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2章 第12話 閉鎖空間に閉じ込められた奈緒(1/2)

今日は待ちに待った奈緒が退院する日。

俺は体育係でもないのに体育の雑用をやらせれていた。

それは4限目の体育の授業が終わった直後の出来事だった。


「ごめん、愛川。

 俺、バレーボールで突き指したみたいでボールの片付けができないんだ?

 俺たちは友達だよな、愛川」


俺が教室に帰ろうとした時に指を手で押さえて話しかけてきた佐藤くん。

友達って単語は凄く便利に言葉で……


「……体育館の散らばっているバレーボールを全て拾って

 体育倉庫のカゴの中に戻せばいいんだよね?」


俺は何も言い返せなくなる。


「愛川もだんだんと物わかりがよくなってきたな。

 じゃあよろしく頼むわ、愛川」


佐藤くんは待っていた男の友達と合流して嬉しそうに

手で押さえて指をフルに使って友達にスキンシップしていた。

そして今日のお昼ご飯のことを楽しそうに話しながら体育倉庫を出て行った。


最近の男子は回復するスピードはオーガみたいに早いんだなって

心で皮肉に語りながら、俺は体育倉庫に行ってボールの収納するカゴを

体育館のフローリングまで押していく。

拡散しているバレーボールを1つ取ってはカゴに戻していく

繰り返しの単純作業。

女の子になった俺の小さい手では2つ以上ボールを持つと途中で落としてしまい

転がっていくって二度手間になる恐れがあるからだ。


「はぁ……はぁ……ようやく終わった。

 思えばクラスの連中はサーブの練習をする時にボール打っては

 また新しいバレーボールを使っていたよな……」


「俺はこの学校の専属球拾いに雇われた使用人じゃないんだぞ」


軽くまた愚痴をこぼしながら俺はまたバレーボールがいっぱい入った

カゴを押して体育倉庫に戻していく。


「これでやっとお昼ご飯にありつける。

 しかし労働の後の食べる飯はまた格別に美味しいんだよな」


俺は袖で汗を拭い、そんなことをのんきに独り言を呟いていると。


ギィィーーー……ガタン……

音と共に薄暗かった体育倉庫が闇に染まる。


「……ウソだろっ、何で急に扉が閉まるんだよ。

 体育倉庫の相場は自動じゃなくて、手動に決まっているだろって」


俺はバレーボールのカゴを放置して直ぐに走り出して

体育倉庫の扉に手をかけた。


ガタガタ……ガタガタ……


「全然ダメだ。ビクとも動かない」


ドンドンッ……ドンドンドン……


「ねぇ……ねぇ……わたしはここにいるよ。

 ねぇって…お願い、いじわるしないで開けてよっーー……」


「……開けてって」


ダメだ。まるっきり返事がない。

都合よくホウキか知らないけど何か長い物が倒れてドアのレールに

挟まる偶然ってそう簡単に起こるわけないだろ。

また俺はクラスメイトの誰かにいたずらされたのかな?

九条さんたちの仕業だろうか?

ダメだ……証拠もなしにヒト疑うとろくな試しがない。

俺が天使に生まれ変わった奇跡みたいなことだってあるんだ。


グゥ~~……


「あ……ビックリさせるなって、今度は俺の腹の虫の音かよ」


俺は早起きして奈緒の退院を祝うためにお父さんと2人で食事の

下ごしらえを手伝っていた。

つい準備に夢中になってしまい朝食を食べるさえ忘れ、時間に追われて

慌てて家を飛び出す俺。

気持ちとして奈緒の祝いの料理を弁当に詰めて先に食べることはできない。

だから学校の近くにあるコンビニに立ち寄ってお昼ご飯を買った。

当店人気の看板に心を踊らされ、奈緒退院の記念日でもあるために

ここは奮発して少しリッチなお値段の気まぐれシェフのクリームパンを

お昼に食べようと思っていたのに。


グゥ~~……、グゥ~~……


ダメだ。食べ物を想像するとまたお腹が減ってしまう。

気まぐれシェフの特徴ある髭の生やして顔を脳にこびりついて

頭から離れようとしない。


「……こいつの体って小さいくせいに燃費も悪いんだよな。

 こんな腹の虫をならしているのが奈緒にばれたら、

 俺はまたあいつのお説教タイムが始まるかもな?」


「女の子がそんな下品な真似したらダメだって……

 これは生理現象の不可抗力なのに。奈緒は元気にしているかな?」


「ここで立っていてもカロリーが消費してお腹が減るだけだし、

 5時間目に他のクラスに体育の授業があることを祈って少しだけ寝ますか?

 ちょうどここにほこり臭いマットレスもあることだし」


俺は体育マットを広げ、大の字になってよこになる。

すると思ったよりも疲れていたみたいでそのまま意識を失っていった。

どうやら羊を数える出番すらなかったようだ。


「……はぁ、今って何時だ?」


気がつくと体育倉庫の窓から差し込む光が消えていた。

辺り一面が真っ黒に変わっていて今どこに何がいるかも分からない。


「……俺は……俺は奈緒を迎えに行くって、奈緒のお父さんと約束したんだ」


またあの日ように俺は約束を破るのか? もうそんな後悔はごめんだ。


「早く行かないと……病院にいる奈緒が俺の来るのを楽しみに

 待っているかもしれないんだ」


狭い体育倉庫のはずだったのに光が遮断されるだけで方向感覚が

麻痺しているような感覚に捕らわれ、体育倉庫の扉の場所が掴めない。

俺は仕方なく地面にはいつくばり、手探りで体育倉庫の扉を探す。


ゴンッ!


「あぁ、いた」


ハードル? 得点表示板? 跳び箱?

などありとあらゆる物が俺の行く手に襲いかかる。

まるで暗闇の地下迷宮をさ迷っているようだ。


ドン……ドン……


「あった、ここだ」


体育用具に頭をぶつけながらも俺は体育倉庫の扉を発見する。

そして体育倉庫の扉を前でゆっくりと立ち上がる俺。


「こんな俺の扉など意地でもぶち壊しっても外に這い出てやるっ!」


奈緒との約束が果たせないかもしれないって思うもどかしさが

いっぱいに膨れあがって、もう俺の感情がマックスの針が

限界を振り切れていた。怒りに任せて俺は呪文を念じる。


「ターミネイト・ブースト、オンっ!」


ドンドンッ!!……ドンドンドン!!ドンドン!!


「開けろっ……俺は開けろって言っているんだよ!」


ドンッ!!……ドンドンドン!ドンドン!!


「開けろよっ……誰か開けてくれて……」


「お願いだ、誰か開けてって……」


俺の孤独な戦いの時間がしばらく続いた。


殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ……

殺せ、殺せ、殺せ……俺の行く手を阻む者は全て殺せ……


ドンッ!!……ドンドンッ!!……ドンドンドン!!ドンドン!!


ドンドンッ!!……ドンドンドン!!ドンドン!!


「お願いだから……俺を助けてくれよ……」


だんだん心が悪魔に浸食され、俺の心は壊れかけていく。

言葉を失い俺は壊れた機械人形のようにただ体育倉庫の扉を叩いていた。

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