2章 第14話 再会する天使
もう外は真っ暗で静まりかえっていた。
だけど愛川の家にまだ光が灯されている。
佐武さんの車で降りた時間を確認すると0時を回っており、
既に日付も変わっていた。
俺は愛川家の1人娘なんだもんな。今回は家に連絡も入れなかったから、
奈緒と奈緒のお父さんにこっぴどく叱られるんだろうな。
怒るのは愛情の裏返しって言うけどみんなの気持ちを考えるだけで憂鬱だよ。
「約束を破ってごめんな……奈緒、お父さん」
夜の学校よりも俺はびくつぎながら、愛川家の門をくぐり家の中に入った。
奈緒の家の中は異様な静けさである。テレビの音1つも聞こえない。
「……これは2人ともかなり怒っているな?
2階にも明かりがついているけどやっぱりここはみんなが集まる
ダイニングを覗くのが先決だろうな」
土下座する覚悟で俺は恐る恐る明かりがついているダイニングに向かう。
「……ウソだろ、お父さん、お父さん……」
奈緒のお父さんが地面に仰向けになって倒れていた。
奈緒のためにお父さんと一緒に作った料理も無残に飛び散り見る影も形もない。
「しっかりしてよ……ねぇお父さんってば……」
俺はお父さんと一緒に作った料理に目をくれず、慌てながらも気道を
確保するために奈緒のお父さんの体をゆっくりと表に向けて心臓に耳を当てた。
しかしまったく何も臓器の動く音が聞こえない。
俺の目から自然と涙が溢れてきた。
「……ねぇお父さん……返事してよ、お父さん……お父さんっ!」
俺の本当のオヤジが死んだ時はようやく父の束縛から解放されたって
優越感が悲しみよりも遙かに凌駕していたので、不謹慎だと思いながらも
遺体の前で笑っていたことだけは今でもはっきりと覚えている。
それに引き替え奈緒のおとうさんは、短い付き合いだったけど
親よりも友達のような存在だった。
一緒にアニメをしたりゲームしたりと子供時代に果たせなかった夢が
叶っていくようで毎日が嬉しかったんだ。
俺は奈緒の体に引っ張られて、涙を流れているんだと思う。
出ないとヒトの死を悲しむことが分からない俺が涙を流すなんて……
どこか奈緒と体が入れ替わった時に体内器官が壊れたんだろうな、きっと。
これまで天使の名の元に悪魔に憑依した人間を俺は殺していった。
もちろんヒトを救いたい気持ちがあるが憑依が悪魔と親密になっていれば
もう悪魔と人間を切り離すことはできない。
ヒトの体と一緒に葬るしか方法はないんだ。
中には死ぬ直前に人間の意識を取り戻した哀れなヤツもいた。
残された家族がいるだって叫んでいたヤツも俺は容赦なく悪魔ごと斬り殺した。
それしか彼を救う方法がなかったのだと自分に言い聞かせて……
もう、俺にはどちらが善でどちらが悪かも分からない。
奈緒が死んでも俺は平然と笑っているのだろうか?
「……そう言えば奈緒はどこに行ったんだ?」
俺は奈緒よりもきっと自分の体が傷つくの恐れていたんだ。
奈緒のお父さんの死を直視したことで現実を受け入れ、本来の俺である
ヒトの姿を傍観していた頃の自分に戻ったのかもしれない。
「……奈緒は2階にいるのか?」
2階の明かりがついていることを思い出し、俺は階段に足を向ける。
階段を登っていくと奈緒の部屋に誰かがいる気配が感じられた。
俺は黙って奈緒の部屋の様子を伺うと大きな翼を広げた天使の姿が
目に映る。天使は何やら怪しい魔法陣を形成していた。
天使は魔法陣を生み出すのに必死でまだ俺には気づいていないようだ。
あいつが……あいつが奈緒のお父さんを……
「ターミネイト・ブースト、オンっ!」
俺は感情に流されるままに自己暗示をかけて、天使へと飛び込んだ。
奈緒の血と肉があの天使を俺に殺したいって命じていたんだろうか?
なんせヒトに興味を持たなかった俺がヒトのために心を
揺れ動かされているんだからな。
一瞬の隙をついて俺は天使の背後に回り、そして天使の右翼を
強引に掴み込み取る。
「取ったぞ、お前の翼。そんな大きな翼など俺が引きちぎってやるっ!」
ミシミシミシッ……
「きゃあああーーーー……痛いってって……いったいどこに隠れていたのよ。
いきなり翼に飛びかかって来てびっくりするじゃないの」
天使の戯言にも耳を傾けず、力任せに天使の右翼を引っ張り続ける俺
「俺のいや、わたしのお父さんをよくも……よくも殺したな。
俺の手が例え壊れてもお前だけは絶対に許さない」
天使も後ろに頑張って手を回し俺をはぎ取ろうとする。
ミシミシミシッ……ミシッ……
「これ以上はあたしの翼を引っ張るなって……痛い、痛いってって」
「清らかな天使に翼に人間が気安く触れないでよって……
あれ、あれ、何であなたがあたしに触れられるのよ?
ちょっとおかしいって、誰かわたしに説明してよ」
天使も混乱しているようで挙動がおかしくなっているようだ。
俺を振り落とそうと天使は懸命に背中をくねくね動かしてくる。
殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ……
殺せ、殺せ、殺せ……俺の大切なもの奪うヤツは全て殺せ……
悪魔の挑発が俺を更に凶暴にする。お前に言われなくても殺してやる。
もう俺には帰る場所はないんだ。
「刺し違えてでもお前だけは殺してやる」
天使の翼を引きちぎろうと俺は指に精一杯の力と体重をかけていく。
指からは大量の血が飛び散り、天使の白い翼を赤く染める。
「痛い、痛いって……あたしをニワトリの扱いして
羽をむしろうとするなって。これでもあたしは神様に使える天使なのよ」
「神様に使える天使がどうした。
……死ねば全てが平等だ。殺してやる、殺してやる……」
俺の心には既に悪魔が降臨していたのかもしれない。
ただ殺せの羅列しかもう俺の脳には届かない。
「はぁ…はぁ……あなた、少しはあたしの話を聞いて頭を冷やしなさい」
「あたしの名は天使アキエル。あなたのお父さんを救おうとしている
慈悲深い愛の天使なのにどうしてあなたに殺されないといけないの?
この展開ってどう考えておかしいわよね」
「アキエル……」
天使が振り向く横顔に青いロングの髪がふわりと宙を舞う。
それにはどんぐりまなこが特徴の愛くるしいその顔には見覚えがあった。
「あたしはいいことをしているんだから、乱暴しないで
あたしをもっと慈しんで崇めなさいって、もう神様の罰が当たるわよ」
あの顔は俺と共に悪魔との戦いで前線を駆け巡った戦友のアキエルに
間違いない。生きていてくれたんだアキエル。
相手がアキエルと分かった途端に俺の緊張の糸が切れて
全身に入っていた力がだんだんと抜けていく。
「はぁ…はぁ……ようやく手を離してくれた。あー、痛かった。
途中から鬼みたいな形相に変わっていったけど、
もしかしてあなた、悪魔に憑依されていたんじゃ……」
アキエルを見ていると何だか心が落ち着いてくる。
これが俺ができなかった本来の天使の力である包容力だろうな。
冷静なってくると比例して全身を駆け巡る筋肉への激痛が俺を襲う。
血管に流れる血が渦を巻いて逆流しているような気さえする。
特に腕から指にかけての痛みが尋常じゃないぐらい痛い。
「……痛い、痛い、指が痛い、痛いよ~」
アキエルの心配をよそに俺は我慢できずに
地面を転がって子供に戻ったように泣き叫んでいた。
「……悪魔がこんな可愛らしい動作をして天使に卑屈になるものなの?
あたしの隙を狙って演技しているってことも十分に考えられるよね」
腕を組んで考えているアキエル。
「……痛い、痛いってアキエルお姉ちゃん、助けてよ……」
頼られるとアキエルは絶対に断れないヤツだと俺は知っている。
アキエルの同情を引くのは悪魔みたなやり口で嫌だけど
みすみす奈緒の両腕をここで見捨てるわけにもいけない。
「アキエルお姉ちゃんって何だかいい響きだよね。
どれ、お姉ちゃんが今回だけは特別に見てあげよう」
アキエルの優しさにつけ込んで俺はアキエルに両腕を差し出す。
もう俺はヒトの皮を被った悪魔だったのかもしれない。
「凄い傷だねって……血だらけじゃない、
こんな手になるまでわたしの翼を掴んで離さないって
あなたアームレスリングのチャンピオンでも目指しているの?」
「そんなけないでしょ、お姉ちゃん」
俺のぷにぷにの腕を確認してから物事を言えって。
アキエルの天然にも程があるだろうに。
「お姉ちゃんの勘違いみたいだね。
回復の呪文を唱えるから動かないでじっとしていてね」
「汝、我が手に集え、エクストラ・ヒーリング」
アキエルの呪文の詠唱に前文を追加していた。
詠唱時間と神通力を多く消費するリスクがあるが魔力を極めて
増幅できる手段の1つである。俺の傷は予想以上に深いみたい。
体育倉庫の扉から手が死にかかっていたから当然と言えば当然だけど。
アキエルの手が白く輝きだして俺の出血した指の血が止まっていく。
「これは飽くまで応急措置だからね、それ以上酷使して無理を続けていると
あなたの手は潰れて2度と動かなくなるかもしれないよ。
もっと自分の体を大切にしないとダメだぞ。お姉ちゃんと約束だよ」
「ありがとう、アキエルお姉ちゃん」
「……ふえっ、ウソでしょ……
あなた、まだあたしの姿が見えているの?」
驚いているアキエルにすかさずアキエルの翼の場所を
人差し指で指し示す俺。
「はっきりと見えているよ、アキエルお姉ちゃん。
ここに大きな翼があるでしょう」
「あれ? おかしいな。ここで普通だったらあたしの姿が見えなくなり
人間は『これは夢だったのかな?』って思い込んで話が完結して
めでたし、めでたしって予定のだったはずだったのに」
「どうして今日はイレギュラーなことばかり起こるのよ」
今度は頭を抱え込でうずくまるアキエル。
「生きていたら、いろいろとあると思うよ。お姉ちゃん」
「純粋無垢の赤ちゃんならわたしたち天使の姿はずっと
見えいるらしいけどあなたの年頃ならヒトの薄汚い心に
汚染されて無垢も卒業していることだと思うし」
「一時的にお父さんを思う感情が愛の力になって
あたしの天使の加護を打ち破ったと思っていたんだけどなぁ」
「あなたの言う通り、長い間天使をやっていたら
まぁ、いろいろなこともあるもんね。うん、OK、OK、分かった」
何度も言葉を繰り返すことで、アキエルは1人で納得してくれたようだ。
アキエルは単細胞で助かる。
「ところで何でアキエルお姉ちゃんはわたしの部屋に
魔法陣を描いていたの?」
俺は真相を確かめるためにアキエルに問う。
「それはね、あなたのお父さんの肉体を風化させないように
魔法陣を描いてその中にお父さんを運ぼうと思ったわけなんだ」
「あなたのお父さんはあたしじゃなくて悪魔に襲われたの。
正確には死神かもしれないけど、とにかく魂を
抜かれてしまったみたいの」
「少し時系列が前後してしまったけど、ここまでは話は分かるかな?」
「……うん」
「なら、何でお姉ちゃんはダイニングで魔法陣を描かなかったの?
その方がどう考えてもお父さんを運ばなくて楽だよね」
「それがね、ダイニングは邪気に汚染させれていてあたしの力じゃ
魔法陣を描けなかったかったんだ」
「それで困ったあたしが見つけ出した結論はこの部屋なの?
前の天使の加護が残っていたみたいで、わたしの神通力の力が
押さえられて何かと都合が良かったんだよね」
前の天使って差し詰め俺が殺めたエニシエルのことだろうな。
まぁ、レオエル(奈緒)かもしれないけど。
アキエルは俺にウソもつかないでありのままを話してくれたようだ。
自分の弱みなど口にするものでもないのにアキエルは
何のためらいもなく、さっきあった見ず知らずの俺に話してくる。
これはアキエルの良いところでもあり、悪いところでもある。
天使の前の人間だった頃のアキエルはまだ裏切りなど経験したことがない
珍しい強運の持ち主だったかもしれない。
「そんなわけで、あなたのお父さんを魔法陣に運ぶのを手伝ってくれるかな?
1人で運ぶのはちょうど少ししんどいな思っていたところなんだ」
「それとお姉ちゃんにあなたのお名前を教えてくれると嬉しいな。
あなたって言うのも何だか他人行儀で何だか嫌だしね」
「わたしの名前は奈緒。愛川奈緒っていいます。
わたしも全力尽くしてお父さんを運ぶのを頑張ります」
俺が奈緒の中に入るってアキエルに悟られないように
できるだけ笑顔でしゃべていた。
他人名前を語るのは俺にはまだ慣れないようだ。心の動揺がまだ半端ない。
「奈緒ちゃんか? かわいい名前だね。
頑張ってくれることは嬉しいけど奈緒ちゃんには手の怪我があったんだよね」
「基本あたしが運ぶから、奈緒ちゃんはお父さん体がずり落ちないように
軽く支えてくれるだけでいいよ。じゃあ、さっそく始めましょうか?」
「はーい、アキエルお姉ちゃん」
俺とアキエルは1階に降りてからアキエルは奈緒のお父さんをおんぶして
俺は奈緒のお父さんを落ちないように後ろの支えて階段を登っていく。
間近で見る奈緒のお父さんの背中は思ったよりも大きく感じられた。
単に俺が小さくなっただけかもしれないけど……
「ここにゆっくり置くからね。いきなり手を離したらダメだよ。
お父さんはびっくりするからね」
「はーい、アキエルお姉ちゃん」
奈緒の部屋に戻ってきてもアキエルはお姉ちゃん、お姉ちゃんと
連呼するだけで俺を先導しててきぱきと動いてくれる。
俺がまだアキエルとあったばかり頃は俺に頼って後ろばかりを
追いかけてきた印象があったけど変われば変わるもんだ。
そうは言いつつも俺の外見が1番変わってしまったんだがな。
「我、アキエルの名の元に。
汚らわしい魔の手から慈しむ人間を守ることをっ……
シールド・オブ・アース」
アキエルの呪文に導かれ、地面に描いた魔法陣が発動する。
現れた眩い光で仕切られた水の中に奈緒のおとうさんは沈んでいく。
「これで奈緒ちゃんのお父さんの体は風化することもないし、
後は悪魔から魂を返して貰ってお父さんの肉体に戻してあげるだけだよ」
分かりやすく俺に説明してくれるアキエル。
アキエルも俺が勘違いしたように奈緒を小学生辺りに
思っているのかもしれない。
「あたしは悪魔を追いけないといけないから
奈緒ちゃんはお留守番してお父さんの傍にいてあげてね」
「わたしもアキエルと一緒について行きたい」
「それは危ないからダメだよ。
奈緒ちゃんにもしものことがあったら、お父さんが悲しむでしょ」
「それにね、あたしにはレオエルって生意気な心強い味方がいるの。
ここに潜伏しているって、お告げがあったから迎えに来たんだけど
いないってことはたぶん先に悪魔を追いかけて行ったんだと思うの」
「レオエルは悪魔を狩らせたら天使の中でも随一だからね。
まぁ、それ以外は全然あたしよりもダメなヤツなんだけど」
パチン
「……痛いって、いきなりデコピンなんて酷いよ。奈緒ちゃん」
「ヒトの影口は言ったらいけないってお父さんが言っていたんだ」
もう影口じゃなくて。もう当人が目の前にいるから悪口なんだけど。
「そうだよね、ヒトの影口ってレオエルはヒトじゃなくて天使だけど
ダメなものはダメだよね」
「レオエルって格好いい天使が悪魔を退治しているなら
わたしがついて行っても安全だよね」
レオエルの株を上げるために少しでも自分によいしょする俺。
「奈緒ちゃんのイメージを壊してごめんね。
天使ってイケメンの印象があるけどレオエルって平凡な顔立ちで
別にそんなにかっこよくはないの。いたって標準の顔で……」
パチン
「痛いよ。何でまたデコピンするの?」
「ヒトの外見を悪く言ったらダメだってお父さんが言っていた」
「何で、奈緒ちゃんの顔が赤くなるのよ。
はっはーん。さてはあなたレオエルのことを知っているな?」
ぎくり。俺はアキエルにビンゴされて余計に恥ずかしくなる。
自分のことを格好いいってこれだと俺は単なるナルシストじゃないか?
「わたしはレオエルさんに何回か助けられたことがあるの」
これはウソじゃない全て真実だ。
奈緒が俺に人生をやり直すきっかけをくれ、
天使エニシエル戦の時も奈緒が傍にいてくれたから勝利できたんだ。
「この部屋の天使の加護の残り香の正体って
やっぱりレオエルだったんだっ」
「しかもレオエルは人間のこんな小さい女の子に手を出すなんて
最低の天使だよね。もうロリキングエンジェルの生誕かな?」
パチン
「きゃぁぁーー……」
「またヒトの影口を言ったお姉ちゃん」
「もう痛いって、同じところばっかりにデコピンして。
額が真っ赤だよ。奈緒ちゃんって、そうとうの鬼畜だよね」
だんだんと涙目になってくるアキエル。
俺はつい調子に乗ってアキエルにデコピンをする。
パチン……パチン
「鬼畜だって、今度はわたしへの悪口を言った」
「もう分かったから、痛いことはやめてって……
奈緒ちゃんも一緒に悪魔の元に連れて行きます。
これでいいでしょ、だからもうデコピンはやめてよ~」
俺がついアキエルと戯れている間に主従関係が変わってしまった。
アキエルの本質はひょっとして何も変わっていなかったかもしれない。
「ありがとう~ アキエルお姉ちゃん。だから大好きっ」
俺はアキエルにハグをして抱きしめていた。
ようは飴のとムチの使いようである。
アキエルも俺の「大好き」って言葉に満更な顔して笑っている。
「レオエルのことだから悪魔を退治していると思うけど
万が一の時はあたしと一緒に逃げるからね。
約束だよ、奈緒ちゃん」
「うん、分かったよ、アキエルお姉ちゃん」
俺とアキエルは指切りを交わす。
今のレオエル(奈緒)なら絶対に悪魔には勝てない。
だからを俺が奈緒を助けに行くんだ。
「行くよ、奈緒ちゃん。あたしの背中から落ちにないように
気をつけてよ」
「分かっているって、アキエルお姉ちゃん」
俺はアキエルにまたがりテーパパークのアトラクションのように
窓から飛び出すヒトと天使の共同部隊。
「アキエルお姉ちゃん、見て見て月が綺麗だよ」
「本当だ、まんまるだね。
きっと月でウサギさんがお餅をついているんだよ」
「まだそんなおとぎ話を信じているの?
アキエルお姉ちゃんはまだまだ子供だね」
「奈緒ちゃんだけには言われなくないなぁ~」
俺は今だけは悪魔との戦いのことも忘れ、アキエルとの会話を
楽しみながら月の光に照られる夜のまほらば町の空を舞い上がった。




