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人造神様

作者: hung

タグにある通り、とにかく設定だけ思いついたので書いてしまいました

見切り発車より酷いと思いますが、まぁあまーい目で見てやってください

え?連載してるほう書け?え、あ・・・はい


 『行き過ぎた科学は魔法と変わらない』とは誰が言い出したのか。過ぎたるは尚及ばざるがごとし、大は小を兼ねる、どちらもまた真理なり。世界は中庸を望み、人々もそれに付き従うのみ。そこに人の意志が含まれているか否か、それは孤独を愛する者には決められない。全ては一つのまとまりであるのだから。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 時は2XXX年、世界からは争いが目に見えて減少した。それに伴い人口が増加し続けているが、その流れは穏やかでじわりじわりと世界各国でゆっくりとゆっくりと進んでいるのみで数百年前に危惧されていた人口爆発による食料不足、環境汚染、資源不足等は見られる事はない。

 技術面は日進月歩という言葉がふさわしく、携帯端末などはデザインされたものが一月も経たず更新されていく。その中には前衛的としか表するしか言葉に表せないものはあるが、その他の多くはどのようなジャンルの好みにでも合うように種類豊富な機種が発売されている。もちろんデザインだけでなく、その機能は『最新式の携帯端末(タブレット)さえあれば1年何もしなくても生きていける』という言葉がささやかれるくらい多機能になっている。

 国際社会としては先に述べた通り、国家間での争いはなくなり、さりとて冷戦のような小康状態が続いているわけでもなく、ただこの世界を表現するに値する言葉はどの国の国民に聞いたとてただ一つの解答しかないだろう。『世界平和』と。


 人間の本質は『万人の万人に対する闘争』と著『市民論』で言ったのはリヴァイアサンであるが、その言葉は幾世紀経った今でも伝えられている。ただし、それは戒めという形であるのだが・・・

 そう、リヴァイアサンの言った市民社会無き状態こそがかつての地球世界であり、世界全体を社会としてまとめあげる機構の不在が世界を争いの渦中へと追いやっていたのだと言うのだ。


 なぜ断定できるかと思っただろうか。いえ、それは有り得ない事だろう。もしあなたがこの言葉に疑問を憶えるなら、私はあなたにぜひともお会いしたい。きっとあなたは前時代の考え方もしくは、我々の人智が及ばない程の未来の知識、もっと言えば、異星人の様な思考を持っている一つのイレギュラーであり、今は廃れてしまった心理学という分野の貴重な一つのサンプルとして扱えるだろうから。


 私たちは既に『宇宙船地球号』という呼び名をはるか昔に捨て去り、新たな名前がつけられている。今の地球を呼ぶならそれ以外に存在しないだろう相応しい名前、そう、『神の降臨せし惑星-天国(エデン)-』と。


    地球考古学研究室 教授 睦屋恵 著『人造神様の治める世界』より一部抜粋


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺の名前は三黒勇人、14歳。ここだけの話、俺は前世と言うものがある。あぁ、引かないでくれ、頼む。正確に言えば、三黒勇人として生まれる前の世界の事を憶えているんだ。転生ってやつだな。

 え?なんで転生と断言できるかって?それは俺が生まれたこの世界の名前が地球だったからだ。いや、本当は前世と比べて世界が変わりすぎているから、もしかして異世界?と思ったんだが、図書館で埃を被っていた歴史書を読んだ所、俺が知る限りの歴史と変わりなかった。ナポレオンはいたし、産業革命も俺の知識と同じ年代に起きてた。日本も徳川の治世が江戸時代だったし、黒船で開国したのも同じだ、といった具合にな。まぁ、西暦が使われてる時点でほぼ確信してたんだけどな。


 しかし、だ。それにしてもこの時代は一体何なんだ?空飛ぶ車は当たり前、人工知能が備わっている機械は人間の様に動くし、携帯電話は腕時計型のタブレットで統一され、3Dの立体映像が浮き出て『ご用件は?』と言ってるのを初めて見た時は腰が抜けそうになったぜ。まぁ、その時はまだ『あんよ』もできない時分だったから、抜かす腰も無かったんだがな。

 この世界を俺と同じ、もしくは俺よりも年配の方が見たら必ずこういうだろう『70年代に想像していた近未来じゃねえかよ。』ってな。


 それよりももっとおかしい事がこの地球には存在している。『神様』だ。


 そう、この世界には『神様』という存在が、実在している。勘違いしないでくれ。本当のキリストだとかヤハウェのような現人神(あらひとがみ)といった存在ではない。正式名称は数百年の時の流れで既に失われたが、その神を俺が表現するならこうだ『世界解析プログラム』。そう、この地球で今神様と呼ばれているのは一つのコンピュータープログラムなのだ。いや、本当に一つなのかどうかは前世で文系だった俺には分からない。ただ、この地球は『神様』と呼ばれるプログラムに支配されているのだ。


 『プログラム-神-』が創られたのは数百年前、ある一人の天才プログラマーが無限にも及ぶ情報がめぐる世界で、その全ての情報を解析できるプログラムを作り上げたのがきっかけらしい。もちろん機材やシステムの問題からその時代では実現には至らなかったが、そのプログラムをネットの海の中に埋没させ、遥かなる時を越えて発見、解析、作成に至った。そして神様プログラムが完成して200年も経っていない今、世界は完全に『神様』に支配されている。


 例をあげよう。『神様』の機能は情報を収集、解析、それにつきる。しかしその情報とはどこまでを指すのだろうか?ネットに流れているもの?書籍に記されているもの?それとも人間の思考の中?答えは全てだ。『神様』は地球を丸裸にできると言っても過言ではない。世界各国が打ち上げた衛星からでも、個人が所有するパソコンからでも、個人の挙止行動一つからでも、地球のマントルだろうが、内核だろうが、全ての物と言うモノから情報を収集し、解析できる。その結果、ある意味、未来予知というようなことが可能になった。『~~のプレートが臨界まで達するまであと3年』『○○さんはどのような職業につけば幸せになる』『△△さんは☆の才能が有るからその道に行くとよい』これらを支配と呼ばずどうしようか。

 もちろん『神様』とて欠点はある。動物や植物のような本能で動くものや、地学や物理のような一定の法則で動くものならば、比較的少数の情報で解析できるが、人間の様に多種多様な思考、理性、才能などといった要素が組み合わさったものは解析する為にも情報が膨大になり、そのため解析にも時間もかかるのだ。


 しかし、正直に言おう。俺はこの世界が気に入らない。全てが上から与えられるだけ、マニュアルに沿って線路の上を進むだけの様な生き方は到底、俺らの時代の人々と同じ人間とは思えない。

 教育関係もそうだ。個人の情報を集めるためだけに組まれたような授業内容、定期的に行われるアンケート調査。俺たちは15歳までに様々な経験を得るために、いや、『神様』に情報を与えるために、多種多様な経験をつまされる。


 あぁ、話に出たからちょうどいい。教育のことについて少し言及しようか。この世界の教育は二つに分かれる、一つは自由教育、もう一つは専門教育、だ。

 自由教育は義務教育の代わりと言っても良いかもしれない。さっき言ったように、15歳までに『神様』の解析結果を得るために学校へと通う。そして15歳の自由教育が終われば、『神様』の解析結果(通称、御告げ)をもらい、将来の職業をそこで決定させられる。

 そして御告げで決定した職業の知識と経験を身につけ、社会に出て即戦力になるよう、専門教育機関で20歳まで過ごす。


 普段の生活で言えば、携帯端末の機能の一つである御告げの簡易版『神様の一言』がその人の一日の行動を決定している。例えば『今日はいつも通り』と書かれていれば、いつも通りに過ごし、『外出を控えた方が吉』と書かれていれば外出をしない、と言う風な事が多々見られる。


 ・・・なんなんだ!これは!!どこにも人間の自由意思と言うものが存在しないじゃないか!!こんなものにしたがっていながら、何の疑問も抱かないこの世界の人間たちが、世界を手に入れたと思っているかのような神ってやつが!とにかく気に入らねえ!

 人ってのは間違いを犯すかもしれねえ、その結果、死ぬほど後悔するかもしれねえ、もしかしたらそれは取り返しのつかないことかもしれねえ。それでもその失敗の中、泥にまみれてもこの野郎!と根性見せて何度でも立ち上がっていくのが、本当に『生きる』って事だろうが!

 こんな、間違いを犯さず、上から与えられるもので満足してしまうような、この世界は間違ってる!確かにこの世界は優しい、争いは無くなり、飢餓や貧困も無くなったらしい。それでも俺には周りの皆の顔が全て同じに見えてしまう。まるで同じ仮面を、口と目が笑ってる仮面を皆が被っているようにしか見えないんだ。こんなのは、絶対に間違ってる。


 そんな『神様』に支配された世界に反旗を翻すべく、俺はペルソナを被った。そして、そのペルソナで『神様』を欺きつつ、この世界に少しでもいい、何か違和感を感じている、俺にとって『仲間』と呼ぶべき存在を探し続けた。そして一般人である俺が、いや、俺たちが『神様』と直接接触出来る機会、専門教育を決定する為の『御告げ』、それまでに何とか仲間を集める事が出来た。

 『御告げ』は地域ごとによってまとめて行われるが、『神様』は世界中で15歳になった個人個人に行うため、1週間にわたって世界中の各地域で行われる。俺たちは学校の教師たちやお告げの公務を行う人たちを説得し同じ場所、同じ日、同じ時間帯で受けることが出来るようになった。

 そこで俺たちは『神様』と直接対話し、この歪な、まるで箱庭のような世界をはるか昔の様な世界に戻すよう説得するつもりだ。おそらく人工知能が使用されているだろうから、言葉を交わすことはできるだろうが、どうしても説得が不可能な場合、もしくはコミュニケーションがとれない場合は仲間の一人が作成したあるコンピューターウイルスを直接注入する予定になっている。

 普段は『神様』を守るために使徒と呼ばれる公務員が守っているが、この『御告げ』の時だけは個人の将来に関わる事でも有り、プライバシーの保護のため、使徒がいなくなる。これが最初で最後のチャンスだ。俺がこの世界を、造られた幸せ、偽りの幸せの世界を叩き壊してやるんだ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ここが、『御告げ』をする場所、か。」


「なんやー?緊張で帰りたくなってきたーん?」


「馬鹿馬鹿しい。勇人がそんな小せえ肝っ玉かよ。」


「あはは、そうですよ。やると決めたら、とことんやりつくす、それが三黒勇人でしょう?まぁそんな直情傾向なのが勇人の長所であり、短所でもあるんですけどね。」


「それでも、緊張しないわけではないだろう?それに適度な緊張はよりよいパフォーマンスをするのに必須な要素であるのは否定できないだろう。」


 関西弁で俺に話しかけてきたのが一倉カナ、人の心にずけずけと入ってくるが、何故かその事に不快感を憶えさせない、不思議な人柄をしている。背は俺より少し低めの156cmで、この年頃の女子としては高身長の部類に入るだろう。活発な性格に応じたかのようにうなじが隠れるかどうかの長さの茶色い髪の毛が朝焼けの光に輝いている。


 カナに返答したのが、二宮剛志(ニミヤゴウシ)、俺よりも背が高く162cm、15歳でこれは高い方じゃないかな?がっしりとした体格で黒髪短髪。ラグビーを部活でやっていたため、もし生徒会役員で運動不足な俺が相対すればまるで壁のように見えるだろう。しかし、口が悪いのが珠に疵か。


 そして俺を語ったのが五和峻(イツワシュン)、チャラい外見で、茶髪ロン毛で、両耳にピアスをつけ、指輪やネックレスなどのアクセサリーも数えきれないほど付けている。俺と同じ慎重だが、少し小さく見える。しかし、外見に反して人を立てるのが得意で、峻と話して嫌いになるような人は少ないだろう。ただ、どれほど仲良くなっても敬語が抜けないのはクセだそうだ。初顔合わせの時は剛志と話し方が逆じゃねえか、とツッコミを入れてしまった。


 そして最後、少し小難しい話を差し込んできたのが四宮早紀(シノミヤサキ)、女子ながらにして、このメンバーの中で一番身長が高く、167cm。しかし、その高身長からも話し方からも威圧感は感じず、彼女を敢えて一言で言えば『凛』だろうか?腰まで届く程に伸ばされたその黒い髪はどのような時も艶めかしく、存在感を放っている。


「しかし、こんな事を本当にしようとおもうかねぇ。俺自身がビックリだぜ。」


「そない言うなって剛志君。今日集まったのは少ないながらも、皆何かしら『神様』に言いたい事がある連中。そんなのはもしかしたら意外とようけおるんかもしれへんしな。」


「そう。不倶戴天とは言わないにしても腹に一物を抱えたまま生きていくには少し大きな荷物を負ってしまった私たちには、覚悟が出来ている。」


「ちっ。別にやりたくねえとは言ってねえよ。ただ、少し現実味がないだけだっつーの。」


「いえいえ、僕もまさかこんな事になるなんて思ってもいませんでしたよ。ただ、すこし数奇な運命と言う名の巡り合わせが僕たちを惹き合わせたのでしょう。」


「・・・峻の見た目でそんな事言ってると口説き文句にしか聞こえないな。」


 そう言って笑い合いながらも俺等は誰ひとりとして目の前にある建物から目を離そうとしない。

 分かっているのだ、今日、これから起こる事が一つの革命期であり、俺たちの重要な転換期でもあるのだと。


「さぁ、行くぞ。」


 そう言って俺は目の前にある世界神様庁舎日本○○支部へと足を踏み入れた。後から続く足音を自分の背に受けながら。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 さて、ここで皆の紹介をさせてもらおうか。


 まずは一倉カナ。彼女は親の転勤に付き合わされ、自由教育時にまともな友達づきあいが出来なかった。重なる引っ越し、浅い友達付き合いの中で彼女は唯一の楽しみともいえるメディアから流れるお笑いで関西弁と、人との距離を適切に測る術を体得した。しかしそんな生活の中、親友とも呼べる存在が彼女にも出来た。彼女はその親友といつも一緒だった。転校してしまっても連絡を取り合った。彼女にとって親友と言う存在は救いをもたらした。

 しかし、ある時その親友からの連絡がパタリとやんでしまった。不審に思いつつも、彼女は親友を信じ、連絡を取ろうとし続けた。そんな中、彼女の元に一通の連絡が舞い込んだ。親友の訃報だ。親友は重い病にかかってしまい、更に発見が遅れた事が致命的で、医者にかかった時には既に手遅れだったそうだ。

 一倉カナは思った。何故彼女は死ななければいけなかったのか。今の世の中『神様』からの情報が有ればほとんどすべての事が分かってしまう。それなのになぜ彼女は病気の発見が遅れたのか?彼女の出した結論は『神様』に頼りすぎた医者が見落としたと言う事だ。何でも与えてくれる『神様』というものがあれば努力もしなくなるだろう、そして、全能ともいえる『神様』のミスと職務の怠慢を生み出した世界に絶望した。


「うちはあの子に救われて、世界に裏切られた。『神様』は確かに世界を管理してるけど、うちを助けてはくれへんかった。これは一つの復讐や。終わったら・・・死のうかな?」


 そう言った彼女の眼は未だ暗い輝きに覆われている。


 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼


 次は二宮剛志。彼は自分の力に自信が有った。同年代の誰も自分に勝てず、力比べではそこらの年上の奴にも負けたことはなかった。しかし、かれはラグビー部に入ってからは自分の力が全く通じなくなった。いや、力自体は部活メンバーのだれにも負けていないのだ。しかし、彼は周りとペースを合わせる事がひどく苦手だったのだ。そんな彼が集団スポーツの世界で芽が出るわけも無い。そして彼は学校で行われる正式な『御告げ』を聴く前に神様ではなく、学校ごとでデータを解析して行われる『簡易御告げ』でラグビー選手になれる可能性を完全に否定されてしまった。更に集団スポーツ全般にも同様の結果だった。

 しかし、彼の周りには未だに夢を追い続けている人たちばかりなのだ。もちろん彼らが全員その夢をかなえられるかどうかは不明だ。しかし、『簡易御告げ』を聞いた後に夢を追い続けられるのは、その結果が良かったからに他ならない。もし悪ければ、親も教師も揃って止めにかかるからだ。自分と彼らの違いはなんだと言うのだ。ただ自分にとって苦手な事が一つあるだけで、自分の夢を否定される自分、一方そんなこともなく、夢を追い続けられる彼ら。剛志の心に残るのは理不尽さだけだった。


「別に俺は夢を否定されたからこんなことをしようなんざ思っていねえよ。ただ、適正がないってだけで、夢を追う事すら否定されるこの世の中ってのがあまりにうざったい、それだけだ。」


 彼の視野は狭まるばかり。


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 四宮早紀、彼女はいわゆるお嬢様、というものだった。そのせいで幼少期から堅苦しい生活を送らされてきた。自由教育学校はただ勉学をするためだけに通い、門限を守って帰ればすぐさま習い事。親や習い事の先生たちは一言目には「『神様』のため」二言目には「世界のため」。もちろんそれをする意味は分かっている。これは将来のためになるものだと、頭では分かっている。しかし、自分も他の子たちと遊びたい。一緒な事をしてみたい。その気持ちは日ごとに膨れる一方だった。

 ある日、どうしても我慢できずに門限を破り、少し寄り道をして帰った。ただ夕暮れにそまる街を見てみたかったのだ。自分の年代の子供たちはこんな景色の中遊んだり、両親とふれあっているのだ、と。そして帰った早紀に待っていたのは両親からの叱責だった。「なぜ約束も守れないのか」「『神様』に恥ずかしくないのか」「『神様』の守る世界のため」そう、その時気付いた。両親は一切自分の事を見ていない。彼らの目の前にあるのは『神様』という全知全能の偶像なのだ。早紀は愛を欲したが彼らにとって愛を捧ぐべき相手は別にいたのだ。


「何故こんなことに参加しようと思ったかって?そうだね・・・縋るべきものが無くなった時、彼らはどうするのか見てみたい、っていうのと、今まで彼らに与えられた事の八つ当たりかな。」


 彼女には結末が見えていない、それが愛が無ければ見えぬものであるのかどうかは、神のみぞ知る。


 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼


 五和峻、彼の学校時代前半を一言で言うならば『いじめられっ子』である。国家間の争いはほとんど消えてしまったが、個人間の争いと言うのは消えることはない。彼は元々気弱で今でこそ勇人と変わらないくらいの大きさまで成長したが、12歳になるまでは彼は断トツで小さく、気弱なことも併せて、そういうことの標的に選ばれやすかった。もちろん彼は気弱だったが、馬鹿ではなかった。すぐさま親にその事を相談し、親から教師へと相談と言う形で告発したのだ。そのおかげで彼は両親と言う真に頼るべき存在と言うものを得ることができた。

 しかし、その後いじめが終わることはなかった。持ち物は隠され、給食の班は自分だけがはぶかれて、1人で食べた。肉体的ないじめは終ぞ受けることはなかったが、彼の幼い心は酷く傷ついた。そしてそんないじめられっ子生活が1年続き10歳になると、いじめは途端にピタッと止んだのだ。そしてまるで示し合わせたように別の気の弱そうな子が標的とされた。峻が何かしたわけでもなく、新たな標的とされた彼が何かしたわけではない。ただ、何故か標的がスライドしてずれるかのように変わったのだ。

 不思議に思った峻は先生に相談した。いじめられているときにも相談に乗って貰った先生だ。しかし峻が聞いた先生の答えは全く予想の付かないものだった


「びっくりしましたよ、『簡易御告げ』の学校版みたいなものがあって、いじめっ子役には教師から誰々をどのようにいじめるか指示が出るんですって。全くふざけてると思いませんか?確かにそれで管理していれば彼らにとっては安全で、安心でしょうね。しかし私はその様なシステムを作り出した『神様』というものを認めませんよ。」


 彼の傷は思惑よりも深いものとなった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 5人は待った。この日は一週間実施される『御告げ』の最終日、そして5人はその最後に『御告げ』を読まれる事になっている。勇人が考えるのは朝の早くに受付してその後は放置されている自分たちを省みて、どんなに時代が変わろうがお役所仕事というのは変わらないのだということだ。才能のある人間が適切な教育を受けていようが、そんなところはけして変わらない。やはり、管理された世界は偽りだ。見た目だけしか変化していない。そんな思いを抱いていた。


 5人は緊張からか何も話す事は無く、ただただ、無言で、時折思い出したかのようにポツリポツリと言葉をこぼすだけだった。そんな雰囲気の中次々と他の同年代の子供たちが『御告げ』を聞き、ほとんどの子供が嬉しそうな顔をして帰っていく。彼らは今から来月の入学準備をするのだろう。その道は彼らの様子とはかけはなれているように見える。


 日も暮れようかと思う程の時間が経ってようやく、5人の順番となった。当たり前だが、彼ら5人以外には他の子供たちはおらず、全員帰ってしまっている。定時も過ぎているため、他の職員もおらずただ『御告げ』を案内する役目と、警護を兼ねた仮面を被った使徒が2人いるだけだ。

 そうして彼らは使徒の1人に連れられて『御告げ』を聴く部屋へと案内される。注意事項は既に耳にたこができるほど学校で聞かされている。とにかく失礼のないように、それだけだ。この世界の人々にとって既に『神様』を害しようなんていうのは想像の埒外なのだ。その事を思い出して、彼らはもう一度決心する。そして勇人は今日は来ていない6人目の仲間が渡してくれたコンピューターウイルスの入ったデバイスを握りしめる。


(見ていろ。俺が、この世界を救うんだ。)



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 5人が『御告げ』を聴く部屋の前へと着いたら案内をした使徒は別の持ち場へと移動していった。ここからは1人1人が入っていき、自分の聞きたい事を聴き、最後に勇人が入室、その後4人に合図を送り、その返答でその後の行動が決まる。


「ほな、名前の順番的にうちから行かせてもらいましょか。」


 そう言って一倉カナが前に進み出る。その部屋は何もなかった。過度な装飾も無く、家具も机も椅子すらもなく、ただ壁に備え付けられたディスプレイから一つの立体映像が佇んでいただけだった。その映像は顔の部分がぼやけているが、姿形からは女性の様に見える。


「終劇。汝らの道を指し示そうぞ。」


 入室直後で少し呆けていた彼女に対し、『神様』がそうつぶやくと同時に光に包まれる。そしてその光はすぐに小さくなり、入口付近で突っ立っていた彼女の元へとヒュンと飛び込み、携帯端末、もしくはそれに準する物へと音も衝撃も無く入って行った。


「完了。道は示した。問うか?」


 その言葉にようやく呆けていたカナが我を取り戻す。


「えーっと、まずはやな「不要。把握済み。一倉カナの質問事項其の1、親友の死因。其の2、我のミスの有無。其の3、親友の担当医のミスの有無。確認、同意要求。」あ、ま、まぁその通りや。」


 いきなりまくしたてられて、しかも自分は親にすら相談したことも無い、自分だけの秘密だったはずの悩みを何も話してもいないのに見事的中させられたのだ。気味の悪さよりも驚愕の方が大きく、大きくたじろいでしまった。


「回答。

 其の1、一倉カナの親友の死因→急性大動脈解離

 其の2、我のミスの有無→無し。突発性の病、怪我には対処することが不可能。あくまで危険性を示唆するのが限界

 其の3、担当医のミスの有無→有り。但し、発病後、発見に至るまでに時間が経ち過ぎていたため、ミスが無くとも、運び込まれた時点で死亡は確定だった。」


「な、ほんなら、なんで。危険性を示唆する事が出来るんやったらなんで、あの子は病院にかからんかったんや!死ぬかもしれへん病気の情報が有ったら、何を優先しても治そうとするやろ!?」


 自分の思っていた結果と全く違う結果にカナは大きく動揺する。『神様』はないにしても、医者のせいで自分の親友は死んだと最低でもどちらかの責任のはずだと思っていたのだ。それを突き崩されて自分の足元がふらつくのを根性で必死で食い止める。


「返答。先の解答が表の理由。実情は異なる。汝の親友は―――――――」


「なんやて・・・?」


「―――――――――――――――」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「次は俺だな。」


 そう言って独りでにに開いた扉を睨みつけ二宮剛志があるきだす。彼らに激励の言葉は必要が無い。カナも同様に進んだ。


 そしてカナと同様、入室直後に『神様』から生まれた光を自分の端末へと入れられる。我に返って、あたりを見回すと、小さくない部屋の端にカナが座っている。その顔は伏せていてうかがい知れることはないが、彼は構わずカナと同様に質問するかどうか聞かれて応える。


「なんで俺は集団競技から駆逐されなきゃいけねえんだ。別に夢は見たっていいだろうが。応えろよ。」


「回答。駆逐ではない。適正と兼ね合い、そして新たな道への扉。」


「まだるっこしい事は嫌いなんだ。さっさと応えやがれ。」


「返答。汝些少の読書を推奨する。願わくば勉学にも力をいれるべき。

 詳細。――――――――――――――――――――――――――。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そしてまた独りでに開いた扉を見つめ、先ほどまで凛とした姿で立っていた四宮早紀が、そのたたずまいを消さずに粛々と歩いて行く。


 部屋に入って早紀が感じたのは自分の方へと飛んでくる光と明るいとも暗いともとれない部屋の雰囲気である。光を回避しようとしたが、どうやら追尾機能が存在しているらしく、すぐに追いつかれ、先の2人と同じく端末などへと入って行った。特に変調もきたしていないことを確認して、この部屋の雰囲気に疑問を憶える。

 『神様』を問い詰めその結果が良かったのならふっ切るなりして、空気は弛緩するはず、悪かったならば、なにかしらの決意や、それに準じたピリッとした空気になるかするはずなのに、そのどちらも感じられない。カナは部屋の隅で体位座りして俯いているし、剛志は壁の方に向かって何かブツブツとつぶやいている。


「予測。四宮早紀の質問。我『神』が存在していなければ、汝が幸福な生活を送れていたか?確認、同意要求。」


「あ、あぁその通りだ。私の両親はあなたの妄信者と言っても良い。もしあなたがいなければ自分はもっと幸せな家族団らんと言うものを甘受出来ていたのではないか、そう思ってしまうのだ。」


「回答。不可、汝の両親は我だから妄信したのではない。妄信することが必要だから妄信していたのだ。しかし、我を妄信することで彼らは最低限の不幸が舞い下りるのみで済むだろう。」


「ふん、そんな事を聞いても気は晴れないけどね。どうせならあなたのモットーのように最大限の幸福を与えてくれればいいのに・・・。」


「返答。――――――――――――――――――――――――――――。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「それではお先に失礼します。」


 根がまじめすぎるのか、緊張を少しでもほぐそうとしたのか、それとも逆に緊張をほぐそうとしてくれたのか、峻は一言勇人に告げてから、開いた扉をくぐり部屋へと入って行った。

 光を受け入れて周りを伺うが、その感想は早紀と同じような感想であった。先に入った3人はどこか様子がおかしいが、悲壮感が漂っているわけではないので、自分も自分の事を済まそうとする。


「予測。五和峻の質問其の1、なぜいじめを推奨するようなマネをするのか。其の2、いじめを推奨する以外の代案は存在しないのか。以上2点。同意要求。」


「その通りです。さすが全世界の全国民のパーソナリティを解析できるだけありますね。僕如きの悩みなどお見通し、と言う事ですか。」


「回答。

 其の1、一定以上の社会集団が存在している以上、排斥という動きは必然。それを管理、最も被害が少なく、最も安全なパターンを選択する。排斥とは突き詰めると死へと繋がる為、管理は必要。

 其の2、存在しないわけではない、が、最も効率よく、そして第1、2、3者全てを導くには最も適している。

 補足、―――――――――――――――――――――――」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 最後の一人となってそこまで長い時間が経ったわけではない。しかし勇人は少し心細さを感じていた。やはり仲間と言うのはありがたいものだ、いるだけで心が満たされる。

 そして勇人は仲間たちが待っているであろう部屋へと入る為、開け放たれた扉をくぐりぬける。


 先の4人と同じように光を受け入れてから、周りの皆の様子を伺う。このまま一気に攻めるならば皆から合図が有るはずだ。そう思い周りを見渡すが、誰ひとりとして勇人と目を合わせようとしていない。直前に入室した峻は携帯端末に食いついている。

 チッと舌打ちしそうになるのを無理から治め、いざとなれば自分一人でも実行に移そうと覚悟を決める。


「予測。不可。

 汝、なんぞ問うか?」


「おいお前ら、どうしたんだ。」


 『神様』の声を無視して周りに散らばる仲間たちに声をかける。一番に入ったカナはその声にようやく顔を上げる。その目は真っ赤に充血しており、泣きはらしたというのが一目で分かるようだった。二番目の剛志はこちらをむきつつも、何が気になるのか自分の拳に意識を向けている。早紀と峻は2人ともが未だに自分の端末を集中して見ている。

 そして勇人が何よりも違和感を抱いたのは、彼らの誰もが入室前に抱えていた暗い雰囲気が薄れてしまっている事だ。彼らの事情は簡単になら聞いている。しかしそのどれもが簡単に解決する事ではなく、それぞれが重い事情を抱えていたはずだった。それなのにその以前抱えていた暗い空気と言うべきものが存在しないのだ。


「一体どうしたんだ、お前ら。」


 半ば確信に至っているが、それを信じたくなくて、彼ら4人を問い詰める。その後ろでは未だに『神様』が佇んでいる。


「い、いやな、グス。うちの親友が、グス生きてるって、ズズ、今は使徒になるために専門の、グス、勉強してるんやって。使徒の情報は機密やから、ズ、戸籍を抜かなあかんのやって。だから、だから一旦死んだふりせな、あかん、グス、のやってぇ!」


 感極まったのかポロポロと止まりかけていた涙をまた流しながら、嗚咽をあげながらも勇人にとっては聞きたくない説明をするカナ。


「俺も・・・今回の件はパスだ。神様のモットーは最小限の不幸と最大限の幸福をもたらす、なんだってな、四宮に教えてもらった。そりゃそうだよな。俺みたいなやつが居たらそのチームメイトの奴らにとっては最小限の不幸なんてのには収まらねえだろうからな。

 それに俺にはボクシングの才能があるんだとよ。元々苦手だった協調性なんざを嫌々学ぶよりも、よっぽど幸福な人生になるだろうよ。」


 勉強していたならば自由教育の最初に学ぶような『神様』の存在意義を知らなかったが故に、自分本位の望みをぶちまけてしまった。彼は他者のペースに合わせることは苦手でも、他者を思いやる事をしたくないわけではないのだ。


「私もだ。どのような世界だろうと私の両親は今の状態より悪くなる事はあっても、よくなることが無いと言う事が分かっただけでも踏ん切りがついた。更に私の将来には明るい物が有るらしい。保母らしいぞ?大女が柄にもないことだと笑われるかもしれないが、愛を知らない私だからこそやれることは多いらしい。」


 更に彼女の両親は近々彼女を捨てるが、後に養父母になる夫婦が人格者で有ると言う事も彼女の不満を完全に消し去ってしまったのだ。


「僕もですね、勇人君には本当に申し訳ないんですが・・・」


 峻は『神様』から教育のシステムを訊き出した。そしてシステムの中に組み込まれたいじめという要素に理解を示した。しかし、彼がここまで追い詰められたのは何を隠そう彼の担当教師の一部裏事情の曝露というミスだったのだ。システムはあくまで理想論で、人がそれを行使するならばミスは出る。しかし、そのようなミスが起こり得るという事を是正する為の適正は峻には存在していた。



 そうつまり彼ら4人は満足してしまったのだ。自分の今までを省みて、更に『神様』の説明を受けて納得し、今までの不満を解消してしまったのだ。こうなってはもう自分一人でやるしかない。そう決心した勇人はウイルス入りのデバイスをギュッと握り、唐突に振り返ると、拳を振り上げ『神様』の立体映像を映しているディスプレイへと叩きこもうとした。



 しかし、その振り上げた拳は振り下ろされることはなく、途中で止まってしまった。


 いつの間にか部屋の中にいた使徒が勇人の腕を掴んでいたのだ。もう一人の使徒も部屋にいるが、そちらはディスプレイの側で佇んでいるだけだった。


「くっ!」


 力を込めているが、相手は荒事も専門にしている大人なのだ。その差は歴然で、勇人は全く腕を振り払う事が出来ず、身体をもがく以外できなかった。


「くそ!なんでだ!この世界は間違ってるんだぞ!?管理された世界、決められた将来!レールの上を歩くだけが人生なのか!?予定調和だけが幸せなのか!?違うだろうが!人間は自分で考えて、どんな失敗だろうが、敗北だろうが、そこから何度でも立ち上がり幸せを掴もうとするのが『生きる』ってことだろう!?目を覚ませ皆!!」


「唾棄返却。眼を覚ますのは汝。管理はする、将来の道標は示す、解析結果を還元する。そこに人間の意志は存在しない。」


「だったら!」


「中断、無礼。しかし管理は安全を保証する。道標はあくまで指標、そのために選択肢は無数に用意してある。解析結果はあくまで示唆にすぎない。当たるも八卦、当たらぬも八卦よりも良い自負はある。しかし我は我を慢心しておらず、汝らの大多数も我を妄信してはいない。彼らは彼らで選びとった道を生きている。我はただ不幸になりやすい道を指し示しただけだ。」


「嘘だ!未来予知に近いからって、皆がそれに頼らないといけない生活を送ってるんだろうが!『神』なんてもんがあるから、人間は不自由になるんだ!」


 ヒステリーのように叫び、無茶苦茶に力を込めて抑えられていた腕を解放させる。その一瞬のすきを狙ってウイルスデバイスをディスプレイに拳ごと叩きこむ。


「はぁー!はぁー!はぁーっ!」


 ポトッポトッと勇人の右腕からは破片で切った箇所から血が流れて、床へと落ちていく。


「な、なんてことしてんねん!」


 カナたちが責めるような言葉を浴びせてくるが、勇人には聴こえていない。彼の眼は全く変わらない(・・・・・・・)『神様』の姿を見つめ続けている。


「どうしてだ!確かにウイルスをたたきこんだはずだぞ!?」


「当り前よ。もとからそれはウイルスじゃないもの。」


 そう言ったのはディスプレイの側で佇んでいた使徒の1人だった。しかし、その声は勇人に驚愕をもたらす。


「そ、その声は・・・!」


「ようやくお気づきってとこかしら。全くあんたってば全然気づかないんだもん。」


 そう言って被っていた仮面を脱ぎ棄てた顔は、勇人が仲間だと思いウイルスの作成を頼んだ張本人、睦屋理沙(ムツヤリサ)だった。そう彼女たち使徒は『神様』の警護が仕事である。ごく稀に出てくる不穏分子等と言った者の処理も彼女たちの仕事だったのだ。そして睦屋理沙は不穏分子である勇人達に接触、自らを囮として、見事勇人たちをまとめて誘い出すことに成功したのだ。


「それに入ってるプログラムは『プログラム-神様-』の定期メンテナンス用プログラムよ。最初っからあんたが『神様』を害しようなんて不可能だったのよ。」


 仲間は尽く裏切り、自分だけで目的を達しようにも、その手段すらも偽物だったと思い知らされ、勇人は完全に力が抜けたのかがくりと膝をついて崩れ落ちてしまう。


「うそだ。うそだ。俺は世界をすくうんだ。」


「まったく。あんたみたいな痛い考え方してるやつってどう呼ぶか知ってる?あんたみたいなのはね『バカ』っていうのよ。15年の人生全部、踊らされてご苦労様でした~。ま、未成年だから逮捕は無しだけど、これ以上こんな思想を持ち続けてるって分かったらその瞬間逮捕どころか、死刑だからねぇ。お気をつけ~。」


 どこまでも馬鹿にしたような声に応えることも無く、勇人はただ『嘘だ』『救う』という言葉を繰り返すだけとなった。


「あんたたちも今回で改心したって思うから見逃してあげる。っていうか、すくなからずいるのよね~。自分が一番不幸だー、とか自分が上手くいかないのは人のせいだー、『神様』のせいだー、って責任転嫁してこっちに特攻仕掛けてくる人。大概若さにかまけた青臭い衝動でしかないのがほとんどだから、毎回死刑にしてたら、人口が減っちゃうのよ。ま、これに懲りたら、バカなことは考えないようにね~。」


 そしてその言葉を皮切りに『神様』がいなくなり、使徒が皆を引き連れて部屋から出ていき、残されたのは勇人だけになった。


 勇人は自失のまま数時間を過ごした。しかし誰も自分を追いだそうとしない。もしかしたら自分は忘れらているのか?そんなことを考えられるようになった時、ふと、自分の携帯端末が光っている事に気付いた。


(あぁ、そういえば『神様』の『御告げ』まだ見て無かったっけ。)


 ボーっとした頭のまま、慣れた手つきで端末をいじり、未読のメッセージを読もうとする。


(なになに?


 三黒勇人(ミクロハヤト):15歳、推奨専門教育;Error、才能;Error

 ってなんだよ『Error』って、俺の将来の事はどうしたんだよ。)


 焦りながらも読み進めていくも、その情報は全てが『Error』の表示。


(くそ!くそ!『神』なんてのが全部悪いんだ。俺は間違っていない。間違っているのはこの世か・・・)


 毒づきながらも読み進めていくと最後に『備考』が記載されており、そこだけは『Error』表示ではない。


「は、はは、はははは!あはははは!あぁーはっはっはっは!!」


 そしてそれを読んだ勇人はまるで狂ったかのように笑い出し、気を失うまで笑い続けた。


 備考にはこう書かれていた。


『学内アンケート、行動、思想全ての情報に関して統合的に観る限り齟齬が目立ちます。情報の正確性に保証ができませんので解析結果を示すことができません。再度調査を受け直していただくか、ご自由な生き方をなさってください。再調査にかかる費用は自己負担となります。詳細は以下アドレスから・・・』



 彼の行動はペルソナにまみれている。そのペルソナは最後に彼そのものを食いつくした。


 孤独は人を死に至らしめる、これは一体誰の言葉だったか・・・








設定のツメ、言い回し、全て稚拙で色々突っ込みたいでしょうが、

まぁ、ご勘弁を(w


元ネタは某尻尾達の運命2のフォル○ゥナ降臨後の世界です


徹夜で書いてしまった・・・

就活中に何してんのやろ

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