ボロアパート24
車のライトに照らされ、私の体は宙を舞う。
ドサッ
「…ごめんね。守ってあげられなくて。」
茜に向かって手を伸ばす。
「茜…お母さんやっとそばに行けるね。ありがと。」
温かい涙が頬を伝う。
しんどい事ばっかりだった私の人生はこんな風に終わってしまうんだ。
茜は最後に何を言ってた…?
「ママよかったね。…バイバイ!」
…え?
茜は私の事をママって呼ばない…。
あれは茜じゃない?
アイツ、誰?
真っ暗な瞳を見た。深い深い漆黒の闇。
ニヤァと笑う茜に似た何か。
…それを最後に私はもう何も見えなくなっていた。
……
「お母さん、いないなぁ。」
フラフラと歩きながらお母さんを探す。
たくさん歩いて疲れちゃった…。
ずいぶん遠くまで来たみたい。
「ん?あれ何だろ。」
大きな交差点で人だかりが出来ている。
「おいっ!誰か救急車!!女の人が轢かれたぞ!」
え?事故…。なんでだか嫌な予感がする。
集まった野次馬の間をすり抜けて事故現場へ向かう。
その時、同じ歳くらいの女の子とすれ違った
あれ?私にそっくり…?
でも、その子もスルリと人々の足の間をすり抜け、あっという間に見えなくなってしまった。
変だなぁと思いながらも事故が気になる。
何があったんだろ…。
道路の端まで出てようやく倒れた人が見える。
「えっ!?お母さんっ!?」
グッタリとした様子で道路に横たわる女性は、間違いなく私のお母さんだった。
慌ててそばに駆け寄る。
「お母さんっ!お母さん、どうしたの!?」
声をかけても反応がない。
「なんで?さっきまで普通に…」
体を揺すって起こそうとするが、私はもう死んでしまっている。お母さんに触れる事は出来ない。
「お母さん!ねぇ!お母さんっ!起きてよー!」
どんなに耳元で大きな声を出しても、もうお母さんの目が開く事はなかった。
「どうして…?なんでお母さんがこんな目に遭わなくちゃいけないの…?」
涙が止まらない。
「うぇーん。お母さぁん!」
お母さんの身体が運ばれていく。
「連れて行かないで!お母さん!待ってよー!」
どんなに大声を出しても誰にも気づいてもらえない。
悲しい。寂しい。辛い。怖い。
なんで…なんで?なんでなの?
苦しくて苦しくて頭がおかしくなりそう…。
「うわぁーーーーー!!」
大声で叫んだその時。
「茜?…茜だよね?」
後ろから声がして、バッと振り返る。
「お母さん!?」
「あれ?私どうしてここに…?」
私は思わず駆け出し、お母さんへ抱きつく。
触れる!ギュッて出来る!