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3章 第37話 ガルタのギルド(2/2)

「わたしと一緒にコブリンの討伐をしませんか?」


「何っ! 今更ゴブリンだって。

 俺はお子様のおままごとに付き合っている暇はないんだ。

 悪いが余所を当たってくれ」


「ご、ごめんなさい。失礼しました」


「わたしと一緒にコブリンの討伐をしませんか?」


暗くになってくる星空の下で俺はマッチ売りの少女のごとく、

孤独に勧誘するも立て続けに断り続けられてしまう。


「……やっぱり世の屈強な男どもはフル装備したナイスバディになった

 俺の姿じゃないと見向きもされないのかな?」


無視やお断りが続くと気持ちがどんよりしていき、

人格を否定されているようでだんだんと自分に自身がなくなってくる。

それに反して俺の心に小さな日だまりの優しさも芽生えてくる。

今俺がしている勧誘に近い仕事であるチラシ配りのヒトを見かけたら、

ポケットテッシュ無しの広告の紙きれだけでもないがしろにしないで

紳士な態度で受け取ろうって思ってしまう俺。


何回もガルタのギルドを往復してアリルさんを尋ねても

決して首を縦に振ることなく、しまいにアリルさんから痺れを切らして

「初日の冒険はわたしが付き合ってあげるね」って言ってくれる始末である。

当然俺の真の目的はちんけなゴブリン退治ではなく、明日から始まる

奴隷オークションであるためにゴーズル家の逆恨みを買うような

危険なことはアリルさんに頼めるはずもなくて……


「かっこつけないでゴーズル家とは無縁のそうなござるのヒトを

 仲間にするべきだったのかな?」


「うんうん、でも彼には親の血の縛りに負けないで

 これからの人生を歩んで頑張って欲しいと思ってしまったからなぁ~」


俺がオヤジの束縛から止まっていていた時間を取り戻したように。


「こんな時に何でも気軽に相談できる奈緒が傍にいてくれたなら……」


あゆむはともかくどうせアンシャに相談しても「ゴーズル家で奴隷として

幸せに暮らしてくれ」って相づちを軽く打って俺のことを

見捨てるに決まっている。

アンシャが少し丸くなったおかげで熾天使様の復讐も最近は

かなり優先度が低い位置付けに変わって来たようにさえ思えてくる。

アンシャが春美を助けたいってに考えを1番に思ってくれることは

嬉しいことなんだけど……


「あれ? こんな壁に落書きってあったけかな?」


いろいろ考えて歩いていたら、変な所に迷い込んでしまった。

ガルタのギルドはお世辞ともよい立地条件では決して言えない。

メイン通りにあるドワーフのおっちゃん服屋から外れた裏路地に当たる

穴場のギルドで、みんなから愛されている隠れ家みたいな存在だ。

それため、ギルドから変な方向に1歩踏み出してしまうと

迷路のように別れ道が多く暗く狭い路地が無数にあって実に困ってしまう。


「メリアにドンザレスにそして八重参上って、みんな自己主張強すぎだって。

 親切ご丁寧にも電話番号みたいな数字までも書いてあるよ。

 どう考えても個人情報のダダ漏れだって」


壁に書かれている文字に俺は1人でツッコミを入れていると。


「お嬢ちゃん、独り言とは寂しいねぇ。

 俺たちがきみの仲間になってあげるよ。

 困った時はお互い様だってな。なあ、みんな」


3人組の獣人がのそのそと俺の後ろから現れて話しかけてくる。

牛男に豚男に鳥男と精肉屋トリオ満載の豪華ミックス盛りのメンバーである。


「匂い探知は俺に任せてくれ、ブヒ」


「なら俺は目でどんな遠くの物でも見つけるぞ」


どうやらスーパーに売っている値段のように牛男がリーダーで続いて

豚男に鳥男のような順番の上下関係のみたい。

コブリンを討伐するメンバーを探す俺の勇士の姿を影ながら

見守っていて、それでついに心配なって俺に声をかけてくれたのかな?


「ありがとう、みんな。それでゴブリンを討伐するのに武器を

 買うお金が必要だよね。そのお金を調達するにわたしに名案があるんだけど。

 ……あれ? ちょっと待っててね」


俺自身が奴隷オークションの商品になるから俺を競り落とそうとしている

メリナス・ゴーズルの魔の手から俺を守ってくれって??

あれ、あれ? そうすると精肉屋トリオが俺を高値で落札しても

そのお金って俺のふところには一円も入ってこないような……

かりそめの翼はどうして買えばいいの?

それに精肉屋トリオがゴーズル家に恨まれるだけで

デメリットしかないような気がするんだけど?

俺だけで考えていたこともあり、完全にどつぼにはまってしまった。


「ごめん、ごめん。今の話は忘れてくれる?

 君たちはゴーズル家に一泡吹かせたくないかな?」


気持ちが先走り過ぎて少しパニックになりながらも

俺は話の論点をすり替えていく。

恨みを晴らすならお金もことも関係ないと思った俺の浅はかな知恵である。


「わたしと一緒にゴーズル家の悪の手からこの町の平和を取り戻そうよ」


変な宗教の勧誘のように俺は精肉屋トリオに教えを説く。


「このガキは俺たちに油断しているぞ。

 今だ、直ぐにガキを取り押さえろっ」


俺の気持ちとは裏腹に無情な牛男の大声が裏路地に響く。


「……はい? 何するんだよ、お前らっやめてくれって!」


俺の考えは甘かった。最近の神月家お兄さんたちやドワーフのおっさんに

ガルタのギルドのアリルさんといいヒトと巡り会って、ヒトを疑って掛かる

感覚が鈍っていたかもしれない。強引に豚と鳥に手足を押さえつけられる俺。


「クソ、離せったら離せよっ。

 ゴーズル家の悪口を言ったことは謝るからさっ……」


体を左右に振り、精肉屋トリオに抗う俺。


「おい、暴れるなって。

 おとなしく俺たちの言うことを聞いていたら、命までは奪わねぇよ」


俺の喉元にナイフをちらつかせる牛男。

豚男は牛男のどさくさにまぎれて俺の胸元に顔を近づけて鼻をヒクヒクさせる。


「クンクン、クンクン」


「どこを匂っているんだ、やめろって変態っ」


「ブヒブヒ……アニキ、こいつメスですぜ。

 体中から甘酸っぱい良い香りが漂ってきますぜブヒ」


「やっぱりブンタの鼻は頼りになるぜ。

 でも最近、人間界には男娘って新しい人種がいるって聞いているからな」


「しかしブンタよ。体臭は香水で何とでも隠せる世の中なんだ。

 やっぱりここは服を脱がせないと完全に性別何か分からないよなっ」


ビリビリビリッ……


「いやぁーーーー」


牛男の腕力で無理やりに俺の着ていた魔女っ子絵柄のTシャツが破かれる。

俺の胸を守ってくれる物は薄い布きれ一枚しか残されていない。


「このガキ、胸もないクセにいっちょ前に気取ってブラを付けてやがるって。

 これはもしかしたら男かもしれないな」


「……俺は女だよ。

 お願い……もう、これ以上は酷い真似はしないでくれ」


ターミネイト・ブースト、オンの自己暗示の力を使えば

この危機的状況から簡単に逃げられるかもしれない。

でもその力を使ってしまえば……代償として俺の体から血しぶきが飛び

春美を助けるために参加する奴隷オークションにエントリーすることすら

できない体になるかもしれない。

今はアンシャ(レオエル)が傍にいないから治癒力を高める謎の効果に

すがることもできない。

ごめんよ、奈緒。俺はこいつらに体を汚されるかもしれない。

俺はただ無力で女の子のように相手に泣き叫ぶことしかできないのか?

全てに絶望して心が折れかけてきたその時だった。


「奈緒殿、これは奈緒殿ではござらんか?」


ガルタのギルドで出会った聞き覚えがある声が聞こえる。


「奈緒殿はさっそく仲間を見つけ申して、しかも獣人殿とその……

 裸の付き合いまでされているとは? 

 それがしには到底真似できないでござるよ」


「はい? 何を勘違いしているんだ、早く逃げて、ござるのヒト……」


これ以上は誰も巻き込みたくない。

それが今の俺にできる精一杯のやれることだ。


「逃げる? とんずらでござるか?

 それがしも奈緒殿の恥ずかしい姿を見るのはちょうど悪いと

 思っていたでござるよ。では失礼したでござる」


そう言ってござるのヒトは俺たちにお辞儀して立ち去ろうとすると。


「おい、もう話は終わったかい? そこのお兄さん」


牛男が口を開いて、ござるのヒトを引き止める。


「わたしに関わらないで……行って、ござるのヒト」


「うるさいガキだな、これでも咥えておとなしくしとけって」


牛男は落ちていた破れた俺の服の切れ端を拾い上げ、

強引に俺の口に放り込む。


「うぐぅぅ……」


喉の奥に突っ込みやがって、息が苦しい……


「これでお前さんと落ち着いて交渉ができるな。

 あり金を全て出してくれたら、この女の体を好きなだけ触らせてやるよ。

 どうせお前もこの女の体が目当てでここに来たんだろっ」


俺の良心もお構いなしに俺のスカートをめくりあげる牛男。

太ももの付け根から美少女戦記スクール・サンのパンツが

ひょっこりと姿を現す。何もかも終わった……

乙女である恥ずかしさや無力である歯がゆさが入り混じって

俺の頭の中が一瞬で真白になっていく。


「何と破廉恥な真似をするでござるか?

 それがしはただ奈緒殿を見かけたので最後のお別れの挨拶をしようと

 思ったしだいでござるよ」


「アニキ、俺はまだこの女の手しか触ってないブヒ」


「俺なんか女の足だけだぞ、満足を言うな。ブンタ」


「まあ2人も落ち着けや、女の体は減るじゃないんだし夜までこのガキを

 十分に可愛がってそれからオークションに出して金に変えようや」


「お兄さんも何も恥ずかしがらずに遠慮しないで、

 このガキの体を触ってもいいんだぜ。

 このことは俺たちだけの秘密にしておいてやるからさ、お兄さん」


牛男のいやらしい言葉に背筋がだんだんと凍っていく俺。


「それがしはお兄さんではなく……」


「クンクン、アニキこいつからも甘い女の香りが匂いますぜ」


「けぇ、道理で女の肌を見ても興奮しないわけだ。

 お前もこのガキと一緒に存分に遊んだ後でオークションで

 売りさばいてやるよ。覚悟しとけよ、このござるやろう」


「奈緒殿には元気な赤子を産んで下されって申して立ち去ろうと思ったが、

 それはどうやらそれがしの早とちりであったようでござるな。

 この悪党ども奈緒殿からその薄汚れた手をどけるでござるよ」


牛男がござるのヒトにナイフを向けるとござるのヒトは軽やかに

ジャンプして間合い取る。

足を大きく開き、ふところから短刀を取り出し逆手に刃を構える

ござるのヒト。


「ブンタにトリントン。この女はお前たちの自由にしても構わんぞ。

 とっととやっちまえ」


「ブヒィーーーー……」


牛男の言葉に大きな鼻息で返事して俺の手と足を押さえつけていた

豚男と鳥男が一斉に離れてござるのヒトに突進していく。


「この女は俺がやるんだブヒ、トリントン~」


「待て、ブンタ。抜け駆けは揺るさんぞ。

 機動力は俺の方が上なんだからな」


「ござるのヒト、俺に構わず逃げてぇーーーー」


俺の叫びもむなしく、ござるのヒトに襲いかかる豚男と鳥男。

豚男が4足になって大地を、鳥男が空を駆け巡る。


「さすがに豚殿よりも空を飛ぶ鳥殿の方が早いでござるな」


「これでも食らえっ ござる娘!」


鳥男が自らの羽を飛ばしての先制攻撃。


「鳥殿は空を飛ぶために両親からもらった大事な羽を無下にするなど

 笑止千万でござる」


さぁ、さぁ……


戦国の鎧を着て重いはずなのにバク転して優雅に飛んできた羽を

かわすござるのヒト。


「バカめ、俺の羽は自分の意思で自由にコントロール出来るんだよ」


どこかに飛んでいった羽がブーメランのように渦を描いて

ござるのヒトへと舞い戻っていく。


「防御してござるのヒト、鳥男の羽は機関戦記ダイタンの無線で飛ばした

 小型端末から全方位攻撃する兵器と同じなんだよ。気をつけてっ」


「機関戦記ダイタンって何でござるか?」


律儀にわざわざ俺の方を振り返って聞き返すござるのヒト。


しまった、都市伝説になったアニメをまだ見ていないヒトが

この世に存在していたとは? 

機関戦記ダイタンって地方放送で全国放送じゃなかったのか?

そう言えば奈緒も見てなかったけ?

機関戦記ダイタンは女受けはしていなかったのかな?

俺の与えた余計な情報がござるのヒトの動きを止めてしまう。


「何事でござるか? きゃぁぁあーーーーーーー」


「ごめんさないっーーー、ござるのヒト」


鳥男の放った羽がござるのヒトの被っている忍者頭巾に無数に襲いかかる。

勢いついた羽は時に刃となり、忍者頭巾を切り裂いていく。


「おい、おい大事な商品の顔に傷を付けていないだろうな?」


「アニキ、俺のバードアイをなめて貰っては困る。

 女の服を脱がす手順と同じで優しく顔には攻撃しているぜ。

 そろそろ覆面のした女の顔が拝めるな」


破れてボロボロになった忍者頭巾を握りしめる人影。


「……よくも、貴様ら……亡き母上から受け継いだ忍者頭巾をっ」


後ろ髪を縛り、なびく黒い髪はちょんまげをイメージさせている

ポーテールである。もちろん武士の男のようにそり込みなどは入っていなく

美しいきらめく腰まで届く長い髪。怒っているので当然今はつり目に

なっているが顔を隠すのはもったいない程の整った顔の美少女だった。


「これは絶品の美少女だブ~ ブヒブヒィーーーン」


足を止めて様子を伺っていた豚男が鼻息して荒くして

猪のごとく突進してそのままござるのヒトを押し倒す。


「不意打ちとは卑怯でござるよ。

 それがしは鳥殿との一騎打ちを……」


「ブヒ、ブヒ、ペロペロ~」


ござるのヒトの言葉を完全に無視して顔面をなめ回す豚男。

豚男の唾液がござるのヒトの顔にまとわりついて何だかいやらしい。


「やめるで、ござる、やめるで、ござる」


「俺にもその……かわいい女の顔をなめされろや」


鳥男もおこぼれに預かろうとござるのヒトに千鳥足で向かう。


「奈緒殿っーーー、目を瞑るでござるぅーーー

 これでも食らうで、ござる」


「ブヒ?」


「うん? なんだと?」


突如もくもくと白い煙が出現して、ござるのヒトを含め

豚男に鳥男の姿が瞬時に見えなっていく。


「はぐぅ……ブヒィ~」


白い煙の中で聞こえる来る豚男の悲鳴。


「どうしたんだ? ブンタっーーー」


煙が晴れていくと白目を向いて口から泡を出して気絶した豚男。

戸惑いの鳥男をよそに豚男の巨漢の体からゆっくりと

這い出てくるござるのヒト。


「安心するでござる鳥殿。お腹に麻酔針を刺しただけでござる」


「ふぅ、驚かせやがってこの女がっ」


キィーーーーン!


ござるのヒトは鳥男の長い爪を小さい刀で受け止める。


「ごめんでござる、鳥殿」


「ぐけぇーー」


長い爪を受け止めた反動を利用して右に回転して手刀で

一気に鳥男を黙らせるござるのヒト。

鳥男は意識を失ってそのまま地面に落ちていく。


「大丈夫でござるか? 奈緒殿ぉーー」


心配して俺の方を振り向くござるのヒト。


「おーとござる娘、俺のことを忘れるなよ。

 少しでも抵抗するなら奈緒って女を殺すぞ」


俺はござるのヒトの素顔に見とれてしまい牛男の動きを完全に

見失っていた。逃げるチャンスもあったはずだのに俺はまた

牛男に喉元に刃物を向けられる。


「もう、わたしに構わず精肉トリオのボスをやっけてくれっーーーー」


春美、アキエルそして奈緒悪い。

俺のこと思ってくれているヒトを巻き込んでまで、俺は生き恥をさらして

生きていく度胸は残念ながら持ち合わせていないんだ。


「これでいいでござるか? 牛殿」


カチャリ……


地面に刀と短刀を落とすござるのヒト。


「実に良い心がけだ。でもお前はその鎧から奇妙な道具を出していたからな。

 その奇妙な鎧を脱ぎ捨ててそこで全裸になれよ。

 そうしないとござる娘の言葉はとても信用できないんだよ」


「……牛殿には見せれるほどの体には自身はないのでござるが……」


牛男の言うがままに戦国鎧を脱いでいくござるのヒト。


「なんで、俺のためにそこまでするんだよ。お前はとは他人で、俺はお前を

 仲間にすることを断った意地悪な女なのにさぁ……」


「……奈緒殿それがしは……」


「楽しいストリップショーの始まりなのに水を差すんじゃねぇ。

 それに誰が精肉トリオのボスだって? おチビの奈緒ちゃん」


ドスッ……


「……ぐうぅ」


牛男にお腹を殴られる俺。


「奈緒殿に暴力はやめるでござる」


「ござる娘がちんたら服を脱ぎのに時間がかかっているのが悪いんだよ」


「それがしが悪いでござるか? 急ぐでござるよ」


ござるのヒトは鎧の下に着ている鎖かたびらを脱いでいくと

潰れていた胸が一気に飛び出して女性らしいフォルムになっていく。

背中には灰色の小さい翼が生えていた。


「あんな重いものを着てあの軽やかさとは、驚くぜ。

 奈緒と違って揉みごたえのあるでかい胸じゃねぇか?

 それにしても汚い翼だな、ちゃんと風呂で洗っているのか?」


ござるのヒトの翼よりも豊満である胸に意識が集中してしまう。

俺がフル矯正してナイスバディになった胸よりもござるのヒトの

大きい胸って言うのは女としては少し嫉妬してしまうかもしれない。


「羽1枚1枚意識して丁寧に洗っているでござるよ。

 でも元々の生まれつきの色で故に……

 だから、殿方に肌を見せるのは嫌だったでござる」


「くくく、減らず口をしゃべる暇があるなら早く脱げ。

 あの胸に巻いている包帯を取ったら、ようやくおっぱい様とのご対面か?」


尻尾を上下に振り、よだれを垂らす牛男。もうおっぱいに夢中である。

ござるのヒトが胸に巻いている包帯に手をかけると……


バキューーーーン!!

突然、路地裏に鳴り響く銃声。


「何事でござるっ」


「あぁぁ一目でいい、あの女のおっぱいが見たかった……」


無念そうでかっこ悪い言葉を言い残して倒れていく牛男。

俺には一瞬で何が起こったのかも分からなかった。


「牛男は気絶したのか?」


牛男には血が飛び散った形跡はなく、どうやら強制的に寝させられたみたい。


「大丈夫だった? 奈緒ちゃん」


ガルタのギルドでお世話なったフリフリフリル姿のエルフの人影に

銃を構えているトカゲの姿。


「アリルさんにスニゲスさん」


「わしもいるぞ」


「タートスの爺さんまで……」


アリルさんとスニゲスさんに続きタートスの爺さんの顔が

ひょっこりと姿を現す。


「わしはあのござる娘が生乳を出してからでも遅くはないんじゃないかって

 せんぞこやつらを説得していたんじゃが無理だったんだ。

 すまぬのぅ。奈緒ちゃん」


「そんなことで……助けに来るのが遅れたのかよっ

 この、ひっぱたくぞ! このエロじじい」


「ひぃーーー」


俺が感情を抑えきれずに拳を天高くかざすと

甲羅に中に頭を引っ込めるタートスの爺さん。


「奈緒ちゃん、怒る気持ちは分かるけど落ち着いて聞いてね。

 タートスさんの神通力のおかげでこの場所が分かったんだよ」


「そうだったの? ごめんよ、タートスの爺さん」


「いいんじゃ、あのござる娘とそのまま抱きついてくれれば

 わしは……わしはそれで本望じゃからのぅ」


「またふざけたことを抜かすなよエロじじいって……

 そう言えばござるのヒトは?」


俺はキョロキョロと辺りを見渡すと俺たちに悲しそうに背を向けて、

ござるのヒトは別方向の通り口から姿を消そうとしている。


「待ってくれ、ござるのヒト。お礼がまだ……」


「奈緒を殿には本当に信頼して下さる仲間がいて幸せ者でござるな。

 それがしには生涯を孤独で生きるのが定めだと父上に言われたので

 故に友達などいないでござるよ」


俺の言葉に振り返らず、そして足を止めないで返事するござるのヒト。


「お達者でござる奈緒殿」


「また死んだ父のことか? 1から考え直すんじゃなかったのか?」


「……だからそれがしは山にこもって修行してさとりをひらいて

 一人前の女性になるためにまた出直して来るでござるよ」


「それって何年かかるんだよ、もうわたしはござるのヒトを友達だと

 勝手に俺は思っている。だから修行にいかないで欲しい。

 友達ではない俺の言葉ではやっぱりダメなのかな?」


「奈緒殿それがしは……」


ござるのヒトの歩くスピードがスローになっていく。


「わたしもその子と友達になっていい?」


「アリル殿まで」


「なら、わしはお前さんの夫になってやるぞ」


「ないおぅ、くそじいい。俺が目を付けたいたんだぞ。

 俺の許可なしで勝手に俺の女に告白しているんじゃねぇ」


「タートス殿、スニゲス殿まで、うぅぅ……

 とてもありがたすぎて、かたづけないでござるよ」


「それで名前は何かな? ござるのヒトでは女の子には

 余りにも失礼だよね」


「それがしの名前は八重・レオンハイム・リータでござるよ」


俺たちに振り向いて、赤くなった涙目を手で押さえながら

口を開く八重。

やっぱり女の子には悲しい顔よりも1番笑顔が似合っている。


「もしかしてこの壁に八重参上って、八重本人が書いたの?」


ふっと疑問に思って俺は壁のラクガキに指を差すと。


「ここは名乗りを上がる壁ではなかったのでござるか?」


ちんぷんかんぷんした表情になる八重。


「なら、わたしも八重に続いてお邪魔して名乗りを上げるよ」


近くの石を拾って俺は壁に書いている八重の横に奈緒参上って

拾った石を使い書いていく。


「なら、わたしも書くね」


「なら俺もだ」


「わしの名前も書くぞ」


八重の文字を中心にアリルさん、スニゲスさんそしてタートスの爺さんと

名前が続いていく。


「もう、それがしは死んでも構わないかもしれないでござる」


「まだ死ぬのは早いって、八重っ」


「そうだよ、八重ちゃん」


俺とアリルさんの励ましの言葉を余所にタートスの爺さんは。


「これはおまけじゃ」


俺と八重の真ん中に相合い傘を堂々と描くタートスの爺さん。


「タートスの爺さん、そんなイタズラ書きはやめてくれよ」


「ワシの家の敷地の壁にワシが書いているじゃ。

 つべこべと文句を言うでないのぅ、奈緒ちゃん」


「エロじじいのもち壁だったの?」


「そうじゃ、由緒正しきタートス家代々受け継がれた壁で

 ワシの遠いご先祖様であるガメラ様から続いて……


「奈緒殿? このハートの傘マークって、何の意味でござるか?

 まだこの場所に雨は降ってござらんが?」


タートスの爺さんの長話を遮り俺たちに疑問をぶつけてくる八重。


「それの意味は……アリルさん? どう八重に伝えたらいいのかな?」


「ちょっと奈緒ちゃん、わたしに振らないでよ。

 わたしも恥ずかしいのに」


俺とアリルさんは2人揃ってもじもじしてしまう。


「お前たちはこの傘の意味も知らないのか?

 これは相合い傘と言って、カップル同士がいちゃラブするための

 記号だよ。やるねぇカメの爺さんもこの百合好きがっ」


「そうじゃ、スニゲスの言う通りもう奈緒ちゃんと八重ちゃんは

 相思相愛カップルの証じゃ。

 わしはもう歳じゃからのぅ、奈緒ちゃんのことを任したぞ八重ちゃん」


「友達を通り越して、それがしと奈緒殿は愛人でござるか?」


「あ~あ、わたしの奈緒ちゃんは八重ちゃんに取られちゃったな?

 奈緒ちゃんのことは任せたわよ、八重ちゃん」


「アリルさんまで何を言っているの?

 それ、全然フォローになっていないって」


「それがしには……まだ奈緒殿との体の関係はまだ早すぎるでござるよ。

 ふーぅ」


顔を真っ赤にして見えない水蒸気が昇って

一気に沸点が上がったように立ちくらみする八重。


「大丈夫か? 八重」


俺はさっと倒れる八重を抱きかかえる。


「大丈夫? 八重ちゃん」


「俺も肩を貸すぜ、奈緒」


「ありがとう、スニゲスさん」


「今が絶好の好機じゃ、奈緒ちゃん。

 今すぐに八重ちゃんを押し倒すんじゃ」


シーーン。


タートスの爺さんの真剣な言葉にみんなドン引きするのであった。

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