告げるがやはり仲間達には伝わってなさそうだ


ヒエラルキーの底辺であるスライム達、そして(恐らく)仲間な俺。


思考があるのかないのかは分からないが一応挨拶としてポヨンポヨンと跳ねてサヨナラと告げてみた


どう伝わったかは分からないが仲間達は俺の動きを真似てポヨンポヨン跳ねていた


ラノベの様にチートで無双とかハーレムムフフとか望んでない


とにかく生き残る為に考えつく事は全てやろう

その為の前進、仲間との決別だ


さぁ、気を取り直して再び仲間探しか意志疎通可能な生物を探すぞ!


ーーー


この時、俺が何故外敵に襲われなかったのか?を検証していれば後に痛感する孤独感は柔らいだのかも知れない


全ては後の祭りだったが。

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