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2章 第23話 魔神アンシャ・ルータ・イゲリオン(2/2)

「ついに念願の天使の肉体を手に入れたぞぉーーー」


アンシャが歓喜なおたけびをあげる。


「奈緒ぉーーーーーーーー」


頭ではアンシャに奈緒の体が乗っ取られたと分かっていても

俺はレオエル(奈緒)の元に歩み寄っていた。


「奈緒いや、レオエル。もう生涯、奈緒の人格は出てこないんじゃないかな?

 彼女は生きるのことに絶望していたみたいだしね」


「そんなはずないだろうっ。奈緒はいつも明るく俺たちに振る舞って

 いてくれたんだ。そんなウソはやめて俺の肉体いや奈緒の体を

 返してくれよ」


俺は涙を浮かべて神様にすがる思いでアンシャにへばりつく。


「男がそんなことぐらいでメソメソするなよ。うっとうしいなぁ。

 返すも何も奈緒は生きるのが疲れたって僕は言っているんだよ。

 気軽に僕に触れるなっ!」


「わあぁーー……」


アンシャの回し蹴りが俺のみぞおちに決まり、見事に教会の壁まで飛んでいく。

ドンって壁にぶつかる音が無造作に教会に響いた。


「あの子供の肉体とは全然動きのキレが違う。動けば動くほどくつくつと力が

 みなぎってくるようだ。まぁ、元々のオリジナルの肉体には

 月とすっぱんの開きがあるんだけどね。それまで願ったらさすがに贅沢だよね」


「はぁ、はぁ、はぁ……俺はこの際どうなっても構わない。

 だけどアンシャ、お前に頼みがある」


「奈緒を元の体(俺の体)に戻してやってくれないか?

 俺の人格などもうどうでもいい。お前の力のなら簡単にできるだろって……」


「うーん。きみも中々しぶといね。僕にもそんな力があるわけないだろう。

 きみの使えている神様にでも頼んだろどうかな?」


「そんな真似ができるんだったら苦労はしないよ。

 もう俺に翼がないんだから……」


「ははは、そう言えばきみは天使からも命を狙われている存在だったね。

 僕はすっかり忘れていたよ」


「飽くまでとぼける気かよ、アンシャ。なら交渉決裂だ。

 俺がアンシャを倒して全力で奈緒を救い出す」


口から吐いた血を袖でぬぐい、俺はまたアンシャの前に立ち上がる。


「ターミネイト・ブースト、オンっ!」


殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ……

殺せ、殺せ、殺せ……俺をあざ笑う者は全て殺せ……


「目つきが変わったね、でも僕を倒す寝言は家に帰ってから言えよ。

 帰ってママおっぱいでもしゃぶってけって、このおチビちゃんがっ……」


ドスドスッ……ドスッ……バシッ……


「ぐはぁ……ぐぇ……」


「どうした、どうした僕を倒すんじゃなかったのか?」


アンシャの一方的な暴力。子供ようにムキになり神通力を使わずに

ただ俺をサンドバックのように蹴り続けるアンシャ。

俺は反撃する余裕もなく奈緒の顔に傷がつくことだけを

恐れ顔だけを徹底的にガードする。

もちろん犠牲に上半身、下半身ともに剥き出しになるため

アンシャの蹴られる的である。


「さあ、命声をして泣き叫べよ、レオエル」


「……やめてあげて、なに女の子に暴力を振るっているの?」


また別の方向からアンシャの声が聞こえ、

アンシャは俺を蹴っていた足を止める。


「やあ、お目覚めのようだね。僕の元の依り代」


元アンシャの肉体だった男の子なのか女の子なのか分からない

性別不明の子供が意識を回復させて、俺を守ろうとしている。

アンシャの束縛から自我を取り戻したのだろうか?


「それ以上蹴るとその……この子が死んじゃうよ」


「元依り代はこの子が好きなのかい? 守りたいのかい?」


アンシャは好きってあの性別不明の子供に尋ねるぐらいだから

性別不明の子供は男の子だったんだろうか?


「俺に構わずに逃げるんだっーー」


「あんな子はタイプじゃない。

 ……でも殺すのはかわいそうなんだ」


俺の言葉もあっけなく空を切り、あって間もない子供に

俺はいきなり振られてしまった。

立場は違うが矢ノ内の気持ちが少しだけ分かったような気がする。


「あはは、またきみはヒトに嫌われてしまったね。

 学校生活でもひとりぼっちだったみたいだし、肉親以外は

 天涯孤独の身だよね。生きる価値も残されていないよね」


「それがどうした? 俺はうわべだけの友達は作らない主義なんだ。

 だって気遣って疲れるだけだろ。そんな者はむしろいない方がいい。

 本当の友達は戦場で背中を預けられるヤツことを言うんだ」


「それを強がりって言うんだよ。

 そんな僕を哀れな目で見るんじゃない。さっさと死ねよ」


バシッ……ドスッ……ドスッ……


「…ごほ…げほ…ぐはぁぁっ」


アンシャの蹴りの攻撃が止まらない。

こいつ女の子の大事なお腹を手加減なしに蹴りやがって。

アンシャに蹴られ続け意識がもうろうとしていく中で

鏡に映るように自分の顔(奈緒)が浮かんでくる。

俺が……この俺が奈緒を助けてやらないと……


「だから、その、女の子に手をあげるのはよくないよ」


「僕に命令する気なの? だったら順番を変更して

 元依り代から血祭りにあげようか? 僕はそれでも一向に構わないよ」


「ひぃぃーー……ごめんなさい」


俺を助けようとした性別不明の子供はアンシャに

びびって尻餅をついてそのまま気絶した。


「あーあ、情けない元依り代だな?

 さあ、余興も終わったことだし続きを始めようか? レオエル」


「はぁ、はぁ、はぁ……奈緒を解放してやってくれ」


「だから僕にはそんな真似できないんだって、何度も言わすなよ」


元依り代と呼ばれた性別不明の子供の仲裁がなかったように

またアンシャの猛攻が再開する。


ドスドスッ……バシッ……ドスッ……


「げほげほっ……」


「あはは、しぶといねきみは。そうだ、いいことを思いついた。

 顔ばかり手でカードしているから、ずっと脳ばかりを守っていると

 思っていたけどきみはどうやら奈緒の顔に傷がつくのが嫌なんだね」


「だったら、望み通りに顔を燃やしてゾンビみたいに皮膚がただれて

 血管が見え醜い顔に変えてあげるよ。

 それでもきみは奈緒のことを助けたいと思えるかな?」


アンシャは女の子の顔を何だと思っているんだ。

もうお嫁さんに行けなくなるんだぞ。

そうなったら、俺が奈緒を幸せにするしかないじゃないか。


「……やれるものなら、やってみろ。そんなことぐらいで

 俺たちの絆は壊れない」


「もう分かっていないのはきみの方だよ。レオエル。

 奈緒はお前のこと何かとっくに見放されているんだよ」


「せっかくこの僕が親切に教えってやっているに。

 もう死んじゃえよ。僕の炎でっ!」


アンシャが作り出す業火が俺に向かって飛んでくる。

俺は死を覚悟して目を閉じようとするが……


「アイス・シェールっ!!」


呪文が聞こえ、氷が飛んできた炎とぶつかり共に滅さつし合う。


「誰が貴様は?」


教会の割れた窓ガラスから飛んで出現した大きな白い翼を持った人影。

月の光に照らせれて、なびく青い長い髪の正体は……


「お待たせ、奈緒ちゃん」


「……アキエル」


天界で服を着替えてきたのか?

白いドレスをまとった女性はまるで俺を救うために現れた

天使そのものだった。


「今の状況を説明してくれる?」


真剣な顔で俺に聞てくるアキエル。

俺の死にかけた様子を見てアキエルはおちゃらけて余裕もないのだろう。


「それは僕から話してあげるよ」


余裕がある慢心した態度でアンシャは腕を組んで答える。


「レオエル、あなたは今奈緒ちゃんを火だるまにしようと

 していたでしょう? なんでそんなかわいそうなことをするの?」

 奈緒ちゃんはレオエルの愛人じゃなかったの?」


「アキエルお姉ちゃん、なにとぼけているんだよ。

 わたしたちは元々そんな関係じゃないって……」


「そうだったの? ごめんね」


緊迫でした空気の中でもやっぱりアキエルはアキエルだった。


「お前たち、僕のことを無視するなよ。僕が魔神アンシャのこと

 アンシャ・ルータ・イゲリオンだ」


「まさか……あなたがレオエルの体に寄生して」


「アキエルの頭の回転が速いみたいだね。

 そうさ、僕が天使の肉体を手に入れたアンシャそのものさ」


「このままだったら、そこのいるレオエルは死んじゃうよ。

 当然僕と殺し合うよね? アキエル」


「そこにいるレオエルってあなたじゃないの? アンシャ?

 あたしの読解力じゃまったく理解できないよ。ちゃんと国語の成績が

 悪かったあたしにも優しく分かりやすく説明してよ」


「やっぱり天然は、天然か?

 天然は死んで1から人生をやり直さないとやっぱり直らないよね?」


アンシャの膝蹴りがアキエルを襲う。

アキエルは大きな翼を羽ばたかせ緊急回避する。


「いきなり、なにするのよ。危ないじゃない。

 レオエルじゃなかったアンシャ」


「こんなにがらくたが多い場所なのに大きな翼が何処にも

 ぶつからないで飛べたのは本当に運だけはいいね」


「アキエルお姉ちゃん、天使の援軍はどうしたの?」


俺はアンシャを動揺させる狙いやこれからの作戦のためにも

アキエルに思っている疑問を問いただす。


「天使の援軍だって……それはおもしろい」


しかし動揺させる狙いは見事に外れてアンシャは

うっすらの笑みを見て笑っている。


「援軍ならもうじき来ると思うけど

 どこかで迷っているのかな?」


「……いたぞ、レオエル。天使殺害および魔神アンシャ復活の

 手助けをした罪でお前に天罰を下す」


うわさをしたら何とやらだ。

アキエルが入って来た窓から天魔戦争以来の無数の天使の

波が押し寄せてくる。


今のレオエルはアンシャなので、間違いじゃないが

ひょっとして俺も一緒に連行しようと天使たちは

計画して企んでいたんじゃないだろうな?


「かかって来なよ、この天界のゴミ虫ども?

 みんなまとめて僕が相手にしてやるよ」


「寝言は休み休み言えっ!

 そこにいるレオエルを直ちに引っ捕らえろっ! 殺しても構わん」


ここからはアンシャと天使たちの地獄絵図の戦いだった。

アンシャは魔神の本来の力は取り戻せていないのに

ばったばったと天使をなぎ倒し光となって消えていく。

消えてはまた次々と天使が現れてまるで数で

ごり押ししようとする天使の軍勢。


「アキエルお前はなぜ同法が殺されいるのに

 レオエルに刃を向けない? 我々を裏切る気か?」


1人の負傷した天使がアキエルに話かけている。


「それは……」


きっとアキエルは俺と戦うことを拒んでいるんだ。

あいつは人一倍に優しい天使だから。


「アキエルお姉ちゃんは前にいたソドラとゴモスっていう

 悪魔の戦いで怪我をしたんだよね。だから余り動けないんだよね」


すかさずアキエルのフォローに回る俺。


「そうだと言ってもな、戦闘放棄は立派な重罪だぞ。

 ところでなんでクソガキに我々の姿が見えるんだ」


やばい、俺がレオエルだってバレてしまう。


「わたしが純粋無垢だからに決まっているでしょ」


天使に向かって俺は強引に開き直って断言する。


「まだ子供だもんな。こんな無垢な子供が現代の文化の中で

 育って生き残っていたとは……その心を大人になっても忘れるな」


奈緒の身長のおかげでどうにか切り抜けることができた。

これは不幸中の幸いである。


「どうしたんだい? 僕はまだ少ししか傷をつけていないじゃないか?

 もっと天使のお兄さんたちもっと僕を楽しませてくれよ」


一方ではアンシャの怒濤の攻撃が止まらない。

数よりもやっぱり質の前では無力なのか?

花びらのように落ちては消えて行く天使たち。


「ダメだ。レオエルはもう魔神に取り憑かれて完全に狂っている。

 ここは退却していったん陣形を立て直すぞ」


「了解であります」


「レオエルを取り囲んでいる天使はそのままで、後方から

 順序よく撤退しろっ。これは大天使様の命令である」


がたいのいい天使が声を荒げると見る見るうちに

天使の動きが変わっていく。


「アキエル、お前は我々についてこい。レオエルに荷担した罪で処罰する」

 ようはレオエルの見せしめのために天界で監禁する」


天使からアキエルに処罰や監禁といった天使らしくない言葉が

次々と聞こえてくる。


「なんで天使が無意味に味方を監禁するんだよ。

 お前たちの方がよっぽど悪魔じゃないか?」


もちろん俺はその天使に抗議する。


「子供は少し黙っていてくれないか?

 アキエルが監禁されることでレオエルもおとなしく反省して

 我々の軍門に下るだろう」


「そんな理屈がまかり通るわけないだろう。

 なんで、アキエルは天使に言い返さないんだよう?」


アキエルが泣いていた。


「ごめんね、奈緒ちゃん。最初からレオエルを捕らえてこいって

 天界の命令だったの?」


「あたしはレオエルを見捨てることができなくてずっとね、

 あたしは天使さんに監視させていたの?」


「じゃあ天界に援軍を呼び行くって言うのも……

 ごめんさない。監視の天使さんに一度相談に戻ったんだ」


「まぁ、その天使さんもけっこう頼りなくて結局は2人で

 天界に戻ったんだけどね」


「元々レオエルたちを裏切っていたんだから、きっとその報いだよ」


アキエルが自分がこうなることが分かっていたんだ。

それを俺たちに気づかせることなく一緒にいていたなんて……


「悔いが残るとしたらアンシャからレオエルを救出できなかったことだけ。

 でも、それもあたしのわがままかもしれないね」


「ごめんね。あなたの友達のレオエルを助けられなくて本当にごめんね。

 また生まれ変わって出会えたなら、今度こそ本当のお友達になってよね」


「……行くなよ、アキエル。3人でまたレオエルの退院祝いを

 するんじゃなかったのかよ?」


「そんな約束もしていたね。すっかりとあたし忘れていたよ。

 これだと天使も失格だね」


「俺はそんな意味で言ったんじゃないよ。

 何で自分ばっかりを責めるんだよ」


「そろそろレオエルの取り囲む天使も減ってきた。

 おしゃべりはそろそろ終わりにしろっ。行くぞ、アキエル」


「もちろん分かっているって、泣かないであなたことは

 ずっと忘れないよありがとう。バイバイ奈緒ちゃん」


「アキエルっーーーーー」


天使たちに連れられアキエルは飛んでいく。

俺にも翼があったら一緒に追いかけていけたのにそれも

こんな人間の姿ではどうすることもできない。

俺は完全に無力の存在なんだ。


「あーあ、天使たち全部逃げちゃったね。

 200人ぐらいは殺したんだけどもう数も数えるのも飽きちゃって……」


「あいつらはいいな、大きな翼で自由に空を飛べて。

 あんな高く飛ばれたら僕は追撃することもできないじゃないかい?」


「そこに絶望しているレオエル。僕は全然余裕だけどまだ戦いの続きするの?

 僕はあの天使たちの逃げ腰に興奮が覚めちゃって。

 余りやる気がないけど殺し合うをするならいつでも相手になるやるよ」


アンシャは傷だらけになりながらも俺に声をかけてくる。

もしかしたら、アンシャは弱っていて強がっているだけかもしれない。

アンシャと戦って武人として死ぬのは本望だけど

ここで無残に死んでも意味がない。俺は奈緒もアキエルを救いたい。

ある意味で奈緒はアンシャと一緒にいて安全かもしれない。

だけどアキエルは早く手を打たないと天使たちに何をされるか分からない。

アンシャの行動が監視できて、なおかつアキエルを救い出す方法は

皮肉なるけどやっぱりこの方法しかないか?


「アンシャ、俺と一緒に協定を結ばないか?」


俺の奈緒を見守り、そしてアキエルを救い出す一石二鳥の提案で

あるが危ない吊り橋である。


「レオエルお前の立場がまだ理解していないようだな。

 お前の命は僕の手の上の中にあるんだよ、分をわきまえろって」


「そんなことはお前に言われなくとも分かっている。

 俺は天界の場所を知っている。アンシャ、お前はアンシャを倒した

 熾天使たちには復讐したくはないか?」


「あはは、実に面白い提案だねそれは。魔神と呼ばれたこの僕に

 元天使が仲間を売り飛ばすなんて、レオエルの目的はなんだい?

 さっき一緒にいたアキエルのことかい?」


「そうだ、俺はただアキエルを救いたい。でも今の俺の力だけでは

 アキエルを救い出すこともできないんだ」


「それで魔神の力にすがるって訳かい? このままきみを拷問して

 天界の位置を吐かしてもいいけけど相当きみは頑固だから

 居場所を吐かずにそのままのたれ死にそうだよね」


「僕が仮に協力するとしてどうやって天界まで昇るんだい。

 僕には天使の姿だけど翼がないんだよ、もちろん、きみもね」


「その当てならある。まずは多種多様な種族が暮らす都市

 ニュートラルに行く。あそこの魔道具屋にかりそめの翼が

 売っていたと思う。それを使って天界に行く」


「かりそめの翼か? 確か生きた天使の翼をはぎ取り羽を

 何枚も重ねて作られたって聞く呪いのアイテムだったよね」


「飽くまで呪いは死んだ天使の恨みと怨念がいっぱいに詰まっていると

 思うけどそんなものは根性と精神力でどうにかなるって」


「それよりもう時間は限られている。

 まずは俺とアンシャが組むか組まないかの問題だ」


「レオエルを殺しても僕の高鳴る興奮は抑えれそうになさそうだ。

 僕を仲間にしても途中で裏切って背中からブスリと刺すかも分からないよ」


「もう俺は裏切りはもう慣れている。

 今も天界の反逆を企てる裏切りものだよ」


アキエル救出後に俺が奈緒を助けるためにアンシャを裏切るかも

しれないけどそれはお互い様だ。


「僕は熾天使セラフィの首を取れさえすればそれでいい。

 よし交渉成立だ。共に天使にひと泡吹かせようじゃないか?」


「ありがとう、アンシャ。恩にきるよ」


「僕にあんまり礼を言わないでくれ、そのなんだ聞き慣れない言葉

 で少し背中がむずかゆくなるんだ」


俺は知らず知らずにアンシャの弱みを握ってしまった。

今度戦う時は、褒め殺しの作戦でアンシャの隙を作ってみよう。


「ボクも一緒に連れて行って下さい。

 お願いします。お姉ちゃん」


「わぁーー、何だよ。お前は……」


いきなり男の子なのか女の子なのか分からない性別不明の子供が

俺に抱きついてくる。まだこの場所にいたのか?

てっきり俺はこの場所から逃げたと思うっていたんだが……


「やめるんだエロガキ、俺は怪我人でしかも女の子なんだぞ。

 だから暴れるなって……」


「ボクも連れて行ってよ、お姉ちゃん。じゃないと絶対に離すもんか?

 もうボクもうお姉ちゃんたちしか頼れるヒトがいないんだもん」


こいつの存在は未知数だけどアンシャの復活の時の生命吸収や

はたまた地震で身よりを全て失ったかもしれない。


「あぁ……だからその変なところを触るなって……

 アンシャお前も笑っていないで俺を助けてよ」


「あはは、僕は天界に一緒にいく協定を結んだんだ。

 それに元依り代は天使じゃないだろ。なら、なおさら僕の力は貸せないね。

 せいぜい子供同士じゃれ合ってくれたまえレオエル」


「そんなことってあるかよ~」


アンシャの中に奈緒がいてくれたおかげで、もしかしたらアシャは

角が取れて性格が丸くなってくれたのかもしれない。


「分かったから、連れて行く。だからもう俺から離れてくれよ」


「それは本当なの? ありがとうお姉ちゃん」


「だから俺に余計にくっつくなって……」


人なつこい子犬ように俺を抱きついてくる性別不明の子供。

肌と肌が接触してようやく性別不明の子供が男の子だと確信したのだが……

無邪気でいやらしさを感じなかったので、ここは大目に見てやるか?


「ところでお前の名前はなんだ? 呼びにくくて困る」


「そうだなぁ、うんボクの名前は依り代。

 もう今は違うか? 元依り代」


「はぁ? ぜったいウソだろう?

 俺たちに偽名を使わないといけない事情でもあるのか?」


「元天使であるレオエルがヒトの言葉を疑うのかい?」


「どう考えてもヒトの名前じゃないだろって」


「この元依り代には名前がなかったから僕が与えた名前なんだけど

 何か不服でもあるのかな?」


「アンシャには名前のセンスってものが抜け落ちているな。

 俺が改めて元依り代に名前をつけてやろう」


「そうだな、俺のことをお姉ちゃんって呼んでいたから

 お前の名はこれからはあゆむと名乗るといい」


奈緒をお姉ちゃんって呼ぶならこのあゆむって名前が

ぴったりだろう。


「あゆむだって笑わせる。

 元依り代の方がクールかっこいいだろ」


「どこがかっこいいんだよ。依り代ってただの記号みたいなもので

 そもそも名前じゃないじゃないか?」


「僕のネーミングセンスにケチをつけたいのかい?

 やっぱり一度ここでレオエルは死ななければならないようだ」


「もう2人だけでケンカしないでよ、パパ、ママ。

 ボクは依り代あゆむだよ。それでいいでしょ」


あゆむの一言で場の空気が一転する。


「僕がパパだって、ふん笑わせる戯れ言をっ」


「俺はお前を生んだ覚えはない」


俺とアンシャが何故か? 意気投合してあゆむの言葉を否定したけど。


「……そんなぁ? 名前って両親がつけてくれるもんじゃないの?

 ねぇ、ママ、パパ」


あゆむの純粋な質問に俺はどう答えたらいいのか?

正直分からなくて……


「俺はママよりも姉ちゃんって呼んでくれる方が

 嬉しいかな? 対でアンシャはお兄ちゃんって呼んで貰おう。

 うんうんこれで決まりだな」


「何レオエル、僕の呼び名を勝手に決めってるんだよって

 言いたいけど僕もパパって呼ばれるのはさすがに照れくさいかな?」


「お姉ちゃんにお兄ちゃんでいい?」


「それでいい。あゆむはお利口さんだ」


「あゆむは偉いのだ、賢いのだ」


「だから俺に抱きつくなって……」


元天使に魔神そして俺のことをママって呼んだ小さい子供。

俺は一瞬の展開で義理の息子ができてしまった。

アンシャは俺たちを見てまた笑っている。

前代未聞の不確定要素満載の即興混合チームだけど

アキエルお前を絶対に救ってみせる。

また壊れ行く教会の中であゆむに抱きつかれながらも

俺は神様に誓うのだった。

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