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祓魔師  作者: ふりまじん
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第一話 執行の朝

この話は、レスラー先生の犯罪心理捜査官を参考に書きました。

普通のエクソシズムとは、少し違う感じになりました。


一年応援ありがとうございます。

今年は、夏ホラーでアンコールを考えていたのですが、病院ものということで、この物語とは少し設定が違いますが投稿しました。楽しんで貰えると良いのですが。


とりあえず、こちらのアンコールということで、一番に報告を。

そして、感謝を。


明け始めた町に、一人の修道僧が牢獄に向かっていた。

朝と言うにはまだ早い、ぼんやりとした光と、深夜の享楽の腐臭(ふしゅう)をまとい、町は眠りについている。

天使と悪魔が共存するひととき…これを人は逢魔が(おうまがとき)と言うのかもしれない。

石畳を踏みながら、陰鬱(いんうつ)な気持ちをかかえて、カルロは先を急いだ。

フランソワ・プレアティと名乗る破戒僧に会えるのは、これが最後のチャンスなのだ。


日が登り、正午の鐘を合図に彼は処刑されてしまう。

巧みな話術とずる賢さで、世間を(あざむ)いてきた彼だが、その悪運もこれでつきたようだ。


名前を聞いただけではピント来る人は少ないだろうが、彼は、あの、ジル・ド・レ男爵の少年殺害事件に関わった祭司にして、錬金術の指南役(アドバイザー)と言えば、(うなづ)く人も増えるのかもしれない。


とはいえ、プレアティの処刑に立ち会うのはこれが7件目だ。

良きにしても、悪きにしても、人は名の知れた人物になりたがる性質があるらしい。

観念した7人目のブレアティは、祓魔師(ふつまし)を頼んでほしいと懇願(こんがん)した。

死期が近づいて来たので、悪魔が魂を催促(さいそく)に来ているらしかった。



さて、カルロの職、祓魔師(ふつまし)とは、読んで字のごとく、魔を(はら)う師。平たく言うとエクソシストの事だ。


が、近年、同題名の映画がヒットすると、調子にのった悪魔がイタズラをかさね、中世・ルネサンス時代の素朴な印象を塗り替えてしまったのだ。(wikipediaの軽い情報で作成してますm(__)m)


本来の祓魔師(エクソシスト)とは、異教(いきょう)からの改宗(かいしゅう)に際して、今まで信奉(しんぽう)し、マインドコントロールされた精神が、改宗によって、一時的に混乱するのを落ち着かせる…

まさに、現代のカウンセラーのような存在で(多分)ある。


カルロもまた、20世紀のあの名作を見ることは無いので、意味もなく揺れるベッドや180度回転する首を持つ人間に出会ったことはない。


逃げるための技能として、異常に体が柔らかい奴や、関節(かんせつ)を自在に操れる奴、胃袋を財布がわりに物を出し入れする事の出来る人間なら、極たまに出会うことはあったが。首をまわす実用性は無いためか、そういった人物の話は聞いたことはない。



さて、門兵に挨拶をし、敬意を込めて木戸をあけてもらうと、日頃怠惰(たいだ)執行官(しっこうかん)までも朝からテキパキと動いている。


この時代、処刑は見せしめであり、娯楽(ごらく)の一部ともいえる市民の一大関心事なので、失敗は許されないのだ。

カルロは、忙しく動き回る役人から馴染(なじ)みの、体の大きな赤ら顔の男を見つけ出した。

「おはようございます。アンドレ。」

そろそろ40(しじゅう)も近くなり、体力も衰えてきたとはいえ、毎日の祈りと讃美歌(さんびか)(きた)えた声帯は、雑然とした事務所を(おごそ)かな雰囲気に凌駕(りょうが)し、人々は一瞬動きをとめた。


「お、おはようございます。カルロ様…今日は天気が(よろ)しいですね。」

アンドレは、やや緊張ぎみに帽子を取って、彼なりに上品な挨拶とやらをカルロに返した。


処刑の当日に天気がよろしいも何もないのだが、カルロは軽く微笑みを返すだけで、自分の用件を話し出した。

「罪人の懺悔を聞きに参りました。」

カルロの言葉に、アンドレは、直ぐに反応して案内をする。


二人とも勝手知ったる木戸の向こうのゴジック調の石の牢獄に、その男はいるはずだ。彼は今日の処刑を見に来る高貴な客人の為に体を洗うことと、清潔な服、そして、一番上等の牢でくつろぐことを許されていた。


アンドレは牢の前に三つ足の椅子を置いた。明かりとりの小さな窓から光がこぼれ、陰惨な人生と言う苦行をあと半日で終わらせようとする一人の破戒僧の顔に、印象的な明暗を作り出していた。


カルロは中に入るために、アンドレに鍵を開けるように頼んだが、アンドレはそれを強く拒絶した。


「そいつはダメだ。いくら祓魔師の先生だとしても、鍵を開けるわけにはいきません。アイツには悪魔がとり憑いていて、いざ、自分が自由に扱える場所に人が来たと知ると、色々なテを使って相手をなぶろうと考えるんです。新品の囚人服をカルロ様の血で汚すわけにもいきませんから。」

アンドレは、サラリと残酷な話をして、カルロを驚かせた。

プレアティは、投獄されてから既に三人の役人に怪我を負わせていた。

三人目の被害者で、首に噛みつかれた新米の少年は、アンドレの村の出身だった。噛みつかれた瞬間、おぞましいほど恍惚(こうこつ)とした表情のブレアティと、少年の悲鳴にアンドレは、確かに悪魔を見たのだった。


アイツを、プレアティを元の地獄(いばしょ)に戻るのを確認しなくてはいけない。


それは、アンドレの強い職業的使命感であった。

ちょっとしたアクシデントで、今日の処刑が中止されるような事があってはいけないのだ。


結局、カルロがおれた。

ひと騒動が終わるのを見計らって、牢の中からプレアティが音もなくカルロに近づき膝まづいた。


「あなたが…あの祓魔師のカルロさまですね。ああ、この素敵な記念日に貴方とお会いできるなんて。光栄です。」

大袈裟な立ち振舞いと、心地よい声で彼は、カルロを歓待(かんたい)した。


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