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2章 第21話 教会に向かう旅路

「みんなの心臓の動きが止まっている?

 早く魔神アンシャをどうにかしないとっ」


わたしは教会から3人で逃げてきた道のりを1人引き返していた。

倒れているヒトを見つけては体に耳を当てて、命の鼓動を確認するわたし。

地震の影響で大地もかなり歪んで、水道管がむき出しになって

水が溢れてきている場所さえもあった。

わたしとアキエルさんが頑張って矢ノ内くんを助けていた代償が

他のヒトたちの命を奪っていたってことは考えたくもない。

もし、うっかりと考え込んでしまうと罪悪感の迷宮から

わたしは永久に出られなくなってしまうかもしれない。

だから一刻も早く魔神アンシャのところにいかなくちゃ……

玲音くんは後ろに付いてきているかな?

ダメダメ、あんなに啖呵を切ったんだからわたしの力でだけで何とかしないと。


「また畑にヒトが倒れている?」


わたしはもう何度も息をしていないヒトの冷たい体に触れてきた。

みんな苦しそうに目を開けて無残な顔で死んでいる。

吐き気を堪えながらヒトの目を閉じさせ、死後硬直でどうにも

こうにもまぶたを動かせないヒトには顔をそのヒトの私物で隠してあげた。

これがわたしにできる精一杯の償いだ。

今度もダメかもしれないけどまた勇気を振り絞って、

わたしは畑に倒れているヒトに声をかける。


「あのう……大丈夫ですか?」


わたしよりも一回りぐらい大きいお兄さん。

スーツ姿で会社に向かう途中だったのかな?


「うーん、ありがとう。急にめまいに襲われてしまってこのざまだよ。

 起き上がろうとしても全然足に力が入らなくて困っていたんだ。

 それに分からないけど周りのヒトの様子も何だかおかしくて……」


良かった生きていてくれた。

魔神アンシャのところに早くいかなくちゃって焦る気持ちもあるけど

わたしは目の前にいる困っているヒトを置いてまで非情になれなかった。


魔神アンシャが生命力を吸っているなんて、もし本当のことを伝えても

中二病のあやしい男だと思ってわたしことを拒絶するかもしれない。

そうなったらこのヒトを救えなくなるかもしれない。

本当はウソは余りつきたくないけどやるしかないか。


「近くの山が噴火して硫黄が大量に発生してみんな気分が

 悪くなったんですよ。地震も凄かったでしょ?」


「僕は全然、硫黄の匂いを感じないけど……」


何でそんなリアクションで返してくるのよ。

普通はそうかの一言で終わるんじゃないの?


「わたしには感じるんです。さあ、肩を貸しますから

 安全なお家に帰りましょう。


「あなたのいっちょうらの服も土でドロドロになっているから、

 どっち道家に戻ってお着替えをしないとダメですよね?」


わたしは無理やりにもお兄さんを押し切ろうと頑張る。


「……そうだね。こんな体調で無理に会社に行ってもみんなに

 迷惑をかけりそうだ。すまないが僕のことをよろしく頼むよ」


ああ、良かった。わたしの思いが伝わってくれた。


「分かりましたよ。お兄さん」


わたしはお兄さんの肩に手を回して。


「1、2、3のかけ声で体を持ち上げますから、頑張って

 お兄さんも足に力を入れて下さいね」


「了解したよ」


「では、数えますよ。1、2、3それっ」


わたしは3の言葉で腰に一気に力を入れてお兄さんを持ち上がる。

お兄さんも頑張ってくれたみたいでわたしよりも大きいお兄さんも

容易に持ち上げることができた。

わたしは肩に回したしていない逆の手でお兄さんのカバンを持ち

畑から抜け出し、ゆっくりと舗装されたアスファルトの道を

お兄さんと一緒に歩いて行く。


「奈緒こんなところで何油を売っているんだ?

 魔神アンシャを倒しに行くんじゃなかったのか?」


不意に現れた玲音くんがわたしたちの行方に立ちふさがる。


「魔神アンシャって何だい?」


お兄さんは玲音くんの発言に動揺するも

すかさずフォローを入れるわたし。


「この子はアニメの見過ぎでたまに現実とアニメの世界が

 混同していてごっちゃになるんですよ」


「なるほど? 僕もこんな年頃ではそうだったかもしれないな?」


良かった、わたしのネックに感じていた身長が役に立っている。


「見て分かるでしょ? 奈緒。わたしは人助けをしているの。

 邪魔しに来たのなら、さっさとお家に帰りなさい」


「……なら、わたしがそのおっさんのカバンを持つから

 一緒にいていいでしょ? 玲音」


いったいどう言う風の吹き回しなの? 玲音くん。

あんなに震えて、アンシャのことを怖がっていたのに。でも少し嬉しい。


「おっさんじゃないでしょ、ちゃんとお兄さんって呼びなさい」


「いいんだよ。この子から見たら僕もおじさんになるよ」


「でもこの子もう高校生ですよ?」


「……冗談はよして下さいって。

 どう頑張っても小学生高学年いや中1ぐらいまででしょ?」


お兄さんが奈緒を歳で困惑している。

これはちょっとわたしも複雑な心境だな。


「わたしの年齢のことって、今は関係ないでしょ?

 おっさんじゃなかったお兄さんを早くどうにかしてあげないと」


「まさか……奈緒。お兄さんに早くとどめをさせってわたしに言いたいの?」


玲音くんの「早くどうにかしてあげないと」って言葉に

怒りを感じわたしは自然と声を荒げていた。


「バカだな玲音は。玲音こそ、現実とアニメの世界が

 ごっちゃになっているよ」


「そうでしょう? お兄さん」


玲音くんって……そこで何でお兄さんに振るのよ、

また話がややこしくなるでしょ。


「兄妹してアニメ好きってまさに現代っ子だよね?

 でも性別も違うのにこんなに仲良くて本当に羨ましいよ」


「僕にきみと同じくらいの妹がいるんだけど臭いとあっち行けとか

 もう散々ののしられて、最近全然会話もしてないんだ」


「そうなんですか? 寂しいですね。

 妹さんもたぶん年頃だと思いますからお兄さんことを

 恥ずかしがっているだけだと思いますよ」


「ねえ、奈緒」


「……うん、わたしもそうだと思う」


「そうかい、ありがとう。もうここは僕の家はここだから」


「もうって、ここですか?」


わたしは最初は凄く戸惑ったけど目の前に現れたのは

少し古ぼけている大きな屋敷だった。

駐車場には車も軽トラックを含め3台は置いてあった。

さすが大地に恵まれた田舎である。

お兄さんの家は畑から2~3分離れた近所で少し拍子抜けする部分は

あったけど無事にお兄さんを家まで届けることができた。

小さな真心の積み重ねが世界を優しく変えて行くんだとわたしは思う。


「助かったよ、実は恥ずかしいことに落ちた畑も

 僕の家の私有地だったんだ」


「いいな、お兄さん。でっかいお家に住めて本当に羨ましいよ」


「奈緒、そんなこと言ったら、またお兄さんの迷惑になるでしょ?」


「いいんだよ、奈緒ちゃん。僕はまた少し休養したら

 元気になると思うから、休みの時でもお兄ちゃんと一緒に遊びに来なよ。

 畑で取れた美味しい野菜と果物を食べさせてあげるから」


「ありがとう、お兄さん」


玲音くんって最近は自由奔放で奈緒の扱いを

マスターしているのが正直うらやしいよ。


「ありがとうございます。これから硫黄も更にきつくなってくるって

 テレビで言っていましたから、今日ぐらいは家でゆっくりと

 休んで下さいね」


「硫黄ってなに?」


「奈緒はニュースを見ない子だから分からないんです。

 じゃあわたしたちは帰りますね、お大事にして下さいね」


「うん、心配してくれてありがとう。

 またね、奈緒ちゃん」


「わたしもニュースぐらい見るって、はいお兄さんもお大事にっ」


わたしは奈緒の言葉を自分の言葉でかき消し、逃げるように

急いでお兄さん家から離れるのだった。

玲音くんってほんと無邪気過ぎるよ……

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