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episode5 占い師2

 俺たちが退学だと思った理由が日頃の行いのせいだと言い切った綛谷さん。占い師なら占い師らしく占いでと言ってほしかったが。


 そんなことはもうどうでもいい。そんなことより俺が気になっていることがある。


「にしても何故ここでやってるんすか」


 そう、綛谷さんがこの公園で占いをやっていること。


 普段綛谷さんは自分の占い用の部屋がありそこでやっている。色は黒を基調として如何にも占いますって感じの部屋なのだが。


 ちなみに綛谷さん曰く別に黒にする必要はない、ただの雰囲気造りとのこと。


 話がそれた。つまりちゃんとした場所まであるにもかかわらず、今日この場所でやっている理由。


「ん~、別に深い意味はないんだけどね。ただの気分転換よ」


 気分転換。確かに大事だ。


 例えば、勉強しているときに詰まってしまったとしよう。そのまま無理に机に向かっていてもなかなか解決しないが、一度席を立ってストレッチをしたりすると意外とあっさり解けたり。


 家でゲームをやっていて全然クリアできなくて、友達の家に行ってやったら何の苦労もなくクリアできたり。


 小説家がカフェとかで小説を書くみたいなことだ。


 つまり、ずっと同じ場所で同じ事をしていたら気も滅入るし占いの当たる率が下がってしまうのを防止しようって訳だ。


 流石プロやで。


 しかし、よくこんな時に外に出ようなんて思うな、花粉症な俺にとって外での活動は死を意味すると言っても過言ではない。


「綛谷さんは花粉症じゃないんですか?」

「ええ、私全然平気なのよ」

「裏山死刑」

「なんで!?」


 花粉症じゃないなんて人間じゃないな。


 いや、まだ発症してないだけでいずれ貴様もこの道に堕ちるだろう。


 目はかゆく鼻は詰まるし鼻水止まらないし、くしゃみも。生きるのがつらくなるほどのあの経験を。


 くっくっくっ、せいぜい今のうちに楽しんでおくことだな。


「何かすごくいやらしい顔してるね」


 解せぬ


「はぁ、なんか喉乾いたな。ちょっと水飲んでくる」

「ぬ、なら俺も行こう」

「おーいいぜ」


 近くにあった水飲み場(四角柱の物に手を洗う用の蛇口と水を飲む用の蛇口?がついた奴)に鳴無と一緒に向かう。


 意外とこの水が冷たいし勢いがあったりと、飲むときは少し注意が必要だ。


「しかし、この蛇口ってのは見れば見るほど変な形してるなぁ」


 鳴無が蛇口先輩に対して不敬な事を申している。


「貴様、蛇口先輩を馬鹿にすると大変な目にあうぞ」

「あん?何言ってんだ久我大変な目ってどんnっ~~~~~~~」


 言わんこっちゃない。


 鳴無が水を飲もうとしたとき蛇口先輩がある方から飲もうとしたために、蛇口先輩を思いっきり蹴ってしまったのである。


 痛い(確信)


 あれは本当に痛いのだ。結構思いっきり蹴ってたから多分皮削れてるんだろうなぁ。


 え?痛みがわからない?


 ……( ^ω^)・・・タンスに小指でもぶつければ良いんじゃないですかね。


 そんな事よりも鳴無である。


「そら見た事か。蛇口先輩を馬鹿にするからだぞ。謝れ!蛇口先輩に謝れ!」

「く、くっそぉおお」

「馬鹿野郎!土下座に決まってんだろ!」

「あああああああああああ」


 俺が鳴無に蛇口先輩に許しを得るために土下座をさせる。蛇口先輩は礼儀を重んじるお方だ。失礼を働いたら誠心誠意謝らなければならない。


 許しを得たら次回からは蛇口先輩からの攻撃はなくなるのだから。


 と、そんなことをしていると


「ままーあれなにー」

「よく見ておきなさい。あれはね?あんな大人になっちゃだめだよって言うのを体現してくれているのよ」


 なんて言う親子の会話が。


 いやそこ見ちゃだめよじゃないんかい。俺たちは反面教師か何か?


「へー。わかった!さくらあんなおとなにならない!」


 そして子供は子供で分かったらしく、俺たちにいい笑顔で手を振っている。一体何が分かったのだろうか。


 でも笑顔が可愛いから許す。


「お、おお桜ちゃん。こんにちは」

「おとなちのおにーちゃん、こんにちわー」


 舌足らずで元気に挨拶をする。どうやらこの子が鳴無の目的の子のようだ。

 ちなみに鳴無の顔は近年稀に見るかもしれないほど気持ち悪いものになっていた。


 ロリコン、この言葉が俺の頭の中をよぎる。鳴無のこの様子から見てまず間違いないだろう。だが、仮にも友達がロリコンで捕まったとあらば恥である。


 警察の事情聴取やテレビでの取材に「まぁいつかやると思ってました」と言う日が来てしまうのではなかろうか。


 阻止……は、やっぱり桜ちゃんの為にもしておいた方がいいだろう。鳴無はどうでもいい。


 ので、そっと肩に手を置き俺は諭すように言い放つ。


「ロリコンは犯罪ぞ?ロリコンに人権はないぞ?」


 鳴無は何を言われたのか分からないといった表情をしている。桜ちゃんは「ろりこんってなぁに」と母親に聞いている。「ロリータコンプレックス、つまり小さな女の子に興奮するやからの事よ」と母親は教えている。



 いや教えるんかい!しかも結構普通に教えてるよ!?さっきも見ちゃいけませんじゃなくて見なさいって言ってたし。別に他人の教育方針に口を出そう何て気持ちはこれっぽっちも無いけれど、それでもちょっと桜ちゃんの将来が心配になってくる。


 冷や汗がツツーと流れていくのを感じながらそんな事を思いながらもきちんと挨拶をする。


「こんにちは」

「はい、こんにちは」

「こんにちわー!」


 挨拶は大事、古事記にもそう書いてある。


 さてさて挨拶もしたことだし、いい加減鳴無になぜ幼女に会いに来たのかを問いたださねばなるまい。ここでの答え次第では舗野と二兎と連携して異端審問会を開かなくてはならなくなる。


 正直な話異端審問会は開きたくないのだ。下手をすれば友が亡き者になる可能性もあるのだから。


 だから


「いいか一言一言にちゃんと責任を持って答えろよ?いいか?何故桜ちゃんにあいに来た」


 俺はいつもの飄々とした様子をスッと引っ込め珍しくも真剣な面持ちで問いただす。友を疑いたくない気持ちと、どうしようもなく否定できない気持ちが混ざり合った心境。


 何ともいえない気持ちではあるが、ここは鳴無の答えに期待するしかない。


 その鳴無本人はというと俺の表情が真剣なのがそんなに珍しかったのか目を丸くして固まっている。確かに珍しいけれど決して初めてではないはずだ。


 ・・・・・・待てよ。むしろ真剣な表情をしなくなったのは、それこそ最近なのでは?


 何だかんだこいつ等との出会いのときや妹達の時なんか真剣も真剣。本気と書いてマジと読む位真剣だった。


 真剣真剣言い過ぎてゲシュタルト崩壊してきたがそれほどだった。


 そうか、そんなに珍しくも無いのか俺の真剣な表情。


「お前・・・・・・今どんな顔してるか分かるか」


 鳴無が俺にそう聞いてきた。質問に対して答えずに質問で返すとはこいつなかなかやるな。しかも俺の顔がどうしたって?


 鏡が無いから見ることは出来ないけれども自分の顔の事くらい分かる。筋肉の使い方的に今は無表情よりのキリッとした顔だと自負している。


「すっげー邪悪な笑顔してるぜ」


 なんて事を言うのでしょうか。言うに事欠いて邪悪な笑顔とは何たる事じゃ。邪悪なのに笑顔と言うのも考えてみればパワーワードの様な気もしないでもないけれど。


 それにしても、本当に俺はそんな顔をしているのだろうか。自分ではそんな顔をしているように思っていないのだが。


 鳴無が嘘をついている可能性もある。なら確かめなくてはならない。


「あの、今の俺の顔ってどんな風になってます?」

「そうね。すっごくいい笑顔よ」


 そら見た事か。個人的には笑顔って事がちょっと納得いかないけれど、それでも邪悪とは言われなかった。


 鳴無はやはり嘘を


「すっごく悪い意味でのだけど」


 どうやら神は死んだようだ。


 後ろで綛谷さんがクシャミをしているが。もしかしたら花粉症の症状が出てきたのかもしれない。そこに杉の木があるけど風で揺れてたからな。

 やったぜ。これであの人も花粉症だ。仲間だ。はっはっはっはー


 そん事よりもだ。どうやら俺は自分自身の表情すらコントロールできていないらしい。


 何度も言っているが俺としてはキリっとした表情のつもりなのだが、実際は俺は笑っていたようだ。心当たりがないと言えば誠に嘘になる。


 本当のことを言おう。言わせてもらおう。先は心苦しいやらかけたくないやら言った気もしなくもないが、鳴無を異端審問会にかけたくて仕方がないのだ。


 だってそうだろう?こいつはまだ汚れを知らない純真無垢な少女に手を出そうとしてやがるのだから。世の平和のため、幼女の平和のため。そして、俺の好感度のために異端審問会にかけなければならない。


 もちろん一番重い罪を被せるつもりでいる。


「久我、お前が俺にどんな事を思っているか知らないが。俺は別に桜ちゃんに手を出すつもりはない。むしろ妹が相手をしてもらっているからお礼をしたいだけだ」


 とここで初めて尤もらしいがどこか取ってつけたかのような説明をする。


 妹が相手をしてもらっているだと?反対ではないのか普通。


「あー今の言い方だと誤解をまねくな。俺の妹は悩んだりするとこの公園に来てな、その時にこの子から元気をもらっているそうだ」

「ええ、梨花(りか)ちゃんはこのことよく遊んでくれるの。この子にとっても姉ができたみたいで嬉しそうで」


 どうやら鳴無の言っていることは本当らしい。それに初めて妹の名前を聞いた。梨花か。美香ちゃんたちと同級なのだから聞いてらわかるかもしれん。


 実の兄に聞くより同級生の美香ちゃんや美咲ちゃんに聞いた方が早いとはこれいかに。


「チッ。桜ちゃんのお母さんに免じて今回は許してやる。俺は先に向こうに戻ってっから終わったら来いよ」

「今お前舌打ちしたな。わかった、そう時間はかからん」


 鳴無はそのままお母さんと桜ちゃんと仲良く話し始めた。


 それを後ろに綛谷さんたちがいる方へと向かっていき軽く説明をする。


 危うく異端審問会にかけなければならなかったことや、蛇口先輩の事を決して侮ってはいけない事。特に蛇口先輩の事は重要であるため再三注意しておいた。


「貴方たちは仲がいいのか悪いのか偶にわからなくなるわね」


 綛谷さんがそんなことを言っていたが俺たちはいつでも仲が良くて仲が悪いのだ。


 そんな今更な事を言ったところで何も始まりはしないのだから軽く流しておくとしよう。


「で、久我君この後どうする?」


 鋪野がこの後どうするなどと聞いてきた。ふむ、どうしよう。今はまだ昼になっていないものの後数分もすれば昼になる。


 ので何はともあれ昼飯が先だろう。が、そんなことは鋪野も二兎も、桜ちゃんを抱きかかえているクソ野郎も承知でそんなことを聞いているわけではないだろう。


 やはり異端審問会にかけよう。


 問題は昼を食ってから何をするかって話だろう。正直な話、今は別にゲーセンに行きたいわけでもないし欲しいゲームや本があるわけでもないのでどこかに行きたいとも思わん。


 なら他のやつらの行きたいところに行くのがベスト何だろうが、犯罪者の行きたいところは現在いるし、二兎も鋪野も行きたいところがあるわけでもなさそうなので。


 久しぶりに


「部屋でゲームでもするか?」

「久我君の部屋でかい?」

「ん」


 二兎は少し眉をピクっとさせていたが何も言わず鋪野が確認してくる。別にこの案が嫌だったわけではないだろう。


 気にする必要もない。


 この後の行き先も決まったところで鳴無も帰ってきた。綛谷さんもいつの間にか帰宅の準備が完了しておりタイミング的にもちょうどいいころ合いだろう。


「お帰り鳴無君」

「こ、この後はお昼食べて久我君の部屋でゲームする予定なんだけどいいよね?」

「お、いいなぁ久しぶりにお前らを全力で叩き潰してやる」


 鳴無の同意も得てまずは昼を食べるためにどこかに向かうことにした。


「じゃあ綛谷さん、またいつか」

「ええまたね」


 綛谷さんにもちゃんとお別れを告げて歩き出す。


「あ、久我君ちょっといい?」


 歩き出して少ししたら綛谷さんに呼ばれる。何かあるのだろうか?そう思いつつ鋪野たちにはちょっと待っててもらう様に言って綛谷さんの方へと向かう。


「どうしたんですか、綛谷さん」

「ちょっと気になって占ったんだけど、今の久我君からは難相がでてるの」

「マジか」


 辞めてほしいでござる。せっかく手に入れた平和だというのに。それをぶち壊すかのような事を綛谷さんは言ってきた。


 しかし気になったって。どこをどうしたら気になるのだろうか。これも日ごろの行いのせいか?


「ちなみに難相ってどんな?」

「……男物の制服を片手に笑っている美香ちゃんたちが見えたわ」


 この人は一体何を言っているんだ?気分転換するために公園に来て花粉症になって頭もやられたか?俺の妹たちがなぜそんなことをするのだろうか。


「ちなみにその制服には久我って書いてあるわ」


 前言撤回。多分それ俺の未来ですわ(白目)。一体俺はどんなお仕置きをされるんですかね。とても気になるけれど、怖くて聞けない。


 今度こそ顔が引きつっているのが解る。これはきっと気のせいではないだろう。だってそんなに暑くもないのに頬を嫌な汗が伝って行くのが解る。


「そ、そうですか。気を付けます」

「うん、そうして」


 神妙な顔をして頷く綛谷さん。きっとどうしてそうなったかも視ているのだろうけれど、教えないと言う事はとても口にできる内容ではないって事か。もしくは俺だからか。


「あと、それとは関係ないけど金髪の人に注意して」

「?金髪」

「うん、あまり深く探れなかったんだけど金髪の人が直接的ではないけれど久我君にも危害を加えるのが視えたの」


 しかし金髪か。外人かそれともヤンキーとかか。男か女か。金髪だけではわからん。しかしそれ以上を言わないって事はそれ以上は綛谷さんにもわからないって事だ。


 綛谷さんは視えたものは包み隠さず話してくれる人だから。


「了解です、そちらの方も疑心暗鬼にならない程度に心にとどめておきます」

「ええ、そうして頂戴」


 それじゃ、と言って今度こそ綛谷さんと別れる。綛谷さんも道具を担いで二つある公園の出入り口の俺達とは反対方向から出ていく。


 この後起こるであろうことに一抹の不安を抱きながらも、友たちを待たせているので足早に向かうのであった。

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