第五話真実
「あの事件、あなたも関わった、あの惨劇を思い出すといい。あの法廷で罪を認めたジルの涙を。考えてみるがいい。世の中に絶望したとはいえ、大切な親友で、戦友で、心から敬愛していた少女をむざむざ敵に売り渡した人間に、落ちぶれたとはいえ、借金などするものかを。」
ブレアティの言葉に、カルロは、ブルゴーニュ派のジャンを思い出す。
ジャンヌダルクを並みいる身代金の支払い主から、イングランドに引き渡した男だ。
が、父方はブルゴーニュ派の人間だ。お金を借りても不自然とは思えない。
ジルが禁治産者になってからもまた、執拗に金を貸していたのは確かではあるが、晩年のジルは、偽物のジャンヌダルクを蘇ったと信じてしまうくらいに精神を病んでいた。
「彼は、偽ジャンヌを見抜けなかったのですよ?」カルロは、ブレアティをみた。
1440年、詐欺師とわかるまで、ジルは、蘇ったジャンヌを信じて戦争の指揮までさせている。
その問いに、ブレアティは寂しそうに微笑んだ。
「その答えを…彼は、自分の裁判で告白している。俺はその裁判を傍聴していたんだからな。」
プレアティの答えに、カルロは一瞬驚いて彼を見つめた。
嘘や、誇張で話しているようではなかった。
しかし、少年の惨殺事件の容疑者としてプレアティも追われる身だった。
自らも関係する事件の傍聴に大胆にも来たと言うのだろうか?
重い疑惑がカルロの胸をよぎる。が、直ぐに思い返した。
彼は、カルロが関わった七番目のプレアティだ。
ジルの側近だった人間とは別人だ。
が、犯人と悪魔しか知らない紋章を入れられるとしたら…
真実を伝えよう…
地獄の底から、腹に響くような悪魔の声がした。そんな幻聴に囚われて、カルロは思わず十字をきった。




