初めての女装
私は今、初めて着る白い繊細なレースのついたふりっふりのふわっふわのピンクのドレスに、赤い宝石の付いた可憐な髪留めをして鏡の前に立っている。今までの人生でこんなにも心が浮き立っていたのは何度あったことだろうか。強いて言うなら、兄が成人して女装解除したとき以来である。最近は、兄が女装して学園に通っていたように自分も男装して学園に通わなければならないのかと一日中頭を抱えていた。ちなみに今着ている服も兄のお下がりである。私はまだ女服を一枚も持っていない。
「ティア!すごく似合っているよ!」
キラキラと星が飛んできそうな笑顔で言うのは、何を隠そう、やっぱり兄であった。実は兄はスキあらば私に女装…ではなく普通に女の子の格好をさせようとして、父や母、使用人たちに止められていたのである。それが今回は堂々と着せることができるために、張り切って衣装から髪型から整えてくれたのだ。流石16年間女装していただけのことはある。本人に言ったら怒られそうではあるけれど。
「あにう…兄様、ありがとう。僕…私、念願のドレスを着ることができてすごく嬉しいよ…わ!」
一方の私は、普段男の子の格好で男言葉で話していたので、まだそれが抜けきらない。心の中での一人称はずっと私だったのだけれど、どうしても何も意識しなければ僕になってしまうのだ。そんな様子を周りで見ていた侍女たちは、ひそひそと小声で言うのだった。
「まるでハロルド様の生き写しね。学園に入学したときにそっくりだわ。どこからどう見ても可憐な女の子にしか見えない。」
「いや、アネスティア様は女の子だからそれで良いんじゃないの?」
「ハロルド様に似過ぎてて、逆に男の子だと思われても不思議じゃないってことよ。」
「ああ、なるほど、確かに。」
うちの侍女たちの小声は大きいのだ。その会話を聞いて、私たち兄妹はぴしりと固まった。言われてみれば確かに、何も知らなければ女の子にしか見えないが、兄の女装時代を知る人からは弟と間違われるのでは…?と思わずにはいられない。
ここで改めて、私の容姿について説明しておこう。陽の光を当てると太陽のような輝きを放つ赤金の髪に、朝の日差しを思わせる爽やかな金の目をしている。目鼻立ちは整っていて、まあ控えめに言ってイケメンのようであり美少女のようでもある。つまり中性的な顔をしているのだ。髪は男でも女でもいけるように長く伸ばしている。兄は成人と同時に短く切ってしまったが、予々同じような容姿をしている。父は赤金の髪にエメラルド色の目をしていて、普通のイケメンもしくは美女である。母だけは違っていて、紛うことなき美女である。男装しても男装だとわかるくらいには美女である。父よりも美女である。母の容姿は、艶やかな黒髪に私たちと同じ金の目をしている。こんな風に、ここ4、5代にかけて美女の血を入れていった結果、顔面偏差値が高くなってしまったのである。どういう経緯でこうなったとか、それで仕事を無くすとか間抜け過ぎだろとか、いろいろ思ったのは秘密だ。
結局その日は学園の制服のための採寸をして終わった。
気の向くままに投稿するので、不定期です。
あとたぶん亀更新です。