第四話ジル・ド・レ
カルロは、混乱しながらも、訳のわからない胸の苦しさを感じた。
それは、この男に対する同情なのか、それとも、何か大切なものを見落とした気持ちになる為なのか…
カルロは、無表情を装いながら、気持ちを落ち着けた。
流されては終わりだ。
そうなれば、悪魔に捕まってしまう。
カルロは、聖書を握りしめながら、心の中で祈りを捧げた。
七番目のプレアティは、少年を弄び、惨殺した残忍な男だ。
キリストの復活の話を聞かされて育つ、純朴な人たちの中には、悪魔にもまた、悪い人間を復活させる力があると信じるものがおり、時おり、そんな考えに囚われる人が、こうして昔の悪人の名前を語るのだ。
しかし、今までの六人と違い、この七番目の男だけは、ジル・ド・レ男爵の地下の惨劇を正確に模倣していた。
悪魔付きの殺人には、儀式めいたサインを残したり、死体を損傷させて、相手を人ならざるものに変えようと試みる者がいる。
これらの事象については、役人を含め、一切の記録を教会は禁じていた。
ただ、悪魔を祓う祓魔師の極限られた者だけが、イエスの名において、記録することを許されている。
(フィクションですよ…)
ジルの犯罪には、彼が悪魔から聞き出したであろう、謎の紋章が少年の体に刻まれていたが、この、七番目のブレアティもまた、寸分たがわず、その紋章を被害者に刻み付けていたのだ。
「あなたが、ジルに無惨な殺人の指南をしたのではありませんか!あなたこそ、まさしくプレアティ。私は、そう思っています。」
強い意思と神の力を借りてカルロは真っ直ぐにブレアティを見た。
彼は、カルロの台詞に嬉しそうに口を歪めて、
「ああ、まさしく、私があの、歴史に残る惨劇を作り出したが、しかし、彼は悪魔になど、とり憑かれてはない。憑かれたとするなら、人間だ。彼の祖父や、彼の全てを欲しがる人間に、殺されたのさ。」
ブレアティは、懐かしいものを思い出したように、遠くを見つめる。




