表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/43

3章 第26話 神月家のひととき(1/4)

空がおのずとオレンジ色に染まってくる。

俺は元気よく胸を張って、先頭に出て助けたお兄さんの家に向かっていた。

舗装された道を歩いて行くと石の外壁が見えてくる。

庭から風流にもカーンって池の獅子落としの音が聞こえ、

まるで金持ちを絵に描いたような演出しているみたい。

俺はお兄さんの家の門を自分の家のように平気で勝手に開ける。


余りにの家の大きさにビックリして俺の腰から手を離さないあゆむ。

アンシャは瞳だけをきょろきょろと動かし、俺の後ろをただついてくる。

お兄さん家は古い屋敷なので何かを感じているのだろうか?


扉の入り口で立ち止まると俺は神月と書かれた表札の横にある柱に

あるボタンをすかさずにジャンプして押した。


ピーポーン。


「ボクがインターフォンのボタンを押したかったのに……」


「あゆむ悪いな。この世は早い者勝ちの世界なんだ」


「そんな……お姉ちゃんのけちんぼっ」


「レオエルもまだまだお子様だな」


あゆむと戯れて、俺たちはしばらく玄関の前で待っていると。


「はーい。悪徳セールスはお断りですよ~」


元気いっぱいの女の子が俺たちを迎えに来てくれる。

これがうわさで聞くお兄さんのことを臭いって毛嫌いしている妹さんなのか?

毛を編んでツインテールにしている二重の目が大きい女の子だった。

女の服装は詳しくないが上下の繋がったピンクのボーダーが入った目に入る。


「うん? あなたの学校も学級閉鎖だったの?

 嫌だよね。地震に高齢者や小さい子ばかり倒れてしまう事件。

 怖いよねって、子供会のお使いなのかな? お嬢ちゃん」


また俺を小学生と間違えやがって。

お兄さんの妹さんも俺よりも少しだけ身長が高いぐらいで

ドングリの背比べみたいなものじゃないか?


「あのう、お兄さんはいますか?」


「急に元気なったって叫んで、郵便局に自転車乗って出かけましたよ。

 ところでお嬢ちゃんは兄さんとどんな関係なの?

 村のお祭りで知り合ったのかな?」


俺をことを子供扱いしてくるお兄さんの妹さん。


「お姉ちゃんが手している男の1人だよ」


横から急にしゃしゃり出てきて、あゆむお前って何言っているんだ?


「はっはぁん。さては薄々と兄さんの影に女が見えていると思ったら、

 あなただったのね。この泥棒ネコ?」


「……はい?」


もしかしたら、この子はお兄さんのことが大好きで彼女にお兄さんを

取られたと思ったから急に態度を冷たくなっていたんじゃ?

俺の推測が正しければ凄くやばいって、いきなりの女同士の修羅場じゃないか?


「わたしはお兄さんのことは好きではないから

 安心して、妹さん。ただの知り合いだよ」


俺はしどろもどろになりながらもお兄さんの妹さんに言う。


「じゃあ兄さんにお金だけを貢がして付き合おうとしていたのかな?

 お嬢ちゃん」


「ぎくり……」


お兄さんに食事をご馳走させて貰い、あまつさえニュートラル付近まで

車で送って貰おうなんてまさに妹さんの言う通り

お金だけを貢がしている悪い女そのものじゃないか?


「今、わたしの目から顔をそむけたよね。

 後ろめたい心でもあるのかな?」


「えっーとそれは……」


俺がおたおたして次の言葉に詰まっていると。


「きみのお兄さんことなら別に後回しでもいいだろう。すまないお嬢さん。

 先に食事にしてくれないかい? 僕はお腹が減っているんだ」


玄関から顔を覗かせるアンシャ。それに便乗してあゆむも口を開く。


「ボクもお腹がぺこぺこで死にそうなんだ」


「……この殿方たちはあなたの兄弟?」


お兄さんの妹さんがアンシャを見た瞬間に女の目の色になった。

俺が男の時は全然気づかなかったが女の子の姿になってことで

女心の細かい部分も気づいてしまう微妙な変化。


「ごめん、ごめん。紹介がまだだったね。わたし名前が愛川奈緒。

 そしてわたしのお兄さんのアンシャ。義理違いの兄で外国人血も

 混じっているんだ、たぶん?」


「お兄様に向かってたぶんって……」


「あはは……その辺りは気にしないで」


少し苦笑しながらも言葉を続ける俺。


「そしてこの子があゆむ。わたしの弟なんだ」


「ボクがビッチなお姉ちゃんの弟のあゆむです」


「ちょっとこい、あゆむ。俺にビッチとかもう一度言ってみろ。

 しまいに殴るぞ」


空腹の余りに心の余裕がなくなっていたんだと思う。

俺はあゆむに見境なく拳を高く振り上げていた。


「助けてよ、お姉さん」


お兄さんの妹さんに泣いて抱きつくあゆむ。

俺に見るお兄さんの妹さんの目がますます険しくなっていく。


「奈緒さん、あなたって弟に手を上げるって最低の女ですね。

 アンシャお兄様にあゆむくん。早速温かいご飯を準備しますので

 さあ、中に入りまいしょうね」


「ありがとう、お嬢さん」


「やったー、美味しいご飯にようやくありつけるぞ。

 ご飯だ、ご飯だ、美味しいご飯~」


アンシャとあゆむはお兄さんの妹さんに手招きされて

屋敷の奥へと入って行く。


「……ねぇ、わたしは」


俺の質問にお兄さんの妹さんは振り返り。


「ビッチさん、いやごめん遊ばせ尻軽奈緒さん。

 あなたは兄さんが帰ってくるまで玄関で待っていて下さいね。

 その方が兄さんも喜ぶと思いますので。これにてわたしは失礼します」


「そんな……わたしがお兄さんの知り合いで2人を連れてきてのに」


ぼそっと呟くとそれを聞いていたお兄さんの妹さんが。


「小学生が色仕掛けで兄さんを口説くなんて100年早いのよ。

 おしめを着けて赤ちゃんから人生をやり直しなさい」


「わたしは高校生だってっ!」


「へぇ? 高校生って……わたしよりも年上じゃない?

 ならもっと自覚しているだから、なおさらダメですって」


「兄さんが帰ってくるまであゆむくんに暴力を振るおうとした

 ことを反省して玄関でじっくりとその罪について考えて下さい」


「……あれはその、言葉の弾みで出てしまったことで

 一度たりともあゆむには手を上げてないって」


「奈緒さん、自慢げに話さないで下さい。それが当たり前のことです」


「そうかも知れないけど俺もお腹が空いているんだ」


俺の空腹で潤んだ瞳に。


「こんな野蛮なヒトがわたしよりも年上って信じられない」


お兄さんの妹さんは俺にさじを投げた。


「お姉さん~ 早く来てよ。

 このお屋敷大きすぎて食卓がどこだか全然分からないよ~」


あゆむの嘆きの声が廊下から聞こえてくる。


「はい、はい待っていて下さいね。直ぐ来ますね~。

 では尻軽奈緒さん」


「はい」


俺はお兄さんの妹さんにジト目で睨まれ、つい返事してしまう。


「わたしの兄さんにも手を出したら絶対に許さないんだからっ」


俺に啖呵を切ってツインテールのお兄さんの妹さんは

風のように廊下を走っていった。

お兄さんの妹さんが恐ろしいにも関わらず揺れる後ろ髪の

おさげの2つが可愛く見えた。

もっと髪を伸ばしてツインテールでもしようかなって開き直って

苦笑する俺であった。


お兄さんの妹さんは俺がお兄さんに手を出した思って、

俺に敵意剥き出しだったな。

焼き餅程度の言葉で片づけられる問題だったら、いいのだけど……

このところご飯関係の運勢が最悪だって。

奈緒を退院祝いの飯は滅茶苦茶にされるし、気まぐれシェフのクリームパンは

クラスメイトに食べられるし。


「俺もみんなと一緒に温かいご飯が食べたかったよ。

 早く帰って、俺の無実を晴らしてくれって、お兄さん」


ぐぅううううーー……


玄関に俺の嘆きと腹の虫が時折混ざり合って鳴り響くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ