3章 第34話 初めてのオシャレ
「おぉーー、猫さんにトカゲさんにすごーく大きいヒトまでいるよ」
あゆむのテンションが車のギアを変えるようにだんだんと上がっていく。
おでこに手を当てて辺りを見渡していたポーズからチェンジして
その場に元気よく飛び跳ねるあゆむ。
俺も初めてニュートラルのうわさを聞きつけて訪れた時はアニメやゲームの
空想の描いた世界にダイブして異世界に入り込んだような気持ちで寝るまで
興奮していたことを覚えている。あゆむもそれに近い感じなのかもしれない。
「しかしこのニュートラルの街並みは何一つも変わらないなぁ」
異文化をたくさん取り入れているニュートラルはお世辞には
綺麗な国とはいえない。
街並みの統一感がなく個性豊かな家やお店が主人の気まぐれのように
建てられている。魚人族は鱗を定期的に水に濡らさないといけないので、
必然的に池が多い住宅になってしまう。
巨人族が住む家は天井がやけに高く小人の家はミニチュアのように小さい。
とにかく住人の種族の個性が際立って優先しているのが
ニュートラルの特徴である。
「お前がすることは分かっているな? レオエル」
俺に同意を求めてくるアンシャの力強い言葉。
「……ああ、分かっている。俺がオークションに出品されて春美を
助け出してついでに俺を売ったお金でかりそめの翼を
手に入れるって話だろ」
明後日だとオークションの開催する時期にも近い。
春美を誘拐したヤツらもオークションのために人間を
誘拐した思えば理にかなっている。
「そのミジンコ並みの小さい脳でよくボクの考えていることが分かったな。
あの犬の獣人に頭を撫でられたのが、功を奏したんだろうか?」
「いや待てよ、あいつに腹パンされて外れたネジが見事には
まったんじゃないのか?」
「アンシャ、褒める時は素直に褒めてもいいんだぞ。
それともわたしにハグをして欲しいのかな?」
俺は慈愛なる冗談の心で両手を広げると……
「このつけ上がるな、レオエル」
ごつん。
「きゃあっ、大事な商品になる顔なのに何するんだよっ。
それに女の顔は攻撃するなって俺は何度もアンシャに言ったよなぁ」
「少しぐらい変形した方が変わり者に高く売れると思ってな」
「なるわけないだろっ……うぅ……少しは手加減してくれよ……痛てて」
両手で後頭部を押さえて地面にしゃがみ込む俺。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんはまたケンカしてほんと仲がいいね~。
ボクはちょっぴりうらやましいよ」
あゆむの聞き慣れない言葉が聞こえてきたので俺は……
「よくないって」
「よくない」
俺とアンシャの言葉が1秒の誤差もなくハモった。
「やっぱりお兄ちゃんたちはなかよしだぁ~ わぁーい」
「あゆむ、レオエルとはなかよしではなくて僕の下僕だよ。
そこのところを間違えないでくれ」
「……誰がアンシャの下僕だよっ」
「ボクとお姉ちゃんはお兄ちゃんの下僕~、るんららん~」
にこにこ笑うあゆむを見ているのがだんだんと苦しくなってきた俺は
立ち上がり、アンシャとあゆむから距離を開けて少しでも
自然を装うながら2人の前をさきさきと歩いて行く。
俺とアンシャとは先延ばししているだけでいつかは戦うことが
宿命付けされているんだ。アンシャにこれ以上深追いすると非情に
戦いにくくなってしまう。その気持ちが成長していくのが怖いんだ。
「俺の服よりも先にあゆむのパンツを買おうな?
濡れていて気色悪いだろう?」
俺はあゆむのお漏らしの話題にすり替える。
あゆむのズボンはおしっこでベタベタになっているのもかわいそうだし、
何よりもズボンに皮膚がぺたりと張り付いてとても動き憎そうだからでもある。
「……ボクは漏らしていないもん。
パンツに漏らすのはいつもお姉ちゃんでしょ?」
「あゆむお前なぁ……」
俺の言葉がきつかったんだろうか?
赤面してだんだん涙ぐんでくるあゆむ。
「漏らすのはレオエルお前の役目でいいだろう?
そのビジュアルにぴったり当てはまるんだ。
そのおチビちゃんの長所をこんな時に生かさないでどうするんだ?」
年頃の男の子に恥をかかせるなってばかりのアンシャの言葉に俺は……
「実はわたし、あの門番の獣人にびびってチビってしまったんだ。
パンツが濡れていて恥ずかしいから早く服屋に行こう」
「やったぁーーー……ボクと一緒でお姉ちゃんもお漏らしさんだぁーーー」
「やれやれ、まったくお子様たちは……」
仲間を見つけたあゆむは表情が一気に明るくなっていく。
あゆむのトラウマになることを避けるために俺はお漏らしキャラになった。
ごめん、奈緒。お前の体なのに変な属性が確定してしまって……
あゆむの保護者もとい親のように子供を育てるってことは
予想していた以上に難しいと痛感する一面であった。
俺たちはこの後、あゆむのパンツと俺の付加価値を上げる服を
売っているところをいろいろと転々として回った。
しかしどこの店も無残に服のサイズのことで惨敗して。
「……やっぱり、結局のところはこの店にたどり着くのか?」
チャイルド服(人間)の専門のデカデカとした看板。
俺は大人の女性の魅力あるファッションを強く要望したが
だぶだぶで大きすぎて無理と言う悲しい結論に出て現在に至る。
「お前が色気のある大人服が着たいと言って僕たちを連れ回してくれて
あげくにこの店か? おチビちゃんの頭でも無計画にも程があるぞ」
紫かかった雲も黒味がかかってきている。
この店で早く商品を決めて、次に泊まる場所を探さないと……
「ちんちくりんのレオエルのファッションショーにも突き合わる
僕たちの身を考えて見ろよ」
「それは仕方ないだろう。俺には女の子の服のことはよく分からないし、
どれも同じように見えて可愛く見えるんだから。
なら、アンシャが俺に似合う服を選んでくれよ~」
「僕にも女性の服のことなんか分からない。いっそお前の好きな裸体で
オークションに出品させたらどうだ? お金もかからないし、
物好きな変態な紳士が高く落札してくれるかもしれないぞ?」
「はいそうですかって、そんな痴女みたいなこと俺にできるわけないだろう?
それにこの体は俺1人のものじゃないんだ」
そんな破廉恥極まりない真似をしたら、俺と奈緒との築き上げてきた
関係が瞬時に終わってしまう。
俺は女性の裸を見るの好きだけどヒトにジロジロと見られるのは嫌なんだ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。立ち話していないで早くお店に来てよ~。
たくさんのかわいい服がいっぱいあってどれも目移りしちゃうよぉ~」
あゆむの元気な声がチャイルド服の専門店の中から聞こえてくる。
「俺の服のことよりも先にあゆむのパンツを買ってあげようか?」
「そうだな、レオエルの服よりも優先順位は確実に上だな」
「……うん、それは俺も納得の答えだ」
俺とアンシャは一時休戦してチャイルド服の専門の中に入っていく。
店内は煌びやかに飾る幼女の服がハンガーにかかっている。
今は絶滅危惧種に認定させた紺色のブルマや忍び装束に西洋の鎧など
バリエーションが豊富過ぎてタイムスリップしてしまった感覚が俺を襲う。
湯と書かれたのれんまで場違いにも服屋にあった。
服を購入したら温泉に入れるサービスでもあるんだろうか?
「それよりあゆむはどこに行ったんだろう? 2階かな?」
お店の中には大黒柱もかねてだと思うけど
螺旋した階段が中央にあった。
「お嬢ちゃん、どんな服をお探しかのぅ?」
俺がきょろきょろとあゆむを探しているとドワーフぽい白髪の長い眉が
特徴の鉄兜を被った背の低いおっさんが尋ねてくる。
「オークションで出来るだけ高額で落札できるように
わたしを着飾る服が欲しいんだけどあるかな?」
俺は複数のお店をハシゴして疲れていたんだろうか?
直球ストレートでドワーフのおっさんに思いを伝えた。
だけどドワーフのおっさんは俺の発言が気にくわなかったのか?
血相を変えて顔が赤くなり……
「さては? 一発逆転の玉の輿を狙っておるんじゃな、淫乱小娘めっ。
どうせカネもなくて服を恵んで貰おうとここに来たんだろう。
この冷やかしがっ……とっととわしの店から出ていけっ!」
はたきで俺をポンポンと叩くドワーフのおっさん。
はたきについていたホコリが空に舞い散る。
「ごほ、ごほ、お客さんに向かってその態度は
さすがに酷いんじゃないかな?」
「客なら客で買うって言うのが筋ってもんだろうがっ!
見物ならよその店でするんじゃなっ」
「……だから俺は服を買いにきたんだってっ」
「また口から出任せを言いおって。
お前みたいな悪ガキにわしは何度も騙されたんじゃ!」
俺の言葉に耳を傾けないドワーフのおっさん。
万引き被害に店の経営が圧迫させているのだろうか?
「どうしたんだ? レオエル。お前はおじさんキラーでどんな中年の男なら
誰でもいちころに落とせるんじゃなかったのか?」
アンシャがのそのそと俺の後ろから現れる。
「……誰がそんな根も葉もないうわさをしているんだよ。
今はそんなことより、高みの見物しないで助けてくれよ~ アンシャ」
「ふん、追い詰めたぞ、クソガキっ」
「もう来た? あのおっさん」
ドワーフのおっさんに店の角に追い詰められ、逃げ場を失う俺。
「話せば分かり合えるって、もっとお客さんを大事に扱おうって……」
「また減らず口を。おとなしくお縄につくんじゃ」
「だからわたしは客だってっ、少しは聞いてよおっさん」
「また寝ぼけたことを抜かしよって、このクソガキがっ」
ジャラジャラ、チャリーーン……
「……ふん、何事だのぅ?」
金属の落ちる音の鳴る方へ振り返るドワーフのおっさん。
床には金貨が複数枚ころころとあちこちに転がっていく。
「服屋のおやじ、これだけお金はある。
そこのびびっているおチビちゃんをできるだけ綺麗にしてやってくれ。
僕には女の服を選ぶセンスは残念ながら持ち合わせていないんだ」
「アンシャ、お前は……」
「勘違いするなよ、レオエル。
お前が高く売れないとかりそめの翼が手に入らないんだ。
それに春美のこともある」
「まいどおおきに、お兄さん。
お嬢ちゃんもお客さんなら最初から言ってくれば良かったのに」
大阪弁? お金があると分かると態度が急変するドワーフのおっさん。
どこの世界もお金には弱いらしい。
「わたしは何度も客だって言ったんだけどね」
「それはすまんかった、最近耳が遠くてのぅ。
どれパットをサービスするから機嫌を直しておくれ」
絶対ウソだろっ、俺をゴキブリのように血眼になって
追いかけて来たクセに。
ドワーフのおっさんはその後、申し訳なさそうに店に展示していた
お椀型のジェルパットを俺に手渡してくれた。
ごくり、でもこれで小ぶりの奈緒の胸でも谷間が作れるんじゃ……
「ちょっと試着したいんだけどで着替えるロッカーはあるかな?」
もう俺はドワーフのおっさんの態度などどうでもいいやって
気持ちになってしまった。おっぱいが持つ魅惑の魔力には誰もが勝てない。
特に男は効果倍増で特攻である。
「そこに湯って書いているのれんがあるじゃろう? あの中じゃ」
ドワーフのおっさんが指さす方向に手作り感満載の木でできた
湯と書かれたのれんが掛かった個室があった。
服を着替える場所の意味ではのれんの使い方は間違っていないんだけど。
しかしグラビアモデルお姉さんに俺が近づく日が来ようとは……
巨乳バンサイってハイテンションになって試着室に駆けていく俺。
試着室の中は勘違いされた日本文化が試着室の中には広がっていた。
「やっぱり温泉のサービスまではさすがにないよな」
クマが鮭を咥えている彫り物が飾っているが、まあ許容範囲だろう。
だるまに信楽焼のたぬきに見守られながら、壁に付けられている
大きな鏡の前で服を脱いでいく俺。
「あぁ~、生暖かいゼリーに胸がくっっけた感触がまた気色悪い。
でも色気漂う女性になるための辛抱だ」
胸元のお肉以外にいろいろなお肉を掻き集めて俺は
胸の谷間を作ろうとする。
奈緒の体はやせ形なのでお肉を集めるのも一苦労である。
「寄せて上げてバストアップ~」
俺は魔法の言葉を念じ、ブラジャーを付けてパットを固定するが
パットがどうしてもブラジャーからはみ出てしまう。
「これは見栄えが悪すぎて、余りにも悲し過ぎる」
仕方なく俺はのろんから顔をだけを覗かせて。
「ブラジャーからジェルパットがはみ出るからワンサイズアップの
ブラジャーも買うからね?」
隠し球であるパットがバレるのはカツラのおじさんが汗でずれて
薄い地毛が見えると同じぐらい恥ずかしいことだ。
「了解した。用意しておくから次はこれをつけてみろ。
店の主のおすすめの商品だ」
「何これ? オシャレな腹巻き?」
黒いメッシュのきいた腹巻きを俺に渡してくるアンシャ。
「俺は別に冷え症じゃないんだけど……」
「これはコルセットと言って寸胴体型にくびれを作ってくれる
淑女がたしなむアイテムだそうだ。さあ、つべこべ言わず
これも付けるんだ」
このコルセットを付ければぼっきゅんぼん大人の女性に
また1歩近くんじゃ……
ごくり…… 俺の生唾を飲む回数が止まらない。
「後はお尻の肉をボリュームさせるパンツに厚底ハイヒールで
身長を補強しよう。それとこれもこれも店の主のお墨付きで
魅力ある女性には必見のアイテムらしい?」
あの頭の硬いアンシャがドワーフのおっさんの指示に従っているだろうか?
女の子の服にはそうとうアンシャも疎いみたい。
「分かったよ、みんなまとめて付けたらいいんだろう?」
そう言って俺はアンシャからカゴに入った衣類を強引にかっさらうと
カメのごとく頭を更衣室に引っ込めた。
「うぉぉー……お尻がしまるって……お腹が苦しくて
泣きたくなってくる」
オシャレってこんな辛いものだった何て……
俺が人間の男の時はかわいいなって時より鼻を伸ばして女性を
見ていたことがあるけどこの美への追究する努力は凄すぎる。
「あのパットに合わせたブラジャーだ。さあ受け取れ、レオエル」
のれんからアンシャの手が出てくる。俺に気を遣ってくれているんだろうか?
アンシャものれんを全快にまくり上げて入ってくる真似はしてこなかった。
「ありがとう、アンシャ」
アンシャから無地な白いブラジャーを受け取る俺。
どうやら見えないところまではお金をかけないのドワーフのおっさんの
ポリシーらしい。
「また胸を大きくするために他のお肉の救援を求める作業を
しないと……俺の胸にお肉を分けてくれっ」
俺は背肉や脇の下のお肉たちを総動員してボリューアップの力を借りる。
「またもや寄せて上げてバストアップだ。
後はピンク花柄のスリムなショートのワンピースを着て、
ハイヒールも履かないといけないってやることがいちいち多いなぁ」
「それに化粧まで女の子ってするんだよな。1、2回なら楽しくできるけど
毎日になると少々面倒くさいかも?」
「素人が化粧をするとヤマンバみたいになりそうなので
カゴに入っていたつけまつげをぐらいして目力アップのしないと
男どもに注目もされないよなぁ」
そしてだんだんとシェープアップしてみるみるうちに凹凸がある
完全体なっていく俺。それに伴い圧迫感が半端なく苦しい。
俺はゆっくりと顔を上げて鏡に映る全身を見てみると。
「うーむ、体だけは完全に発育のいいお姉さんになっている?」
奈緒の童顔な顔と体のギャップが浮き世離れしていて
何だか少し笑えてくるけどこれで本当にいいのかな?
もう自分自身ではよく分からなくなってきた。
俺はお姉さんになったこともあり、更衣室からおしとやかな立ち
振る舞いで出ていく。
やっぱり服に中身を合わせていかないとダメな気がする。
「アンシャ、どうかな? 似合っているかな?」
この女性らしいミニスカートは何だかとても恥じらいがあって
表舞台に出るのにはとても勇気がいる。
初めて路上で女の子デビューした初々しい感覚がまるで蘇ってくるみたい。
とてもミニスカートはパンツが見えそうで恥ずかしい。
「この小屋には肉体整形技師の小人が隠れ住んでいたとは驚きだよ」
「はい? 何だよ、そのヒトを小馬鹿にした態度は?」
アンシャの冷たい態度を取ることは分かっていたとしても
俺の女心は爆発する。
「綺麗、かわいいって言ってくれないと衣服に縛られている
俺の苦しみが報われないんだってっ! もうっ」
「何だか、女々しいヤツだな。
体型を偽装して女優にでもなったつもりなのか? レオエル」
「そんなことじゃなくてだなぁ、ああ、もうどう説明したら……」
俺は頭を抱えてアンシャに文句を考えているとコスプレ衣装売り場で
怪獣の着ぐるみとバトルごっこしているあゆむがふと目に入る。
人間じゃないアンシャに聞くのがそもそもの間違いだったんだ。
ここは同じ人間であるあゆむになら俺の魅力にきっとのたうちまわる
じゃないだろうか? 俺は自信たっぷりに膨らんだ胸を張ってあゆむに。
「おーい。そんなところで怪獣の着ぐるみなんかと遊んでいないで
わたしの姿を見てくれる?」
熱心に怪獣の着ぐるみと死闘を繰り広げている
あゆむに問いかける俺。
「もう少しで怪獣ナオゴンを倒せるのにお姉ちゃん
止めないでよって……へぇ、あなたって誰ですか?」
あゆむのリアクションが俺の斜め上をいく展開になった。
豊満なるボディを目の前にしてあゆむはどうやら俺の姿に
気づいていないらしい。
「怪獣ナオゴンはさすがに失礼ちゃうな。
わたしはみんなのアイドル奈緒ちゃんだよ」
俺はスカートの両端を軽く持ち、ちょこっとおじぎする。
「おぉー、本物アイドルだ。お兄ちゃん、何か書く物ってあるかな?
ボク、地下アイドルの奈緒さんにサインをお願いするんだぁ~」
そう言ってアンシャの元へ駆けていくあゆむ。
俺の冗談にもあゆむにかすりとも通じなかった。
これってある意味で肉体改造に成功しているんじゃないだろうか?
しかし地下アイドルのヒトを別に軽蔑している訳ではないが
何で余計に地下がプラスアルファしているんだろう?
現代っ子の偏った知識は恐ろしいものだ。
「あんな女性らしい格好しているけどレオエルいや奈緒って
言えば伝わるのかな? まぁ、どちらにしても中身は
おチビちゃんであることには変わりないんだよ。あゆむ」
「あのヒトがお姉ちゃんだって絶対にウソだよぉ~。
ボクの知っているお姉ちゃんは寸胴で洗濯板を擬人化しみたいな
体型の頭の悪いお姉ちゃんなんだよ」
「あはは、それはいいね。完全に的を射貫いているよ」
俺がいないからってアンシャとあゆむはまた好き勝手なことを
言ってくれちゃって、何だか悲しいって。
まだ俺は他人として第三者の目線でこの奈緒の体を見れるから
怒りゲージも少ししか貯まらないけど……
もし当時者である奈緒が聞いたなら、子供のあゆむでも奈緒が指揮する
謎のウサギ集団に蜂の巣にされているかもしれないな。
奈緒は大器晩成の後から女性らしくグラマーになっていくタイプ
だと個人的は思いたいんだけど……俺の単なる高望何だろうか?
「見違えるほどに女性らしくなりましたのぅ、お嬢ちゃん。
これで世の男共も手のひらの上で転がせられますのぅ」
俺が1人になると少し鼻息混じりでドワーフのおっさんが話かけてくる。
さっそく男であるドワーフのおっさんを手のひらの上で転がしたみたい。
「おじ様、それはそうとまけてくださる?」
調子に俺は乗って胸元をちらつかせてセクシーポーズしておねだりする。
正直こんな恥ずかしい真似はしたくないが少しでもお金を節約しないと
食事もこらから探す宿にも泊まれなくなるから背に腹はかえられない。
「お嬢ちゃんの元の正体を知っている身としては複雑な心境だのぅ。
その胸の膨らみも大半はパット様々のおかげだからじゃなぁ」
「今の姿でもし初対面で出会っていたら、またいろいろとサービスして
いたかもしれんが今のお嬢ちゃんでは今ひとつ魅力に欠けるのぅ?」
ドワーフのおっさんはだんだん渋い顔になっていく。
色仕掛けが効かなかったのでここは路線を変更するしかないか?
「オークション開催するまでの宿賃と食事代だけでもお金を
残してはくれませんか? オークションでわたしを高値で取引させて
そこの2人が幸せに暮らせたらそれだけでわたしは本望なんです」
セクシー女優(仮)から今度は悲劇のヒロインになる俺。
男はみんな悲劇のヒロインに弱くなることを俺はアニメを視聴して
学習している。俺も奈緒のお父さんも大型ロボットに洗脳された恋人を
知らずにライフルで殺してしまうシーンにはポロポロと泣いてしまった。
言えばドワーフのおっさんとの心理戦みたいなものだ。
「どうか、私ども姉弟を助けて下さい」
俺はドワーフのおっさんに頭を下げる。
「……わしは一発逆転の玉の輿を狙っておるんだとずっとお嬢ちゃんを
欲望を腹に抱えた悪い女として見ておったんじゃ。2人のために体を張る。
しかもこんなまだ小さいのに腹が据わっているとは」
「服はこれ以上びた一文負ける訳にはいかないが牛舎にスペースが
あるからそこでよければ勝手に泊まって行くがいいぞ。後は飯の問題だが……」
「いいの? ありがとう、おじさん」
ドワーフのおっさんに抱きつく俺。
「……これ、よさないかっ まったく現金な娘だのぅ」
どうやら俺はあゆむの影響でありがた迷惑なことに感謝の表現がマックスになると
ヒトに抱きついてしまうクセが体に染みついてしまったらしい。
「あの抱き付き方には見覚えある。体は偽物だけど中身は
お兄ちゃんが言う通りでお姉ちゃんだったんだ」
「レオエルのおじさんキラーの称号はやっぱり伊達じゃなかったな」
アンシャとあゆむがまたなかよくしている。
天使には性別の概念は存在しないけどベースある俺は男だから、
同じ異性どうして語れる相手がいて正直うらやましい。
「誰がおじさんキラーだよ、まったく俺の気苦労も
人ごとだと思って、お前らと来たら……」
おじさんキラーにビッチに尻軽ってどれも不名誉な名前で
ごめんよ、奈緒。生きていくために仕方なかったんだ。
アンシャの中に入る奈緒が目を覚ますことは嬉しいことだけど
俺のへの虐待が始まりそうでちょっと複雑な気持ちである。
「申し訳ついでにオークションの日までこの服は預かっていて貰えますか?
せっかくの買った新しい服を汚したくないので、お願いします」
俺は思いついたことを惜しげもなくドワーフのおっさんにしゃべっていた。
ここで遠慮してしまっては全てがダメになると思ったからだ。
「それぐらいはお安いご用だ。飯は牛の世話を手伝ってくれたら
たらふく食わしてやる、風呂もおまけだ。そんなに悪い話じゃろう?」
「はい、是非わたしどもにやらせて下さい」
ドワーフのおっさんの魅力ある提案に俺は即答する。
「これで交渉成立じゃな、今から今日の寝床である牛舎に連れて行ってやるぞ。
少し、ここで待つんじゃ」
そう言ってドワーフのおっさんは俺から体を離してレジの後ろに向かう。
「やったー、今日からオークション開催までの泊まる宿も決定したぞ。
どうだっ! 俺の女子力は捨てたもんじゃないだろっ」
俺はドヤ顔ばかりの自慢げな顔でアンシャたちに言う。
「ボク、牛さんがいるお家によりもホテルが良かったよ~」
でも思ったよりもあゆむの反応が悪くて。
「贅沢を言うなよ、あゆむ。路上で寝るのは嫌だろう?
アンシャもあゆむに何か言ってくれよ」
「そもそもお前のちんちくりんな体型のおかげで無駄な出費が重なり
お金がなくなったんだ。それぐらいのことはしても当然だろ。
もちろん牛舎の労働もお前は1人でやってくれるんだろうな? レオエル」
今回ばかりはアンシャも俺の肩を持ってくれると信じていたんだけど……
「それはちょっとあんまりじゃないか?
みんなでなかよく3人で手を繋いだことはもう忘れたとは
言わせないぞ、アンシャにあゆむ」
「あゆむのパンツは安かったがレオエルの服装にどれだけの対価の
お金を使ったと思っているんだ。
それぐらいおチビちゃんの頭でも計算できるだろう?」
「……それは俺を少しでも高く売ってその金でかりそめの翼を買おうと
するための必要な軍資金が必要だから仕方ないだろって」
「なにっ、かりそめの翼じゃとっ! お嬢ちゃんは2人が幸せに暮らせたら
それだけでわたしは本望じゃなかったのか?」
レジに向かったドワーフのおっさんが声を荒げる。
しまったつい興奮してボロが出てしまった。
これで俺たちはオークション開催まで路上生活を確約させてしまうのか?
あの無人駅の床のコンクリートは冷たくてお尻がヒリヒリした
経験はもう2度としたくないと思っていたのに……
「お姉ちゃんはかりそめの翼を使って天使に連れて行かれたお友達を
助けに行こうとしているの?」
「……あゆむ」
ウソで包まれた俺の翼をもぎ取るようにあゆむがドワーフのおっさんに
真実を語っている。
俺はアキエルのことを一度たりとも口にしたことがないのに
アンシャとの会話を理解して聞いていたあゆむ。
俺とアンシャが天界に旅立つ日にあゆむだけは連れて行けない。
あゆむは足を引っ張る恐れもあるだろうし、何より保護者として死んで
欲しくない気持ちが日を増すことに強くなっている気がする。
これは女性特有の母性愛なのかもしれない。
「事情はまだまだ掘り返して聞けばまだまだ出てきそうだが、
交渉は成立してしまったからのぅ。わしも商品の端くれだ。
一度決定したことを取り消すようないじわるなことせん」
「かりそめの翼は貴重価値が上がって今は手に入りにくいレアアイテムに
なっているのぅ。手に入れてその何じゃ天使に捕まった不良娘を
助け出せるといいな」
「なーに、今のは全てわしのつまらん独り言だ。
牛舎まで案内するからわしの後ろをついて来るんじゃ」
そう言ってドワーフのおっさんは臨時休業って書いてある看板を
両手に抱えて店の外に出て行く。
ドワーフのおっさんの外に消えるのを見計らったようにアンシャが口を開く。
「お前がうっかりとかりそめの翼の情報を漏らすから、あゆむが見かねて
極秘にしている情報をしゃべってしまったじゃないか?
このニュートラルには天界の住人もたくさんいるんだぞ」
「それは……その……」
「お前の興奮して後先考えずの馬鹿さ加減にはつくづくうんざりだ。
こんなバカは放って置いて行くぞ、あゆむ」
不機嫌な顔して店の外に出て行こうとするアンシャ。
「……お姉ちゃんの頭はおチビちゃんでその先のことまで
考えたれなかったんだよね、お姉ちゃんも行こうっ」
「あゆむ、お前ってヤツは……」
「何をもたもたしているんいじゃ~、クソガキども。
くずくずしているとカギを閉めるぞっーーー」
ドワーフのおっさんの怒りの声が聞こえてくる。
「行こう、お姉ちゃん」
俺の背中を両手で押すあゆむ。
「……ありがとうな、あゆむ」
アンシャの後を追う形で俺はあゆむに促進されて服屋を後にした。
友人から素敵なイラストを頂きました。
1章 第01話 プロローグ(1/2)に愛川奈緒のイラスト
1章 第08話 もう1人の愛川奈緒(1/2)にレオエルのイラスト
それぞれの文章の最後に画像を追加しています。
ここに画像を表示させるか迷ったのですが、奈緒とレオエルの外見の
初登場シーンのバックナンバーに入れることにしました。
初めての読者様にイメージを膨らませて頂くためにです。
イメージイラスト追加前から読まれていた読者様にはお手数を
おかけすることになってしまって誠に申し訳ありません。
興味がある方は一度ご覧になって下されば幸いです。




