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2章 第16話 愛川奈緒の結婚式?

「玲音くん、迎えにきたよ」


俺はかわいい声を出して恐る恐る幽霊屋敷に等しい教会の扉を開けた。

月の光のおかげで、かろうじて教会の中が見えてくる。

外見から見たの期待を裏切らず、テーブルやイスと入った家具が

無造作に倒れている。そして蜘蛛の巣も部屋を彩りに飾っていた。

神父の趣味かもしれないけど奇妙な石像もいくつかあった。

目線を上げると中央の道にある祭壇の十字架に貼り付けなっている

奈緒(玲音)の姿が俺の瞳に映り込む。


「奈緒っ!」


俺は思わず、奈緒と叫んでいた。


「……誰かと思えば、俺の所有物の奈緒じゃないか?」


奈緒(玲音)の隣に立っていた男が振り返る。

あの彫刻はブタの石像じゃなかったのかよ……

でもあの脂肪に満ちた顔には見覚えるがある。

確か同じクラスの矢ノ内だ。


「お前が奈緒……じゃなかった玲音をっ」


「そんなに怖い顔をするなよ、せっかくのかわいい顔が

 台無しじゃないか?」


相当に気色悪いやつだな。


「悪いな、生まれつきこんな顔なんだ」


「もう、ツンデレモード突入かよ? 奈緒はほんとつれないな。

 とっとと式を終わらせて飯を作ってくれよ。俺は腹が減っているんだ」


「式って何のことだ?」


「もう照れるなって、奈緒。

 教会で式って言ったら1つしかないだろ?」


「葬式?」


「はぁ、ふざけるなって、結婚式に決まっているだろ。

 温厚な俺でもしまいにキレるぞ?」


「いったい誰の結婚式をするの?

 まさか奈緒と矢ノ内がそんないけない関係だったなんて……」


同人誌でよくあるとうわさされているボーイズラブが

現実世界にもあるとは正直驚きだな。


「もう照れ隠しするなって、奈緒。そんなに俺の口から言わせたいのか? 

 ……その、俺と奈緒とに決まっているだろっ」


赤面して照れくさそうに応える矢ノ内。


「はい? 矢ノ内と俺が結婚? ごめん、ごめん。

 それだけはあり得ないから。無理、無理、絶対に無理」


「……また俺にウソをつくのか?」


おちゃけていた矢ノ内の人相が悪魔みたいに変わる。


「ウソじゃないって、本当だよ。

 それにわたしはもう好きなヒトがいるんだ。

 だから矢ノ内とは付き合わなし、結婚もしない」


玲音が好きって長年苦労を友に分かち合った

自分自身の肉体だし、嫌いなわけないよな。うん。


「まだ俺にウソをつくのか?

 俺はウソをつく人間が1番大嫌いなんだぁーーー」


俺に逆ギレして掴みかかってくる矢ノ内。


「暴力で女を屈服させるって最低の男だな、お前って」


伸ばしてきた矢ノ内の両腕をすかさずしゃがんでかわす俺。


「どこに消えたんだ、俺の嫁?」


左右を見渡す矢ノ内。矢ノ内のお腹の脂肪の膨らみが

邪魔をしてどうやら真下は死角になるらしい。

奈緒の体が元々小さいうえにしゃがんだことも噛み合って

更に効果抜群である。


「少しはダイエットする努力もしなって、そしたら少しでも

 女の子にもてるかもよ」


俺は矢ノ内の足元を容赦なく、蹴り払う。


「……奈緒てめぇー……うぁあぁぁーー」


自分の体が支えきれなくなり、バタァーーンって

大きな音を立てて尻餅をつく矢ノ内。俺は追い打ちをかけるために

矢ノ内の体に馬乗りになり首の裏筋を目がけて手刀を入れる。


バシッ……バシッ……


「……痛いだろ、何しやがるっーー」


ダメだ、奈緒の腕力がなさ過ぎる。

皮膚が少し赤くなる程度で、暴れる矢ノ内の動きが止められない。


「お願いだから……おとなしく気絶しろって、矢ノ内っ」


ドンドンッ……ドンッ……バシッ……ドンッ……


俺は何度も同じ場所である首の裏筋を叩くする。

だが猛進するの矢ノ内の両腕が止まることなく俺を容赦なく襲う。


「このじゃじゃ馬の嫁には少々、お仕置きが必要だな」


「嫌だ……放ったら、放せよ、この変態っ!」


懸命に手足をバタバタさせて矢ノ内の腕に抗う俺。

もしここで捕まったら、俺は矢ノ内と結婚することになってしまう。

それだけは死んでも嫌なんだ。こうなったら、やけくそだ。

俺は顔に傷つくことも恐れずに頭を大きく振りかぶり……


「誰がお前の嫁だっ……ふざけるなぁぁぁーーーー」


矢ノ内に顔面に向かって俺は頭突きを食らわす。捨て身の頭突き攻撃は

矢ノ内にも想定外ようで、まともにあごにクリティカルヒットする。


「はぎゃ……」


俺の体を束縛しようとしている矢ノ内の動きが完全に止まった。

重力に負けて地面に落ちていく矢ノ内の両腕。


「はぁ……はぁ……終わった」


口から泡を吐いている矢ノ内。

どうやら矢ノ内のヤツは脳しんとうを起こして気絶したみたい。

矢ノ内は奈緒が好きで無茶な攻撃をあんまりしてこなかったけど……

もしも俺のことが好きでもなく単なる無差別殺人鬼だったら、

俺はたちまちに殺されていたかもしれない。

ふとクールになって矢ノ内との戦いを分析していると。


「……痛い、痛いって、なんてあんなに脂肪があるクセに頭だけは

 石頭なんだよ矢ノ内のやつ……」


年寄りが運動して後から遅れて痛みが来るって本当のことだったんだ。

でもこの場合は気力で痛みを忘れていただけだと思うけど……

痛いのは後から来ても全然緩和されてなくて、やっぱり痛かったのである。

それにしてもいくら人間に憑依していたといえ、天魔戦争で

生き残った悪魔としてはかなり弱かった。

これも矢ノ内の奈緒を思う愛の力が悪魔を押さえつけていたことなのか?


「……おぇーダメだ、矢ノ内の考えるだけでもう吐き気がする」


「これから矢ノ内に体の隅々をお父さんの魂を回収するにも

 調べないとダメなんだよな」


矢ノ内の脂ぎったお腹を目にする俺。やっぱり生理的に無理だわ。


「……乙女のわたしには殿方の体に触れることなんて

 到底できないわ」


今後のためにも奈緒に屈辱を与えて俺に「護身術を教えて下さい」って

あいつから志願させるように仕向けないと体に身につかないよな?

そうだ。そうしよう。


変な日本語になりながらも何かと理屈をこねて、

俺はそのまま矢ノ内を放置して奈緒の元に向かう。


「奈緒、助けに来たぞ、玲音だ。寝ていないで目を覚ましてくれ」


俺は十字架と奈緒を繋いでいるロープをアキエルに

もらった銀のナイフでほどいていく。

手首足首が青く滲んでいて、どれだけの時間を拘束させていたのかも

検討がつかない。皮膚に触れないに気をつけて丁寧に心がける。

ちょうど奈緒の手のロープを外し終えたその時だった。


「玲音くん……」


「……奈緒か? ようやく居眠り姫いや居眠り王子様のお目覚めだな」


「ごめんね、玲音くんわたし……」


「謝らなくっていいって。俺こそ遅れてしまって、ごめんな。

 連絡しようと思っていたんだけどちょうどスマホのバッテリーが

 切れたので家に連絡できなかったんだ」


「どうして、遅れたの? ちゃんとわたし約束したよね」


「それは……」


体育倉庫に閉じ込められてしまったって、

素直に打ち明けられたらどんなに楽なことだろう。


「……そう、奈緒の退院祝いのプレゼントを探し求めていたんだ。

 気まぐれシェフのおっさんのパンがどこも売り切れで……」


「わたしの退院祝いの日ってかなり前から決まっていたよね」


「……それが気まぐれシェフのおっさんのパンの賞味期限が早くて

 当日じゃないと持たないんだよ。そこもおっさんのこだわりの1つで

 添加物が入っていなくて」


「今は、そんなおっさんのことはどうでもいいでしょ。

 わたしよりもそのおっさんの方が大事なの?」


「そ、そんなわけないじゃないか?」


「なら、もう玲音くんは黙っていて…………うそつき」


奈緒の手に持っていたナイフが俺の体を容赦なく貫いていた。


「……何でだよ……奈緒」


「わたしはただ病院へ迎えに欲しかっただけなのに……

 ごめんさない、玲音くん。もうあなたが信じられなくなったの」


俺は奈緒の重たい言葉を聞いて意識が闇の中に飲まれて

そのまま落ちていった。

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