朝・いつもの場所で
ジリリ!ジリリ!…
「ん?うぅんん」
ジリリ!ジリリ!…
「あぁ!もう!わかったよ 起きればいいんだろ!」
バンッ!
目覚まし時計に拳を叩きつけた。
「あちゃー、ちょっち強すぎたかなぁ」
「こらぁ!早く起きんかこのバカ息子!」
「いってぇ…」
「今日はお前が当番だろうが!」
「・・・!!忘れてたぁぁぁぁぁ!!!」
「鈴ちゃんは先にいったぞ」
いつも朝はこんな感じである。
龍大寺の第25代目宮司坂浜健介と第24代目宮司坂浜麟太郎
の会話である。
「やべぇ、遅れちまう! 鈴に殺されるぅ!」
ドタドタ!
「こらぁ!階段は静かにおりんかぁ!」
「もーしわけありませんっ!」
「あらぁ~、健介おはよー♪ ご飯食べないの?」
母 坂浜美智子の登場だ
「今日はいい!」
「あらぁ~ そーなのぉん♪」
「いってきます!」
「はぁい いってらっしゃーい♪」
家を駆け足で出る
すぐに自転車にまたがりペダルをおもいっきり踏み込む
自転車は加速していく
この先の交差点を左に曲がるのがいつものルートなのだが
この日は何故か曲がらずにまっすぐ進んだ
自分で行きたいと思ったわけではなく何故か体が勝手に
まっすぐ行かせたという感じだった
「あら!?通りすぎちゃったよ ま、いっか」
いつもとは違うルートで目的地『龍大寺』にたどり着いた
「ふぅ~ 到着~」
健介は停めてある赤い自転車を見て
「やべっ! もうきてんじゃん!」
健介は階段を猛スピードでかけ上がっていく
猛スピードでかけ上がり始めて約3分ようやく上りきった
この寺は山の頂上付近にあるため階段は約5000段ある
上りきった健介は体内に酸素を取り込もうと必死だった
「ぜぇぜぇ、、ちょっち休憩するか」
と健介は階段の最後の段に腰を下ろした
「今日もきれいだな、」
健介は呟いた
なんといってもこの場所この景色は健介にとって
特別な場所であり特別な景色である
高層ビルなんてない高速道路なんてない有るといえば
テレビの電波塔ぐらいだ
健介はこんな何もない町を心の底から愛している
ここ『朝霧村』は長野県中部に属する小さな村だ
『朝霧村』の名前の由来はその名の通り朝になると何も
見えなくなるぐらいの濃霧が村を包むためである
健介はこの村で産まれ育った
息を整えて仰向けに寝転び空を見ていると突然青空が
閉ざされた
よく見るとショートカットの女の子が覗き込んでいた
「健ちゃん!なんでさぼってんねん!」
(あちゃー みっかった)
このショートカットの女の子は崎島鈴僕の幼馴染みである
一見幼い印象だが中身はとてもしっかりとしていて大人
じみている。
くりくりっとした目に整った顔立ちでショートカットの
髪をカチューシャで留めている
何故か突然関西弁が飛び出す
「わりぃ ちょっと違う道で来たもんだからさ」
「もぉ 遅いから全部やっちゃったよー」
「えっ す、すまん!」
「いつも謝ればすむと思ってんでしょ」
「思ってねぇーし」
「遅れといてよくそんなの生意気な口がきけたわねー」
こめかみを拳でグリグリされる
「うわぁ!いでぇよ!」
「これからは遅れません って約束する?」
「わかったから!止めてくれ!強くなってきてる!」
「仕方ないなぁ次遅れたら階段から蹴落とすからね!」
しれっととんでもないことを言う
鈴は一通り言い終わると健介の横に並んで座った
「かわらないなー この村も 健ちゃんも」
「そーだな 鈴は凶暴化してるけどな」
グサッ!
脇腹を指で突かれた
「も、申し訳ありませんでした、、、」