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3章 第25話 目指せ、ニュートラル(2/2)

「お姉ちゃんがいじけているよ」


俺はヒッチハイクで長時間立っていたこともあり

足が疲れて草陰で三角座りをしている。

太陽が下がって辺りが暗くなってきているので、

俺の気持ちに拍車がかかり更に憂鬱な気持ちになっていく。


「今はそっとしていてやれって、あゆむ。

 レオエルは女の威厳を完膚なきまで叩き潰され、生き物として

 自分の魅力がないことを噛みしめている途中のはずだからな」


「俺はそこまで落ち込んでいないからっ。

 足を休めて前向きに次の方法をじっくりと考えているんだよ」


スキンヘッドのおじさんに軽くあしらわれ、この体操服姿によって学生だと

バレてしまい俺の考えたヒッチハイク大作戦も失敗に終わってしまった。

アンシャが持っている手持ちの1000円ぐらいでは

1人分の電車賃も足りないだろう。

どうにか地道に歩く以外にニュートラルたどり着く方法を考えていかないと。


ぐぎゅううっ~……


「お姉ちゃん、そろそろあゆむお腹が減ったよ。

 何か食べさせてよ?」


そう言えば俺も気まぐれシェフの朝まで煮込んで鍋をまで焦がしたカレーパン

以降に何も食べていないな。飯のことを考えると急にお腹が減ってくる。

でもまだアンシャの手持ち金をこんな進んでもいない場所で使いたくもないし。

ダメだお腹が減って考えが定まらない。


「あそこにちょうど肉付きのいい犬がいるな。殺してみんなで食べるか?」


俺の考えもよそにアンシャの異様な発言。

アンシャの瞳の方向には犬小屋の外で鎖に繋がれた犬がすやすやと寝ていた。


「アンシャそれはダメだ」


「お兄ちゃん犬さんは食べたらかわいいそうだよ」


俺とあゆむがほぼ同時にアンシャの意見を否定する。


「犬はヒトじゃないよね。もう僕との契約の更新は受け付けられないよ。

 僕は何か間違ったことを言っているかな? レオエル」


「間違って何も……あのワンコはあそこにある家の大事な家族なんだよ。

 家族を勝手に殺されたなら、さすがにアンシャも怒るだろう?」


オヤジの死に笑っていた俺が言える立場もないけど

アンシャには分かって欲しい。俺のわがままである。


「僕は生まれてこの方ずっとレオエルと同じで1人だよ。

 弱者のように群れるのは少々と縛られてめんどくさいからね」


「今回は特別に熾天使セラフィの首を取るために

 嫌々協力していることをお忘れなく……天使レオエル」


アンシャは強大な力の性で魔神族や悪魔たちからも一目置かれ

魔神と崇められて孤立していたのかもしれない。

俺とはまた違う意味での孤独感がアンシャの心の奥底に眠っているのだろうか?


「あのワンコを食べるんだったら、この同盟は解散だ。

 俺はまたお前の敵に戻ってアンシャとの再戦する道を選ぶ」


俺は銀の短剣を服の内ポケットから取り出して

刃をアンシャに向ける。


「うーん、あはは……僕に刃物を向ける意味って知っているよね。

 さあ、共に殺し合うレオエル」


最初に頃に出会った冷徹で少し笑っている

そんな表情に舞い戻っていくアンシャ。

導火線についた花火はもう誰にも止められない。


「ふわわ、お姉ちゃんにお兄ちゃんケンカ良くないよ。

 そうだ。あの家の奥にビニールハウスに野菜と果物があるよ。

 ボクもよく夜になるとこっそりと食べていたんだ」


「犬さんよりも絶対に美味しいって。取れたての果実はみずみずしくて

 口いっぱいにとろけるようで美味しいんだよ。

 もうじき日も暮れるから夜になったらみんなで食べに行こうよ」


緊迫した様子も何のその。あゆむは笑って俺たちに魅力的な提案をしてくる。

あゆむが頑張ってこわばる表情をおさて嬉しい笑顔っていることぐらい

俺には分かる。これはあゆむなりの考えた俺たちの仲直り方法だと思う。

こんなことがすんなりとできるあゆむも俺のように世間から煙たがられ

親の虐待されて育ったのかもしれない。


野菜って……ああ、そうだ。あのでっかい屋敷に住んでいたお兄さんだったら

助けた恩もあるし、俺たちに善意に協力してくれるかも?


「でかしたぞ、あゆむ。お前がくれたヒントのおかげで

 俺たちはご飯にもありつけおまけにニュートラルに行けるかもしれないぞ」


銀の短剣を服の内ポケットにしまい、あゆむに飛びつき舞い上がる俺。


「やめてよ、お姉ちゃん。くすぐったいって……」


「おーい。僕を無視するなよ、今から殺し合うじゃなかったのかよ?」


俺の表情を見て、完全に戦意を失って棒立ちしているアンシャ。


「アンシャ。犬よりも美味しいご飯を食べさせてやる。

 だから今回の同盟の解散の件は一端白紙にさせてよね~」


「お前も傲慢で無茶苦茶なヤツだよな。

 レオエルに振り回らせていた奈緒の気持ちがだんだんと分かってくるよ」


「……ところでアンシャ、奈緒は無事なんだろな?

 何かあったら、アンシャだけご飯を減らして貰うぞ」


「無事ってよりも洞窟に閉じこもったアマテラスのように

 奈緒の出てくる気配はまったくないね。

 まあ、僕には好都合なんだからいいんだけどね」


「それよりも犬よりも美味しいご飯って本当だろうな。

 お前の小さいな脳で感じた幻想を僕たちに伝えているんじゃないだろうな?」


アンシャの無邪気な性格には感謝する。

奈緒の心がまだ残っていることが確認できただけでも俺は嬉しい。


「俺の後に何も言わずについてこい。今から俺が豪邸の屋敷で

 ご飯を腹一杯に食べさせてやる」


お兄さんの豪華なお持てなしで奈緒の心が外に出てこれるといいな。


「やったね~、お兄ちゃん」


「それは本当だろうな。レオエル。元天使に二言はないな」


「うん、たぶん何とかあの優しいお兄さんなら大丈夫はずだよ」


「またお前が手を出した男の1人なのか? さすがの魔神の僕でも引くよ」


「このビッチ、ビッチなお姉ちゃん」


「みんな、やめろって俺の親切を何だと思っているんだ?」


そう言えばあのお兄さんも奈緒の優しさが繋いでくれたんだよな。

ありがとうな、奈緒。ああ、優しさついでにやることを思いついた。

あゆむも……もはや家族の一員みたいなもの何だよな?


「アンシャ、悪い。お前の1000円を俺に貸してくれないか?」


あゆむの犯した罪を少しでも償わないといけない。


「お姉ちゃんの恐喝だ。いじめっ子だ」


あゆむの罵られながらも俺は助けたお兄さんの家に向かう道中に

アンシャにおねだりする。


「僕からお金を巻き上げるって、お前も相当の悪女だな。

 元天使が悪魔に1歩近づいた記念にやるよ」


「サンキュー、ありがとうアンシャ」


俺はアンシャから1000札を受け取ると。


「僕に抱きつくなよ。結構不愉快な気持ちになるんだ」


アンシャのお決まりのセリフが戻ってくる。


「分かっているって。そんなに警戒するなよ、アンシャ。

 この道に沿って進んでいて。

 俺はちょっとその、お花を摘みに行く用事があるから」


「あゆむも一緒にいく~」


俺に犬のようにまとわりついてくるあゆむ。


「お花を摘みに行くってその……トイレのことだから、

 あゆむのことは任せる。アンシャ」


「レオエルはおしっこが漏れそうだって、あはは……

 1000円で民家のトイレを借りる気か?」


「まぁ……そんなところだ。一様これでも女の子だしね」


「これ以上レオエルの惨めな姿を見るのはさすがにかわいそうだ。

 だから先に行くぞ、あゆむ」


「パンツにおしっこを漏らすんじゃないぞ、お姉ちゃん」


「誰が漏らすかって……俺に構っている暇があるなら

 さっさと行けってっ」


俺のことをバカにした2人はまた道沿いにゆっくりと歩き出す。

俺は進んできた道を少し戻って、ヒトに見つからないように

警戒してあゆむが頑張って語ってくれたビニールハウスの中に忍び込む。

ビニールハウスの中は蒸し暑く大量にみかんがなっていた。

俺は美味しそうに木の枝になっているみかんには目をくれずに

近くにあった石を拾い、目立つ棚に1000円を置いてその上に石の乗せる。


「あゆむが盗んで食べていたことを少しでもお許し下さい」


本来ならあゆむと一緒に来るのがベストだと思う。

でもあゆむは生きていくために仕方なく罪を犯していたんだ。

これからゆっくりと俺が教えて正して行けばいい。

……そうしないと俺との約束を守ってあゆむのことなら

先の未来で餓死する可能性だって十分に考えられるからな。


それに仮でもあゆむの保護者になるっている身としては母親らしいことも

してあげないとその……罰が当たるって。俺も元々は天使だったんだ。

人間に戻ったからと言って甘えてはいけない。

これも奈緒とアキエルに教わったことだ。


「俺も奈緒の外見に毒されて、随分と甘くなったな……」


そう呟くと俺は軽くみかん畑に頭を下げて、アンシャたちを追った。

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