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何だこりゃ?

とりあえず「さわり」を投稿してみました

…ピチョン…ピチョン…


(。。。)


気を失ったのか寝ていたのかは分からないが次に「起きた」のはやはりさっきの水滴が落ちている場所だった


(…ここは一体何処なんだ?)


そもそもの発端であるボルダリング途中の滑落、あれは岩場だった

確か地面に叩きつけられ衝撃や痛みもハッキリ覚えている


次に目覚めた所が謎で岩場でも病院でもなく辺り一面緑の草原であった


そこでは状況を把握する暇も与えられず複数の獣達に体を喰われて気絶?してしまった


その後が今置かれているこの場所だ


1度は手放した冷静な思考を取り戻して考察してみるとこの水音の反響音からして何処か閉鎖的な空間、例えば洞窟の中の様な気がする


だが今の俺にはここまでしか思いつかない

というか手足の感覚も視界もない為に周囲を見渡す事も移動すらも出来ない


(…俺…このまま死ぬのかな?)


冷えた感情で改めて考えると幸か不幸か何の感覚も伝わって来ない


身動ぎ一つ取れない代わりに痛みも飢えも何も感じない


(…何だこりゃ?)


もう諦めというか笑える状況に自嘲気味に呟いてみる

そう言えば先程から話しているつもりだったが声も失っている様だ




…ピチョン


ピチョン…ガララッ


(…!?)


不定期に落ちる水滴の合間に何か硬い物体が転げ落ちる音が響く


音がした方向に顔を向けようとしたがそれすらも叶わない

と言うか視力を失っているのにそっちを向いた所で何が見えるんだ?という事に気付いて思わず笑ってしまう




。。。ボヤァ…。。。


(んんんっ!?)


諦念を越えて自嘲した瞬間、何か分からないが視界が開けた気がした

視界。。。というよりも目から得られる情報と言うより何となくボンヤリしたイメージが脳内に映った感じだった


(見え…てる訳じゃなさそうだな)


俺の脳内には確かに周囲の風景らしきイメージは投影されているが普段目から入って来る情報とは全く違う


例えるならエコー診察で可視化された物体を見せられている感じだ


(…まぁ何も感じないよりかはマシ…か…)


幾ら何も感じないからと言って恐怖迄感じない訳ではない

このまま飲まず食わずでいれば遅かれ早かれ確実に死ぬのだ


開き直り、じゃないけど既に恐怖は十二分に味わった

こうなりゃ死ぬ間際迄出来る事はした上で観察してやろう


と、言う訳で先程から得られた視界?を早速分析してみる


目から入って来た情報ではないので「目を凝らす」という努力をしたところで鮮明になる訳ではない


脳内に映る物体?の形状等をより詳しく、より細かく観察してみる


暫くその状態を続けていると突然物体の輪郭がハッキリ見えだし表面の凹凸等が知覚出来る様になった


(お?この努力は報われたか!)


だがやはり、と言うか目の前?にある物体は岩だった


体が動かせない、という状態がここまで辛いモノだとは思わなかった

見る?範囲も固定されている為に視野が確保出来ない

これが病院のベッドの上なら天井をただただ見つめる事しか出来なかっただろう


だが俺は楽観的だった


何せ今知覚しているのは視力に頼った映像ではなく「何か別の」力で感じ取った映像なのだ


第二の視力?を手に入れて僅かな希望が見えた気がした俺は次に自らの「可能性」にトライする


(む…むむむっ‼)


手足は失ってしまったかも知れない

だが関節が何処かに一つでも残っているのならその伸び縮みによって多少の移動は可能な筈なのだ


。。。だが全く動かせる気配がなかった


手足は諦める、にしても首…はさっきから動かせてなかったな

となると…腰?ヘコヘコ動かせばどっちかには進めるんじゃないか?


と思ったがそれすら叶わなかった


結局四肢を失ったどころか四肢麻痺状態なのだろう

獣に襲われた時に脛椎なり脊椎なりを損傷したか喰われてしまったのかも知れない


となると…全く身動きは取れない


それは嫌だ!!


せめて死ぬ間際迄自分の可能性を試してみたいんだ!!


。。。って何言ってんだ?俺


まぁとにかく退屈なのだ


雨垂れ岩を穿つ、じゃないけど地道に出来る事を探していけば退屈からは解放される


(む…このっ‼)


。。。グニュ~~~ン


(っ。。。え?)


どうにかこうにか体を動かそうと足掻いていたら全く違う感覚が身体を包んだ


感覚で言うと…そうだな、水銀の様な重い液体が地面をゆっくりと流れていく、そんな感覚だ


その流れ?に意識を集中させていくと…それは液体ではなく俺の身体?が移動している感覚だと言う事に暫くして気付いた


四肢を失い身動きも取れず視力も失った

そこからどんな形であっても脱却出来た事に俺は素直に感動していた


良く分からないが移動したい方向に意識を向けて例の水銀の流れをイメージするとその方向に移動が出来ている様だった


まぁ本当に移動しているのかしていないのかは先程得られたエコー画像の様な視界のみの判断にはなるのだが。


とにかく!


移動手段?を得て視力?を回復させた俺が次にする事と言えば決まってる


(此処は何処だ?)


さっきから知覚出来ている風景はどうみても最初に感じていた洞窟の中だった


こうなると何故?というのはどうでも良い

何故を幾ら突き詰めても現状此処にいるんだし原因なんかよりもこれからを考えた方が遥かに建設的だ


(よーし!そうと決まれば冒険だぁーーーっ!!)


1人ボケ1人ツッコミをしている訳じゃない

こうでもしていないと孤独過ぎて不安に押し潰されそうだったのだ


と、こうして脳内で呟いているだけでも相当ヤバい奴なんだけどね


。。。虚しくなるからツッコむのは止めよう。。。


とにかく今は周囲の策敵っすよ!


(むむっ…おりゃ!!)


…グニュ、グニュ…


どうにかこうにか意識を向けた方向に動いてくれている俺の身体


全てを失った後だったがこうして俺の意思に応えてくれていると思うだけで何となく嬉しい


自画自賛?とも思える鼓舞をしつつ俺は目ぼしい目印を探して洞窟内を移動していった

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