あれ?これってつまり??
3話目どうぞ
白黒の視界とヌメヌメとした動作を手に入れた俺は状況を把握すべく洞窟?の中を探訪している
。。。なーんてちょっとナレーション気味に呟いてみたが実態は今は不安から少しでも逃れる為に足掻いているだけだ
って誰に言い訳してるんだよ…
と、とにかく俺は死が訪れるその瞬間まで足掻いて足掻いて足掻きまくってやるつもりだ
…グニュ、グニュ…
って俺の体、一体どうなっちゃったの??
ずっとグニュグニュしか言わないし軟体動物にでも転生しちゃったの???
あ。
クラゲとかだったらヤだな…
って何考えてんだ?
どっちにしても今置かれている状況を何としてでも把握しないと訳も分からないまま死んじゃうじゃないか!
それだけは嫌だ!
よーし!お兄さん頑張っちゃうよお~!
グニュ…グニュ…
(あ…れっ!?)
グラリ…ポチャン。。。
ゆらゆらと体が揺られて沈む感覚だけが残っている
(これは…水の中なのか?)
前に溺れた記憶から何となく水の中へ沈んでいっている事が分かった
(って…溺れ死ぬっ!?)
一瞬で死の恐怖が呼び起こされた俺は必死に水面に出ようともがき続けるがそもそも足掻く手足はなかった
(あぁ…最後は溺死かよ…)
以前ネットで見た溺死死体のグロさを思い出し餓死と溺死、どっちが「綺麗な」死に方だろうか?とか意味不明な思考に埋め尽くされる
(…どうせ死ぬなら苦しまない方が良いよな…)
そんな事を考えながらゆっくりと水底に沈んでいく感覚だけが脳内を支配していった
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。。。ポヨン…
(ん???)
どの位沈んだか全く分からない
だがその無限に思えた沈下していく感覚は突如妙な弾力感によって終結した
(底まで沈んだのか?…ってさっきの「ポヨン」って何だよ?。。。俺…か???)
どう考えても他の感触が俺に伝わって来る可能性はない
となるとさっきの弾力感満点な感覚は俺の体が発した事になる
(…人間の体はポヨンって言わないわな…)
ぶっちゃけ洞窟内で目を覚ました時から薄々感じてはいた
そもそも筋肉というモノが残っているのなら動かせはしなくても何らかのフィードバックはあった筈だ
最初に得られた白黒の視界にしても人間の視界とは考えられない
(…これってつまり…生まれ変わった??)
草原で獣に襲われた時には確かに感覚は人だった
喰われる、という最悪な感覚ではあったが人として存在していた
だがこの洞窟内での俺はどうも人としての感覚が一切感じられなかったのだ
痛みも絶望も嫌という程味わった
その先に開けたこの感覚は人としてじゃなく「何か」として存在している自分だった
しかもその「何か」には何となくではあるが心当たりがある
俺が親しんだゲームやラノベ、そんな仮想空間に於いて最も知名度が高く最もか弱い「あの魔物」だ
(…そうだとして一体どうしたらそんなモノに転生しちゃうのかな?)
転生、それはあくまでも架空のお話で実際にはあり得ない。筈
確かこの魔物に転生してチート能力で無双したラノベもあったけどそのストーリーを思い出しても現実味は一切ない
そんなとりとめのない事をボンヤリ考えている間にも何となく浮遊感に包まれていた俺の体は恐らく水面に向かって浮かびつつあるのだろう
もし。
もしも「その仮説」が現実だったとしたら、だ
だとすれば俺はこれからどうなるのだろう?
アニメでは確か速攻で移動方法を覚え音速で内にあるスキルを活用し早々に封印されたドラゴンに出会い冒険を始めた時には既に無双への基礎体力?が備わっていた
…そんな都合の良い「設定」はなさそうだ
そもそもこの体になる前のあの惨事は何だったのだろうか?
おっと、こんなとりとめのない事を考えている暇はなさそうだ
何となくだが周囲の白黒のグラデーションが白になりつつある
恐らく水面に近づいて来ているのだろう
この浮上チャンスを逃したら脱出出来る可能性が次にやって来るか分からない
何とかして水中から逃れないと本当に手詰まりだ
俺はさっき会得?した移動のイメージを体に伝え少しでも脱出出来る確率を上げる努力をしてみる
…グニュ~…
お?いけそうか?
エコー画像の様な視界の端に体を動かした事による波紋の様なモノが見切れている
どっちが岸なのかも分からないが何もせず再び沈下の憂き目に甘んじるよりはマシだ
俺は今動かしている体のイメージを更に力強く、早くしてみる
…グニュ~…グニュン…グニュグニュ…
む?いけそう…か?
波紋の間隔が短くなり気のせいか進んでいる様な感覚が生まれる
子供の頃、駄菓子屋で買った粉ジュースに入っていたツブツブの様にただ浮き沈みする訳にはいかないのだ!
って何でこんな時に下らない決意表明とか繰り出しているのかが自分でも分からない
一つ言えるのは俺自身、元々楽天家な性分なのでそれが今最大限にプラスに働いているって事だ
そうじゃなきゃこんな劇的絶望ビフォーアフターに精神が耐えられる筈がない
固定観念の弛さがまさかこんな所で生きるとは思わなかった
…プニュン
ん?もしかして…岸…か?
何かに接触した気配がある方向に向けて視力を集中させると確かに白と黒のコントラストがハッキリしているのが確認出来た
(イメージとしてはタコの吸盤…吸盤…吸い付かせて固定(掴む)んだ…掴め、掴め…掴めぇ‼)
四肢すらない今の体では岸部に手を伸ばす事すら叶わない
ならばどんな形でも引っ掛かり沈む運動を阻害しないとまた底まで沈んでしまう
幸い?にも吸盤のイメージは成功した様だ
とにかく白(空?)と黒(陸地?)のコントラストはそのまま固定されている
(次は水辺からの脱出か…)
俺は上手くいったのかどうか分からない吸盤のイメージに戦車のキャタピラやエスカレーターの階段のイメージを加えて流れる様に動く様に必死に努力をしていくのであった